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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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  • 幸せを乗せて走る

幸せを乗せて走る

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オートメーションの波にのり
俺は組み立てられ丸い足の男になった
メタリックの黒いカッコいいボディ
生まれた時はすでに成人として扱われ
すぐ出荷され店頭に並んだ

俺をゲットしたのは大学生
痩せた身体だが力強くペダルを踏み
風を切り爽快に走らせる

サドルの下に押し込んだ布を取り出し
「お前、イケてるチャリ男だよな」
と、磨いてくれるんだ

家族を知らない俺だけど
君を相棒と思うことができ
幸せを知ったんだ

桜吹雪を通り抜け
汗をかく君と蝉時雨
紅葉の峠をのぼり広がる絶景
雪の中で俺を手押しする君

そんな日々はとても早く過ぎる
俺の寿命は君ほど長くないだろう
至るところが壊れ始めた
それでも君は器用に優しい手で労り
修理をしてくれたんだ

しかし
そんな日々は終わってしまう

君は結婚をして家族がふえ
スポーツタイプの俺より
子どもを乗せられるママチャリを
使うようになったんだ

俺の役目はもう終わったかのように
ガレージの隅へ置かれカバーで覆われる
真っ暗な世界が続いた
もう捨てられるかもしれない……

せめてもう一度だけ君と走りたい
それが叶うなら俺には悔いなどない
君を信じて願った

明るい世界は突然にやって来た
俺は眩しい中で君を見た
目尻に小さな皺をよせ微笑み
以前よりも落ち着いた感じだった

俺は分解され磨かれ
オイルの染み込んだボディで復活だ
そして走り出すと小さな自転車で
子どもが真剣な顔をしてついてくる

俺はなんて幸せ野郎なんだ

君が家族を教えてくれた
愛された幸せを感じている
もしその日がすぐに来ようとも
もう俺には悔いなどない

今はありがとうの気持ちのまま走ろう
この先にある家族のため

#詩

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