落語に学ぶ「リーダーシップ」(第六話)

落語に学ぶ「リーダーシップ」(...
こんにちは!「働くあなたを元気にする」コーチです。

落語に学ぶリーダーシップ、第六話の今日のテーマは

「人心掌握力」

ビジネスは論理的に戦略を組み上げ、達成目標をKPI(Key Performance Index)などに落とし込んでゴールを明確にして開始する。

そして進捗や成果を定量的・定性的に測定し、何が上手く行って、何が上手く行っていないのかを論理的に解明し、次の行動を決めている。

よく言われるPDCA、Plan-Do-Check-Actionのサイクルを回していく。

こう記述すると、ビジネスはいかにも理論的に進められているような印象を持ちます。

しかし、

これらのプロセスに関わるのは「ヒト」。

戦略を構築して商品・サービスを提供する側も、それを購入するお客様も、双方とも「ヒト」。

ヒトはいつもいつも論理的な動物とは言えないです。それは皆さんも日々感じているところだと確信します。

そんなチームメンバーや部下を動かすためには、論理的であれば良いという理屈は残念ながら成り立ちません。

そこで、どのように「人の心を掴む」のか、という点が重要となってくるのです。

今日は、この辺りに焦点を当てた落語をご紹介します。今日採り上げる演目も、またまたとても有名な

「百年目」

この演目は、大きな商いをしているお店の店主(旦那)と番頭さんとの物語。現代風に表現すると、店主とその店のナンバー2、上司部下の関係を取り扱った演目です。

昨日と同様に、落語のストーリーを文字で記述するのは、いささか憚られますが、内容をご存知ない方のために敢えてあらすじを記しておきます。

「サゲ」まで書いてしまうと、落語を聞く楽しみが半減してしまうかも知れませんが、どうかご容赦ください。

1.演目「百年目」のあらすじ

- 大店で商売を切り盛りする一番の番頭・治兵衛は仕事では真面目一徹の堅物。しかし実は、夜な夜な芸者をあげて嵌めをはずす遊び人だった。

- そんな姿をひた隠しにしていた治兵衛だったが、ある日芸者衆を引き連れて花見に出かけて、酒を飲んで派手に騒いでいるところで偶然、お店の旦那と鉢合わせてしまう。

- 「これまで積み上げた信用が崩れ去ってしまった。来年は自分の店が持てると期待していたのに、俺はもうダメだ。」

- 一番知られたくない相手に自分の本性を見られた治兵衛は、酔いが一気に覚めてしまう。翌朝、治兵衛は旦那に呼ばれる。

- 旦那が開口一番に切り出した言葉「治兵衛さん、ゆんべ、眠れましたか?」に、治兵衛は思わず号泣する。

- 「旦那に怒られる。もう来年はダメだ」と思っていた不安が、旦那のこの一言で一気に和らぐ。

(中略)

- 最後に旦那は治兵衛にこう尋ねる。「昨日会ったとき、いつも顔を合わせている仲なのになぜ『ご無沙汰しています』と言ったんだい?」 

- 「あんな無用な姿でお会いしたもんですから、ここで会ったが『百年目(運の尽き)』と思いました」


2.浮かび上がる「リーダーシップ」

ではこの演目「百年目」から、どういうリーダー像が見えてくるでしょうか?

(1)リーダーの心構え

日頃の真面目な働きぶりからは、全く想像できない一番番頭の所業。店主の気持ちとしては、まずは裏切られたような気持になったのではないでしょうか?

「なんてことをしてくれたんだ!」と収まらない感情を、ぶつけたくなるのは無理もない。

信頼しているからこそ大事なお店を任せていたはずなのに、彼を信じた自分にも自信が無くなった。店主(旦那)としては心中穏やかではないと想像されます。

この旦那が最初に行ったことは、店の台帳(帳簿)のチェックです。

さすが大店の責任者、社長ですね。番頭が店のお金を使いこんでいるのではないか? 

ここはプロフェッショナルの視点です。人への信頼と仕事への信用をきちんと峻別し、店への経済的損害をきちんと把握します。

帳簿はまっさら、きれい。使い込みなどという乱れた点は全くない!
この一番番頭を信じて、店の切り盛りを任せたことに店主は安堵します。

この後、店主は色々考えます。店主としての自分、そして、一番番頭の働きぶり。これからも商売繁盛に尽力して欲しいと願っている一番番頭の性格。

この後で、発想が柔軟になっていくこの店主が素晴らしい。よほどこの番頭を信用していたと想像されます。

嵌めをはずすことも、男の甲斐性として必要。この店ののれん分けを託する商売人、それくらいの人間味があった方が良い。部下を許す・認めることの大切さに気付く。リーダーとして懐の深さを示す部分ですね。

(2)部下の賢い操縦術

しかし、とにかく本人とは話をしなければならない。本人からの弁を聞こうと翌朝一番に、その番頭さんを呼びつけます。この演目のクライマックスのシーンです。

店主から大声で怒られる。大目玉を食らって、自分は馘になって、即刻荷物を纏めて故郷へ帰ることになる。これまでの苦労は何だったのか?でも仕方がない。自業自得とはこのことだ。

色々な想いが頭を巡ったことでしょう。小さくなって店主の前に出る番頭。

そこで店主が発する第一声が

「番頭さん、ゆんべ、眠れましたか?」

これには何と表現したら良いでしょうか?ぐっと来ますね!いっそ大声でどやされた方が気が楽かも知れません。

この問いかけに、話っと泣き崩れる番頭。

この後、演目の中で店主と番頭さんとのやり取りが続きます。

ここで私が感じ入るのは、

部下の振る舞いや、特に失敗や失態に対しては、

「頭ごなしではなく、まずは日頃の『労い』の言葉から」

伝える、ということ。これは一見テクニックのように感じますが、実は違います。

店のお金を使いこんだりはせず、自分で稼いだお金で遊んでストレスを解消する。それでまた店の仕事に一所懸命励む。その日々の一所懸命さを先ずはきちんと評価し、相手に伝えることが重要。

これが、リーダーとして、チームメンバーや部下に関わる際の心掛けだと感じます。その気持ちと行動がメンバーや部下の心に訴え、動かすことに繋がると。

いかがでしょうか?

ではまた明日!
by 「働くあなたを元気にする」コーチ

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