息子がまだ泥だらけになり遊んでいた頃 誰よりも自由を手に入れた顔して 走り転んでも痛みをすぐに忘れる 遊びの天才になり 青空は君のためにあるのか なんて思うくらい飛び回っていた 小学校も高学年になると 社会性を持つように学校でも厳しくなる 授業で必要な道具を忘れた息子は 「忘れ物について何か書きなさい」と先生にいわれ クラスでひとり違う課題を与えられた 書き上げた文章は詩であった 子どもはみんな詩人だと思っていたが 息子も同じように自分を表現していた 忘れ物 ぼくは変だ 遊ぶやくそくは覚えているが 学校の宿題は十分くらいで 忘れてしまう ぼくは変だ 遊ぶ持ち物は覚えているが 学校の持ち物は五分くらいで 忘れてしまう ぼくは変だ 連絡帳に書いたものも 一分ぐらいで 忘れてしまう ぼくは変だ だから 学校を勉強するところと 忘れないようにしよう この詩がなぜかクラスだよりに載って 初めて目にするのであった 自分がどんな性格かを考え 学校という社会と照らし合わせながら 子どもらしいユーモアもあり 反省していることが書かれ驚いてしまった 子どもが大人になるため 社会性を持つことは大切であり 親としてはそれが嬉しくもあって あの自由を手に入れた息子の顔 目に浮かべると寂しくもある 「忘れ物」の詩には「忘れない物」があり 強く生きるためのユーモアは誰にも奪われず 自由な力となり逞しさを忘れやしない