うまくいかない
May
14
座席指定の列車で帰る。僕の席は通路側。世界中のカロリーを
独り占めしたような体型の男性が、
僕の席の隣に座っていた。当然のように座席をはみ出している。
でも、彼にはどうしようもない。
当然悪意もない。現に、彼は限界まで太ももを閉じていた。
肉が邪魔をして上手く閉じれないだけだった。
デブでなかったら
むしろ謙虚な部類の座り方だった。彼はAMラジオを聴きながら、
ビーフジャーキーを頬張り、
「愛のスコール」を飲んでいた。網棚には「お代わり」のつまみ達が
ひとり暮らしの週末買い物分ほど待機していた。
(「スコールだけでなんとかするのか?」)彼のズボンの膝は、彼の体重に耐えきれず
ジーンズのように擦り切れていた。彼のズボンのポケットには、
携帯電話より大きい「何か」が入っていて、
それが僕の座席をさらに狭めていた。そしてその「何か」が僕の太ももに触れ
僕をジメジメさせていた。
ジメジメが嫌で座席指定にしたのに。だから雨の日の電車は嫌いなんだ。
でも、窓際でなくって良かった。