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posted 2018-07-16 06:31
詩は元気です ☆ 齋藤純二
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齋藤純二
もし誰かがいたのなら 驚きを隠しきれず 僕は通り過ぎてしまうだろう それは、君とは同じにはなりたくない 詩を読むことは恥ずかしいこと けして見られてはいけない 一冊の詩集を手にする しかし、すぐに足音が近づき その詩集をすぐに棚へ戻し 背後にあった棚から 誰もが読みそうな小説を抜く いつものことだ ...
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posted 2018-07-15 22:17
詩は元気です ☆ 齋藤純二
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齋藤純二
何があったのだろう 縁側から裸足で飛び出し 真夏のかんかん照りの下で 君の涙は風に吹かれ七色を飾る 涙の不思議は慰めも忘れさせ 僕は見惚れていた あなたも意地悪なひとね 惚けた顔して きりっとした視線の先には もう色などなかった...
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posted 2018-07-13 19:30
詩は元気です ☆ 齋藤純二
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齋藤純二
黄色い君は夏の友だち 手をひろげ すこし頭を傾げ 僕に話しかけてくる どこへ行くんだい 帰ってきたら聞かせてよ 僕の知らない夏を うん 今日は海へ行くんだよ 君にあとで 貝がらを見せてあげるよ 楽しみだよ貝がら どんな形で どんな色なんだろう じゃあ行ってきます 行ってらっしゃい...
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posted 2018-07-12 14:56
詩は元気です ☆ 齋藤純二
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齋藤純二
ちょっぴり寂しい気持ちになっても 静かに落ち着いてゆく モノクロな写真を繋げた物語には 僕が曖昧な視線でいる 誰にも声を掛けられず 主人公を演じているのさ 風に吹かれ前髪が 揺れるくらいの動きを感じながら 僕が僕の田舎を見ている...
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posted 2018-07-10 15:45
詩は元気です ☆ 齋藤純二
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齋藤純二
どんな夏にしたいですか と、囁く朝の生温い風は なんだか気力のない僕に らしさ を、取り戻して欲しかったのでしょうか ああ、また勝手なことを考えています でも 問題はらしさがわからなくなったのではなく 生きようとする力が湧いてこないのです まずは、どうにかしたい と、いう気持ちを取り戻すため 今日は...
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posted 2018-07-10 03:11
詩は元気です ☆ 齋藤純二
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齋藤純二
流された街は乱離骨灰(らりこっぱい) 崩れた建物は積み重ねられ瓦礫の山 異様な臭いに言葉をなくし 海の前で帰らぬ家族を待つことさえできない 原発事故によるさらなる悲劇 被災地の途轍もない哀しみの前で 私は震災の詩を書くことはできませんでした それでも被災地に 寄り添うための詩は書けるのです 二〇一八...
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posted 2018-07-10 01:35
詩は元気です ☆ 齋藤純二
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齋藤純二
帰還困難区域だった処は ひとの時間が止まっていた 海が目の先にある 骨組みを残した鉄骨アパートだろうか 草むらの中で風が抜けている 不思議と流されなかった下駄箱 住民の靴が整えられたまま入っている 壁も屋根も流されてしまっているのに靴はそこにあり その情景は私に何を伝えようとしているのだろう 震災八...
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posted 2018-07-08 22:15
詩は元気です ☆ 齋藤純二
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齋藤純二
宿題というわけでもなく 忘れてしまってもいいのですが 僕の時間が囁くのです そろそろ、詩を書きますか もし僕から詩を書くことを 抜いてしまったらどうなるのでしょう 意外と大丈夫だと思います たぶん、何か次のことを始めるでしょう 表現したい人間なのですから 吐き出さないと 僕が僕の中でいっぱいになり ...
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posted 2018-07-08 02:16
詩は元気です ☆ 齋藤純二
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齋藤純二
目に見えない敵とは デジタルの数値で知り距離を置く 福島の被災地を巡る 反り返った防潮堤は何処までも続く 哀しみの経験から設計されただろう形は 涙の曲線で押し返してくれるはず まだ小さい防潮林は何処までも続く 膝くらいまで伸びた松の木は 未来がたくさん詰まっているに違いない 八年目の夏も魚を下ろせな...
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posted 2018-07-02 14:35
詩は元気です ☆ 齋藤純二
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齋藤純二
過去は何度も同じ場所を走り 轍は深くなるばかり どうしても抜け出せない 自分ループを続けてしまう 梅雨明けの太陽さえも 暑さを感じることができず 汗の流れに現実は冷めてしまう 嘲笑された感覚だけが走り 許せぬ自分を忘失できれば もう詩はいらない...