姥捨街
Sep
27
顎から
指先から
垂れる滴はやがて繋がる
カラダが漏斗になり
その垂直な流れは水溜りをなす
表面張力を超えて無意味に拡がる
流れ着く果ては
水かさが一向に増えぬ海への虚しさ
止まぬ雨の中
私の絶望と真逆に向かう母が行く
雨粒が曲げた腰を打つ
其処には惨めさなど無い
母の行き先は明確
足を滑らし母は蹲り
なるがままに雨に打たれている
最後の孝行と母を背負う
軽い筈のその身体
しかし
その重さに狼狽える
次第に私の器は耐えきれず
毛細血管に沿って罅(ひび)が走る
私の苦悩を察し
母は自らの足で雨に流されて行く
やがて
雨は紅く染まり
母を無いものとした
(介護疲れでの事件、自殺総数に占める高齢者の割合の上昇。行き届かぬ福利、行き届かぬ精神)