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現代詩の小箱 北野丘ワールド

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ぽんぽんダリヤ

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中野ブロードウェーという
脳天気なアーケード街を歩いてゆくと
ころんとした小振りの玉ネギが後をついてきた
振り返ると
むこうもはっとして立ちどまった
いや、玉ネギは歩いても立っているのでもなかったが
じっとみつめると前球面に影をつくった
また歩きだすと玉ネギは
ぱっと光ってついてくるようだった

なんだか
いもうとに似ている
遊ぶのに足手まといで
いじめられるのが
心配で
わたしより
可愛がられているくせに
わたしがいないと淋しくて眠れない
オネショにまみれ
泣いて
なんでもわたしを真似て
石油タンクに昇った梯子で
未知のきょうふにまっしろになって
落ちた
わたしの名を たぶん 手の虚空に呼んで

 ……ちゃあああん……

   走れば泣く
    とおい
      うしろ
    ぽんぽんダリヤ

すっと
路地に身を隠す玉ネギ
ああ、もうそこはいいんだ
悩みの季節に通った
喫茶店スヴェニールは
ふらんすの想い出というらしいから
行こう
いや、まて玉ネギ
おまえは、生まれる前の
あいつがいない前の
じぶんなのか

忽然と
なんだろう
はく息がまっしろな
あいつの生誕した きらきらした雪の朝だ
耳にほぐれる土の匂いで笑って
わたしを追い越していく
あまく鮮烈な球体
身もあらわに
うすみどりの縞のつやつやで
#黒筒の熊五郎

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