立ち竦む私 顎から 指先から 垂れる滴はやがて繋がる カラダが漏斗になり その垂直な流れは水溜りをなす 表面張力を超えて無意味に拡がる 流れ着く果ては 水かさが一向に増えぬ海への虚しさ 止まぬ雨の中 私の絶望と真逆に向かう母が行く 雨粒が曲げた腰を打つ 其処には惨めさなど無い 母の行き先は明確 足を滑らし母は蹲り なるがままに雨に打たれている 最後の孝行と母を背負う 軽い筈のその身体 しかし その重さに狼狽える 次第に私の器は耐えきれず 毛細血管に沿って罅(ひび)が走る 私の苦悩を察し 母は自らの足で雨に流されて行く やがて 雨は紅く染まり 母を無いものとした (介護疲れでの事件、自殺総数に占める高齢者の割合の上昇。行き届かぬ福利、行き届かぬ精神)