ナイン・イレブン
Jul
31
本業の取引先が紹介してくれた出物の911は、BMW535iの水没事故保険金+アルファで交換できた。
新車登録から1年数か月と言うと、普通でいえば新車に近い状態のはず。
しかし、その金額で購入できる以上は「多少難あり」なのは言うまでもない。
まずは、現行型911シリーズ(997型)はモデルチェンジ直前であるという事。
そして、破壊的なタバコ臭だ。
専門業者により処理されたとはいえ、かなりのヘビー・スモーカーと付き合っていたらしく、その破壊力は既に僕の健康状態を脅かしはじめた。
また、アルカンターラのステアリングに浸み込んだ汗の臭いが、これまた強烈だ。
僕が3オーナー目となるわけだが、前オーナーは半年で2万キロ以上を走破した兵。
しかも、純正装着のセミ・レーシングタイヤであるMICHELIN Pilot Sport Cupのままでだ。
つまり、前オーナーは常識では考えられない体力の持ち主だ。
車体やガラスの飛び石傷の状態から判断して、頻繁に250km/hを超える速度で、しかも長時間巡航している。
その走行距離が第3の問題だ。
一般的なカレラなら考えられるが、GT3でここまで走行距離を伸ばしたマシンを僕は見たことが無い。
走行距離により、このマシンの一番おいしい時期は過ぎているのだが、そこはこちらも筋金入りのマニアである。
ディーラーの認定中古車であり、メーカーの新車保証継承が可能という事と、確かに走りこんではいるものの、前オーナーはクルマの扱いを心得ていると見抜き、僕は後任を引き受けることにした。
それに、僕は足車としての利用であり、サーキット走行はそう頻繁には無いので、仮にブッシュ類の劣化があったとしても、さほど問題にはならないだろう。
そういう意味で、今後発生する全ての問題は、僕が引き受ける決心がついた。
ただし、今回の僕の判断は、素人が真似をするのは危険だという事を付け加えておく。
タイヤはディーラーの負担で新品に交換されるという事なので、MICHELIN Pilot Sport Cupから、ストリート用のハイ・パフォーマンス・タイヤであるMICHELIN Pilot Sport PS2に変更した。
これは、このマシンを晴天用の趣味車ではなく、足車として扱う強い意志の表明である。
当家のクルマ選びには、「ポルシェ以外で」という鉄の掟があった。
理由は「速いに決まっている」からだ。
今回その禁を破ったのには、これまた理由がある。
全幅1,850mm(プレート巾実測1,870mm)という、日本の駐車場事情だ。
既に大型化した新型BMW 5シリーズの全幅はノーマルシリーズで1,860mm、M5で1,891mmとなった。
新しくなったBMW 6シリーズも同様だ。
フェラーリもランボルギーニもR8もGTRも、規格外になってしまった。
そして、M6という芸術を忘れさせてくれる、全幅1,850mm以内のover 300km/hカーは、911のTURBOシリーズまたはGTシリーズ以外にはない事を理解した。
必然がもたらした選択の為、試乗はしなかった。
そのため、僕が人生初めてポルシェのステアリングを握ったのは、納車後である。
ある程度のプラクティスの後に確認できたのは、麻薬のような加速、レーシングマシンのコーナリング、世界屈指のブレーキ性能だ。
ただし、911GT3のマニュアル・トランスミッションは現代では性能的に優位な仕組みではない。
マニュアル・トランスミッションはシフト操作の時にシンクロを待つ時間が必要なのに対して、デュアルクラッチのセミ・オートマチックは0.02秒で動作が完了する。
それは速さの問題だけではなく、安全性能にも影響する。
例えば、マニュアル・トランスミッション車は、250km/hのコーナリング中に5速から6速へシフトアップしようとすると、そのスピードにもかかわらず、片手でステアリングを保持する瞬間が必要となる。
これには、相当の緊張感を伴う。
ではなぜ、ポルシェは911GT3にマニュアル・トランスミッションを与えたのだろうか?
僕には既にその理由を理解した。
この方が面白いからだ。
911GT3のコンフォータブルな速度域は150km/h付近であり、BMW M6が200km/h付近で快適になるように設計されているのとは違う。
加速やコーナリング性能はM6を上まわるが、快適性や最高速では劣る。
その上、いかなる状況下でもその性能を引き出すには、ドライバーのプラクティスを要求してくる。
どこかで見た女のように、なかなか手強い。
ゆえに面白い。
隠れ家のガレージに、一般車両のワゴンが置かれていた日々は、僕のモチベーションを剥ぎ落とし、ストレスで脳が腫れ上がる感覚があった。
また、性能的に気に入らないマシンを持つと、過度なモディファイをしようとしてしまう事は、誰にでもある本能のようなものだ。
今は違う。
何やら力が湧いてくる。
必死に働くだけの価値を感じる。
実際に僕は取り憑かれたように働きだした。
心配した、取引先・社長仲間達の反応も意外なほどに上々だ。
この女、あげまん。
そして、僕は今月も全力で走り続ける!
僕と彼女はまだ意志疎通が充分な状態ではない。
にもかかわらず、M5に仕掛けられた僕らは、まるで何もなかったようにM5を抜いて見せた。
【ポルシェ911(997)GT3 2010モデル】
Posted at 2011-07-31 03:22
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Posted at 2011-07-31 08:15
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Posted at 2011-08-01 05:14
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Posted at 2011-08-01 14:28
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Posted at 2011-07-31 09:03
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Posted at 2011-08-01 05:17
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Posted at 2011-08-01 05:34
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Posted at 2011-08-01 06:01
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Posted at 2011-08-01 02:29
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Posted at 2011-08-02 00:00
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