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現代詩の小箱 北野丘ワールド

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某スーパー還暦奮闘記

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 人は定年退職するという年齢で、いろいろ転職をしてきて某スーパーへと就職できた。共済おすすめの仕事で採用されたのだが、初めの3カ月はレジをしてもらうということで苦手なレジをしている。2月に研修へ行ったらでコロナ陽性者がでて、濃厚接触者ということでしょっぱなからPCR検査を受け結果が出るまで自宅待機を余儀なくされた。結果は陰性であったがこんな身近に押し寄せていると怖く思ったものである。
 どこの世界にもお局はいるものでレジの世界も甘くはなかった。仕事して間もなくのこと、お店のチャージ方式の電子マネーカードが未登録エラーとでて何度やってもピーピー鳴るのである。たまたま店長が近くにいたので、バックヤードで調べてくれていた。お客さんがもういいというので、店長に伝えにいったところTという先輩が、横からカードスキャンしたの、しなかったのと強い口調できくのである。何も知らなかった私は、どっちだか忘れてしまっていて答えに窮した。その時店長がスキャンしてあるよといってくれたので、私は詰問をまぬがれたのだが、このおばちゃん何かっとしてるんだろうぐらいに思っていたが後の祭りであった。上がり際に、聞かれたことにはちゃんと答えるようにと釘を刺されたのであった。それでもまだ暢気だった私は、お局ににらまれたという自覚がなかった。やたらとTが厳しく注意してくる。仇でも取るように、なんだろうこの人と思っていた。返事をされなかったということがプライドを刺激したらしい。誰もがひれ伏さなければいけないベテランに。知るかそんなこと、普通に聞けばいいことを感情的に聞かれたんではこちらも普通に答えられないわい。怒気を含んで教えられるので、気分が悪く覚えられなかった。しだいに怒りの炎がわたしのなかにも燃え上がってきたのである。まずい。これでキレて人間関係を悪くし、職を辞すこといくつ。ここはガス抜きをしなくてはと考えた。
 チーフは話が分かる人だ。チーフに電話をし怒って教えられるので覚えられない。いきすぎだと訴えたのである。それが功を奏したか、何かいいことでもあったのか、対応が柔らかくなったような気がする。
 しかし、いまでもそばに寄られると何か言われるのではないかと身構えてしまう人なのである。休憩室で仲よさげに人と笑い転げているのをみると、フンと思ってしまうのだ。
時をほぼ同じくして入社したKさんとラインをすることができた。これが救世主なのである。Kさんにも天敵Kがいていじわるされているらしいのである。たがいに天敵のあれこれを言い合って70歳まで働こうねと誓い合っているのだった。

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武蔵藤沢ストーリー

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いらっしゃいませー
マスクからのぞく目は7分咲きの笑顔
アイコンタクトというけれど客はどこも見ていない
拾う神のおかげか今度はスーパーのレジに職を得た
早くしろ早く
そのプレッシャー海のごとし
なんて詰め方するのよ
商品をぐいと直す手つきに
石を落としたい
「慣れよ慣れ」ということばが渦を巻く
一日行くごとにきっと楽になるはずだから


四千七百五十三円でございます
2千ポイント引いてくれ
かしこまりました
返事だけはいい
上にはパンやら煎餅、底にはじゃがいもキャベツ
この軽いものから重いものへの
グラデーションを解体して
商品を潰さないよう収めなければならない
そしてこれでどうだ! と収めたころには
ポイントのことはきれいさっぱり忘れているのだ
現金会計機にデータを送ったあと
客にポイント引いたかと言われて
慌ててデータを呼び戻す
この呼び戻す会計機の番号をとちると大変なことになる
申し訳ございません済みません
とろいやつめという客の無言の視線に傷つく
しかし落ち込んではいられない
武蔵藤沢で始まった七〇歳まで雇用してくれるという切符を
この手にしなくてはならないのだ
いらっしゃいませーにドスが効く
#感情

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鶴を折るように

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壁に段ボールが
積み重なった部屋で
鶴を折るように
スッと
梅雨の緑を折る
子どものように泣く朝を折る
折りながら小さく祈る
大人になっても
朝の悲しみのわけは分からない
雨の音が聞こえないマンションの硝子を折る
何もする気がしない青い一日を折る
ゆうべも眠れず薬をひと粒飲んだ
やっぱり降り出した小雨を折る
詩人賞に応募した郵便局への道を折る
霊園の仕事の応募には連絡がない
絵が描けたらと思う赤の夢を折る
友だちのゆくえも知れぬ恋を折る
二・三の買い物からいそぎ帰った
お前に貸す金はないと母にいわれた日を折る
母と酒を飲み法華経の話をした日を折る
数年前。バザーで買ってくれた
コアラの縫いぐるみをそっと棺にいれた
寺に雑魚寝した通夜を折る
涙が出なかった告別式を折る
形見分けの明るい柄のブラウスを着た
ぽっかり目覚めてしまった朝四時を折る
もらった詩誌の礼状を遅れて書いた
夢への登場を待つ帽子の女を折る
黄色いクロッカスの花言葉を折る
波の音を何年も聴いていない
その子守唄を折る
いばら姫の百年の眠りを折る
段ボールふたを開けて、閉じた
はるかな南風を折る
沈む夕日を折る
これら束となり
水平線へと
飛んで行け

#渋谷文学

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どんぐり祭り

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宅地造成を逃れた
小さな雑木林に
足を踏み入れると
バラバラと
天からどんぐりが降ってきた

ここにリスがいたら
大喜びだろう
熊がいたら
冬眠の準備だ
私の旧い脳も
大はしゃぎして
あられのように降ってくる
どんぐり祭りを
踊っている
#短詩

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詩人以外に詩を読んでもらうプロジェクト

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 転職の多い私だが、還暦になって人は引退を考える年なのにコープのパート仕事に就職した。本当は共済をおすすめする募集で入ったのだが、みんな3カ月はレジをやってもらうとのことで苦手のレジをしている。かれこれ二か月たっている。どこまでできているかチーフとの面談が待っている。それによってはもう一か月となるかもしれないのだ。
 そんな中、一緒に入ったおばさんがいて、ぐちを言い合いしましょうとラインを始めた。そして何を思ったか「わたしは詩人です」とカミングアウト?したくなったのだ。
これまでは変に思われるかもしれないと隠れキリシタンのように潜伏していた。詩はなかなか理解されないと思っていたのである。それが年齢もあるのだろうか。ベルリンの壁のようなものがふっと消えたのである。そして詩とエッセイ書いてますといったら、わー素敵とのことで、第一関門は思いの他クリアできた。素敵と言ってもらえてうれしかった。第二関門は作品である。ガチ現代詩は無理だ。ちょうどライトヴァースの詩と函館を駆け抜ける篇のエッセイが載った同人誌ができたところなのでそれと、所沢文芸の巻頭に詩が載って選評でお褒めをいただいたのがあった。社会的に認められている感があるだろう。そして、最新詩集の『字扶桑』三点を渡したのだった。
 反応は果たしてどうかと思った。詩人に配るよりはるかにどきどきしている自分がいた。ところが所沢文芸に載せた「鶴を折るように」という詩には感動しましたというラインがきたのである!私のエッセイや詩に癒されているとの言葉も返ってきた。字扶桑が埼玉詩人賞候補になったときよりうれしかった。その人は心身にたくさんの荷物を抱えている人だった。実際に詩人じゃなくても言葉が届いている。詩人の狭い世界。読むのも書くのも詩人。そして少しでも評が、賞がほしくてたまらないという息苦しい世界。それなのに詩にふれたことはたぶん学校以来という人が、ファンと言ってくれた。自分の紡いだ言葉が人の心を動かすことができた。
 今スランプで詩があまり書けないけれど、詩人以外に詩を読んでもらう一人プロジェクトを思いたった次第である。心が疲れている人は詩を欲しているのではないだろうか。彼女のことでそう思った。詩は商業的には成り立たない。しかし、良い詩が一般の人の目に触れることなく詩人たちは言葉を残して人生を去っている。いつの時代かに再評価される幸運をまって。
 現代詩は難しい。読んですぐにはわからない。その壁だ。難解な詩の方が詩としてレベルが高いとして、評価されたくて難解な詩を書く。私もそのような現代詩をいくつも書いた。しかし詩人だけの詩集・詩誌の贈り合い、感想の贈り合いに疲れてもいる。
私は詩の世界に疲れていたのかもしれない。それが詩を書かない一般の人を欲したのではないだろうか。またどこかでだれかと詩の一歩を始めたいと思う。
#北野丘日誌

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