2012年末、北海道の幌延町の地下深くを視察した。 http://www.jaea.go.jp/04/horonobe/ 高レベル放射性廃棄物を地層処分する際に使われる巨大地下施設と、人工バリアの研究地である。 我々人類が開発した、魔法のエネルギー = 原子力は、 高レベル放射性廃棄物を残してしまう。 我々は、そのエネルギーの代償としてこれらの危険な物質を、数万年単位で管理しなくてはならない。 その年月は余りにも長く、地殻変動さえも考慮する必要がある。 それに対して、現在開発されている人工バリアの有効性を実際に確認する手立ては乏しい。 ましてや、これだけの巨大施設を数万年管理する費用をだれが負担すると言うのだろう。 原子力発電の経済的優位性など、石油エネルギーを持たない日本の「夢」や「希望」にすぎず、原子炉工学を学んできた者の一人としてあまりにも残酷な結末を見せられた気がする。 皆さんは、電力会社の決算書を読まれたことがあるだろうか? 原子炉には耐用年数があり、その後は廃炉しなくてはいけない。 しかし、廃炉費用は明らかに積み立て不足だ。 使用済み核燃料は、再処理する事を前提として資産計上されている。 日本国内の再処理工場は稼働していない。 どちらにしても原子力は可能な限りゼロにすることが、現在の政府方針である。 この中で、使用済み核燃料は、除却損に計上すべきものがほとんどである。 そして、この最終処分の費用は積み立てられていない。 東電が行っている「事故補償」に関しても、積み立てが必要な科目だ。 つまり、原子力発電所を持つ電力会社は、全て債務超過の状態にある。 さらに、原発を稼働させる為に、どれほどの政策費用がつぎ込まれているというのだろうか? 原発一基20年間で893億円という試算もある。 それら発電に必要な経費を全て度外視(税金投入と先送り)して、原子力が「安いエネルギー」とされている事に対して僕は失望した。 これが僕が学び信じていた「CO2を排出しない、日本の切り札」の姿だったのだ。 そして、この最終処分場研究地の地下深くに潜り、涙する事になる。 たかだか30年~40年の耐用年数の原子炉の為に、数万年に及ぶ高レベル放射性廃棄物の管理が必要であることに、いったいどのような経済性が成り立つというのだ? 少なくとも僕は宗教家ではなく、科学と経済の立場から、原子力発電の経済的優位性を否定する。 日本のリーダーが決断すれば、科学者も経済界もそれに対応できる。 その理由も述べる事ができる。 火力発電はGCCの登場により、これまでの2倍の高率で発電できる。 したがって、CO2を増加することなく、全ての原子力を停止できる。 燃料に関しては、サハリンからのパイプラインが有望だ。 燃料効率が上がれば、輸入すべき燃料費も増加しない。 再生可能エネルギーに頼るのはまだまだ夢物語だが、現実的に常時100万キロワットを出力できる原子力の代替は、技術的・経済的に可能である。 大切な事はリーダーが決定する事により、日本は全く新しい時代への一歩を踏み出せるという事だ。 その先に発展がある。 数万年と言う単位での負債を、我々はこれ以上増やしてはいけない。 ------------- ・約1万年前 - この頃、最後の氷期(最終氷期)が終わったとされる。 ・前5000年〜前3000年頃 - 完新世の気候最温暖期。 この頃、海面は現在よりも数m(4mから10mまで諸説あり)程度高かったと考えられている。 ------------- 数万年が経過した世の中で、人類にここが危険な場所である事をどのように伝えれば良いのだろう。
Posted at 2013-01-17 02:54
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Posted at 2013-01-17 14:03
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