おはよう
壊れた カタツムリの殻の水浴び
おはよう
レールに光る ヤモリの夢の轢死
裸の背をかけのぼり
あおむけに影はたおれて
てのひらの乳房が
寒気に立つ方角へと
魚たちがまつげを叩いていく
何をなして
ここまで来たのか
人でなしの言葉でうろついて
秋がきても冬がきても帰らなかった
木の葉の虫食いたちが
ざわめいている
等しくひかりを受けるがいい
広場の隅にオスカー・ワイルドの
ぼろぼろの「幸福な王子」が
詩の彫像のように立っているのがみえる
つばめがくわえて飛び立った
青いサファイアの瞳が
地上を誰のものでもないまなざしにする
おはよう
うぶ声をあげる たて髪の幽霊
おはよう
くだけ散る 遺失物の散歩道
1013年冬
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