彼がマッドリブとして初めて仕事をしたのは1993年20歳のとき、ロサンゼルスにてThe Alkaholiksの "Mary Jane" というLPをプロデュースしたときのこと。しかしプロデューサーとして有名になり始めたのは1999年、ロサンゼルスを中心に活動するヒップホップのインディーレーベル "Stones Throw" と契約し、LootpackのDa Antidoteをプロデュースしてからのことである。そして翌年の2000年、同じくStones Throwからカジモトという名義でリリースした "The Unseen" で、細かく千切られたサイケデリックなトラックの上でヘリウムを吸ったような声のラップを披露しアンダーグラウンドシーンに話題を振りまいた。それから現在に至るまで、MF DoomとのMadvillainやJay-DeeとのJaylibなどのヒップホップから、自身のジャズプロジェクトであるYesterdays New Quintetまで、数々の名義を使用して精力的にジャンルレスな音楽活動を続けている。また、その作品のどれもが高い賞賛を浴びているということは注目に値する。
実の叔父であるジャズ・トランペッターのジョン・ファディスに影響を受けジャズへのめり込んだマッドリブは、サンプリングミュージシャンとして、訓練されたジャズミュージシャンに引け目を感じているとインタビューで語っている。歪な形でそれが具象化されたのがYesterdays New Quintetである。奇抜なサンプリングのアイディアはジャズミュージシャンの技術力になんとか追いつこうとしたものであろう。