平成の終わりのブックレビュー
Apr
26
平成の終わりに、一冊の本「人生いつでも花開く
(ヒロコ・ムトー 著 野絵瑠社)」をご紹介します。
これは、女性の人権を訴えることなど出来なかった大正~
昭和初期、優秀な女性たちの才能が葬り去られた時代に、
北九州・門司で生まれた女性が、数々の困難に直面
しながらも懸命に生き、晩年に世界を驚かせる大輪の花を
咲かせたノンフィクションです。
「ある女性」とは、武藤正子さん。
著者、ヒロコ・ムトーさんのお母様で、病床から見える
空を毎日ハガキに描き続けた正子さんの「雲日記」を、
ゆうこ新聞11号(2013年春発行)で
ご紹介させていただきました。
見えない片目と曲がらない足に加え、本人が
「病気のデパート、これ以上買い物したくない」と
呼んだ身体。
そんな正子さんの人生で最も注目したいのは、
彼女の「70歳からのリスタート」。
念願のパステル画教室に通い、見えない目をこらして
一生懸命に描くが(目の障害で)他の人と同じ形が
描けない。
バナナも(色が分からず)ピンクに塗ってしまう。
しかし「心で描いた本物の絵」と評された作品は、
72歳以降、3回も入選を果たすのです。
反比例するように勢いを増した病魔により、
ベッドに横たわって過ごすようになった正子さんが
西の窓から見える空をハガキに描き続ける
(※これが前述の「雲日記」)日々を送り、
ひとりでトイレにも行かれなくなった88歳。
「まだ自分にも出来ることはないか」と、
身近にある包み紙や和菓子の箱で、
3~5㎝手のひらサイズの「豆紙人形」を
作り始めます。
「心で絵を描く」と言われた正子さんによる、
ストーリー性豊かな豆紙人形の世界が、のちに
とんでもない“シンデレラルート”で海を渡ることに…。
当時の大統領の名前まで飛び出す展開、
ぜひ実際に読んでみて欲しいです。
人生のピークとは、いつなのか。
それは、誰が決めるのか。
窓から今日の雲を眺めながら、考えたくなる一冊でした。
ちなみに「雲日記」を掲載したゆうこ新聞11号の
テーマは「生きがいってなんだろう?」でした。
6年も前の話、なつかしいな~(笑)