卵(受精卵)がいつまで発育できたかの違いです。
体外受精・胚移植の場合、移植(着床開始)してから
約1週間かけて子宮内膜内に入り込んできます(着床完了)。
それまでに発育停止すれば、「胚移植不成功」です。
着床はほぼ完了して、経膣超音波検査で
胎嚢がみえる(妊娠4週5日ごろ)までに発育停止すれば、
「化学流産」です。
胎嚢が見えてから妊娠22週までに発育停止すれば、
「流産」です。妊娠12週までの流産を早期流産と言います。
実際には、妊娠10週までの流産がほとんどです。
発育停止の時期により、原因別頻度の違いがあります。
「化学流産」は「流産」の回数には含めないというのは、
主に、今までの臨床医学統計が
「流産」で行われているためです。
「化学流産」も「ごく初期の流産」ですが、
流産手術の必要がなく、
心身への負担が少ないと考えられているので、
一般的な「流産」と区別されています。
最近、「生化学的妊娠」とも言われています。
ある不育症患者さんが不妊仲間から、
「流産がうらやましい」
と言われたそうです。
ご本人は、
流産するくらいなら妊娠しないほうがマシ
(精神的にも肉体的にも)と思うほど
追い込まれているのですが。
それほど、流産という悲しみと苦しみは理解されないのです。
実際は赤ちゃんを亡くしているのに、
周りの人からは
「流産くらい」
「お産が流れただけ」
と受け止められてしまうのです。
今は心が壊れているかもしれませんが、
きっと、
亡くした赤ちゃんが背中を押してくれますよ。
亡くした赤ちゃんのためにも、
今を受け入れて、
負けないで。。。
ブログ No.207の 「代受苦」 もお読みください。
「不育症」と「着床障害」の原因は、
大別して、
ほぼ偶然的(運命的)な卵の異常(染色体異常)か、
ほぼ必然的な子宮内環境の異常(体と心)の
ふたつです。
多くの場合、
ひとつの原因で、
今までの流産と移植不成功のすべてを
説明できません。
最初は偶然的な原因であっても、
子宮内への化学的物理的ストレスと、
心への心理的ストレスによって、
新たに必然的な原因が発生していることが多いのです。
最近ますます、
「不育症」と「不妊症」の両方に悩まされている
患者さんが多くなってきています。
楠桂さんの 「不育症戦記」 の本のなかで、
私がコラムとして解説した2010年ごろは、
「不育症」の4人に1人が「不妊症」
の治療を受けていましたが、
2012年ごろからは、
「不育症」の3人に1人が「不妊症」
の治療としての体外受精・胚移植を受けています。
今まで自然に妊娠できていたご夫婦が
「不育症」という強いストレスによって、
妊娠することも困難になってきているのです。
この場合、
1日も早く妊娠・出産したいという気持ちにより、
体外受精・胚移植を考えられる方が多いのですが、
自然妊娠が最良ですから、
できれば、たとえ3~6か月間であっても、
流産した赤ちゃんの供養をしながら、
お互いをいたわりあい、
まずは一呼吸 置かれると良いと思います。
ご夫婦の人生のなかで
無駄な時間はありませんから。
2回以上、連続して流産・死産した状態が
「不育症」と言われています。出産後の場合でも同じです。
3回以上、体外受精による良好な胚(卵)を移植したのに
妊娠しないか化学流産に終わった状態が
「着床障害」と考えられています。
約1年間、避妊せずに性生活を行っているのに
妊娠しない状態が
「不妊症」と言われています。
私が不育症の研究を始めた約35年前は、
「流産は自然淘汰であり、、
流産の原因のほとんどは悪い卵のせいですよ。」
と、臨床現場では説明されていました。
同じことが、今、
体外受精・胚移植の臨床現場で、よく言われています。
「移植して育たないのは悪い卵のせいですよ。」 と。
流産の場合、
流産内容物の染色体検査ができるようになってから、
状況がかわりました。
流産内容物の染色体検査が正常だった場合、
悪い卵のせいだったとは言えないからです。
その場合は、子宮内環境に原因があると考えられるのです。
体外受精・胚移植の場合でも、
初期胚、胚盤胞の段階での染色体検査が
(予備的な段階ではありますが、)
米国では可能になっており、
その結果を考慮すると、
3~5回以上の胚移植不成功例では、
悪い卵のせいばかりではなく、
子宮内環境にも原因がある可能性が高いのです。
子宮内環境の問題は、
原因がわかれば治療できるのです。
体外受精・胚移植の場合、、
受精後、移植できるまで育ち、
移植後、着床完了(妊娠成立)まで育つ割合は
約30%です。
なぜそんなに低いのかというと、
育つと思われる卵のなかで、
本当に育つ良い卵の割合が低いからです。
良い卵とは、科学的に言うと、
染色体(遺伝子のかたまり)の異常がない卵のことです。
2010年ごろからの
着床前遺伝子スクリーニング(PGS)
(わかりやすく言うと、
「卵の染色体検査」 のことです)
の検査方法(FISH法からCGH法)の進歩によって、
初期胚ならば、
従来の方法で良いと思われる卵の約65%、
胚盤胞ならば、
従来の方法で良いと思われる卵の約45%
に
染色体異常があるという報告があります。
この染色体異常の種類によって、
卵の命の長さが決まっているのです。
一方、
以前よりわかっていることですが、
妊娠反応が陽性になってからの
卵の異常(染色体異常)の割合は約10~20%です。
これは、
「流産内容物の染色体検査」 でわかります。
妊娠反応陽性まで育っての染色体異常の卵の多くは、
妊娠10週ごろまでに運命的な流産となってしまいます。
また、卵の染色体異常のほとんどは
偶然的な異常なのです。
その偶然の発生率は
加齢によって増えてくるのです。
体外受精した受精卵のなかで、
移植して育ってくれる良い卵とは、
多くの場合、培養士さんによって、
顕微鏡を見て、判定されています。
培養技術以外に、
卵を選ぶということも培養士さんの技術なのです。
良い卵ならば、
卵の中の細胞(割球)がほぼ同じ大きさであり、
フラグメント(細胞の断片化)があまりなく、
分割するスピードが遅くない
と、言われています。
それ以外にも、
良い卵を見分ける方法として、
受精卵を培養する培養液の中の酸素消費量を測定して、
消費量(呼吸量)が多いこと、
(この技術は近い将来、日本で臨床応用されると思います。)
また、
受精卵に特殊なRNA(リボ核酸)を注入して、
3次元動画で撮影し、
細胞分裂時に、
光らせられた染色体が正常に分かれることを見つけること、
(この方法はヒトで応用できるかどうか不明です。)
などが、報告されています。
いずれにしろ、
究極的には、
受精卵を選ぶ(選別)ということですから、
精度が高まれば高まるだけ、
倫理的な問題も発生してくるわけです。
今日は七夕。
外は雨。。。
七夕の日はよく雨が降ります。
前の勤務先の名古屋市立城西病院では、
産婦人科病棟の廊下に笹の木が用意され、
多くの不育症患者さんが短冊をつるし、
星に願いをされていました。
雨はおりひめのうれし涙で、
雨の水でけがれが洗われるとも言われています。
今日は七夕。
外は雨。。。
たまには夢の世界へ散歩してみましょう。
一回一回が天国から地獄の悲しみでした。
自分を責め、夫を責め、神様を恨み、
最後には
逝ってしまった赤ちゃんのことさえ恨めしく思う。
それの繰り返しでしたが、
毎回、気持ちが落ち着いた頃に
必ず
何かしらの教訓というか、気づきがありました。
そして、
自分の人生にとって、
私たち家族の歴史にとって、
決して無駄な経験ではなかった
と、
思えるようになりました。
今また迎えることができた命を、
大事に大事に育てたいと思います。
以上は、ある患者さんからのメールです。
人は弱いものです。
粘り強く前を向いていれば、
神様(運命)は
きっと何か大切なことを教えてくれるはずです。
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