月に雨 螺旋を描き ダーツのように大地を刺す雨 泥は隆起し足枷となり 俺の足は奪われる 腹を空かした禿鷹が距離をおき 俺という獲物の様子を伺う すでに食物連鎖を 俯瞰している立場ではない だが俺はまだ生きている お前達が集まるにはまだ早い 失せろ 失せろ 俺は終わっていない 次第に 腐食してゆくカラダ 弱気から捻じ込んでくる死 疲弊した俺の前に 甲高い声で笑い 黒マントの悪魔が降りてくる トドメを刺すのか 凍りつくような微笑 悪魔の指は 俺の頭を鷲掴もうと腕を伸ばす 俺は睨み返し唾を吐く 悪魔は再び微笑み 低い声で 死ね 消える悪魔のカラダから 無数のコウモリが湧く 月を覆い尽くすコウモリ 雨の暗闇 空気に亀裂 雷がメトロノームを刻むように 音を立て光を放つ 断続的に暴れ狂う馬 確実に俺に向かっている 一枚づつ姿を変える馬 前足が消え 後ろ足が消え 頭部が消え 胴体が消え それでも俺に勢いは来る 残された尻尾が波打ち 俺の頬を叩く 目を閉じる反射 ガラスの割れるような音 耳からカラダ全体に響き 神経が潰れる痛み 限界を越え 振り出しに戻る 月に雨 螺旋を描き ダーツのように大地を刺す雨 泥は隆起し足枷となり 俺の足は奪われる 腹を空かした禿鷹が距離をおき 俺という獲物の様子を伺う 月に雨 生への執着止まずに