暗い朝から
Jan
9
新鮮すぎて怖い空気の中
子どもだった私は親に連れられ
上野駅へ向かう
夏休みになると列車に乗り
母の実家
山形に行くのである
とくに嬉しい気持ちもなく
上野駅のホームにしゃがみ込み
自由席の列に並ぶ
ドアが開けば走って
座席を陣取る
それは子どもらの役目だった
向かい合わせの座席
床に新聞紙をひいて
そこに兄と横になってひと眠り
この先の長い長い旅路
移り変わる景色にも飽きて
駅弁を食べてしまえば
時間が重く退屈だけが遊ぶ
夜が明ける前
今は冬だというのに
あの頃のことを想い出している
静けさの中にある
恐縮した心持ちの器には
自分の足音がカツンカツンと
決められた日程だけ
響いていた