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奇妙な矛盾
福島県猪苗代町秋元湖に流入する小倉川、その源流は、深山幽谷の流域である。
勿論、地図に掲載されている林道は下流約5㎞迄で、その林道の延長は獣道であり、地図には記載も無い。その獣道を、鉈で藪を打ち払いながら源流域に歩を進める高藤隼人(60歳)、その後に続く佐々木尚子(26歳)の姿があった。
彼らの目的は、小倉川源流に生息する「天然岩魚」を釣ることである。
平成二十九年八月十五日(火)午前6時10分、高藤隼人は、獣道から20㍍下の激流に向かって空中を飛んで、頭蓋骨陥没で即死した。
突き落としたのは、同行の佐々木尚子である。
佐々木尚子はその時点を境に、殺人犯となった。
所轄は、福島県猪苗代西警察署である。
捜査を担当したのは、熊沢和重解剖医(46歳)と、刑事の網島健一(30歳)である。二人が「奇妙な矛盾」を意識したのは、死体保管室から始まった。
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