霧の森にいる 突然、彼女は鬼ごっこをしようと言った 足の遅い僕はすぐに捕まってしまう だから鬼をやることにした くすくす笑いながら彼女は逃げてゆく 息を切らし頑張ってみるが 触れることはできないようだ うつむき息を整え顔を上げたら 彼女は視界から消えていた 目先の小枝が揺れている 気配は遠くへ行ってしまった もしかしたら僕は最初からひとりで この森に迷い込んでいたのか そんなふうに思えてきた いつのことだろう 彼女と触れていた時間があった 声だって聞いたことがある 優しいキスだってしたことがある それなのに今はどうもおかしい 鬼さんこちら手の鳴る方へ 彼女はまだいるんだ 声が遠くから聴こえてきた 懐かしくせつない気分に包まれる 鬼さんこちら手の鳴る方へ 鬼さんこちら手の鳴る方へ 鬼さんこちら………