鬼ごっこ
Jan
25
突然、彼女は鬼ごっこをしようと言った
足の遅い僕はすぐに捕まってしまう
だから鬼をやることにした
くすくす笑いながら彼女は逃げてゆく
息を切らし頑張ってみるが
触れることはできないようだ
うつむき息を整え顔を上げたら
彼女は視界から消えていた
目先の小枝が揺れている
気配は遠くへ行ってしまった
もしかしたら僕は最初からひとりで
この森に迷い込んでいたのか
そんなふうに思えてきた
いつのことだろう
彼女と触れていた時間があった
声だって聞いたことがある
優しいキスだってしたことがある
それなのに今はどうもおかしい
鬼さんこちら手の鳴る方へ
彼女はまだいるんだ
声が遠くから聴こえてきた
懐かしくせつない気分に包まれる
鬼さんこちら手の鳴る方へ
鬼さんこちら手の鳴る方へ
鬼さんこちら………