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  • 桜色の恋文

    2030年4月 国から一通の恋文 まさか老体の私にこれが来るとは 子どもの頃 叔父の洗脳されていた話を思い出す 命を捧げることに疑問など持たなかったという 自分も国のためにバンザイと突っ込んでゆく そんな歴史を繰り返す時が来た 何てことだ 今まで社会のために骨身を削り ヨタヨタになるまで働き 家族の...
  • 天空の図書館

    僕は天空の図書館にいる 人の上、車の上、ビルディングの上 誰にも届かぬ遠いところで 真っ白なページの雲を読んでいる そよそよと感じてくる柔風 程よいほどの光のシャワー 僕のエッセイに希望を与えてくれる 誰もいないのに寂しくない気持ち 読書の時間は静かに優しく 見知らぬ鳥がめくったページに現れる 僕と...
  • さらりさらさら

    さらりさらさらさらり風 さらなる旅路にさらりと吹いて 僕はさらりさらりと進みたい さらりさらさら さらりさら さらりさらさらさあらさら 立ち止まる気はさらさらないよ さるものは追わないように さらりさらさらとさようなら さらりさらさら さらりさら さらりさらさらさあらさら さらさらさらさらり風 次の...
  • 遠近両用メガネと首の関係

    遠近両用のメガネに慣れてしまう もう近視だけのものには戻れない 老眼に合わせた度はレンズの下部 階段を降りる時に頭が下になると 近距離を老眼の目で近視用で見る 段差が歪んで見え転けそうになる だから目だけを動かし下を見てる すると頭を下げない習慣がついて ダブレットや本を読むときも同じ 頭を下げない...
  • ドヤ街の雀士

    統計学だけでは勝てやしない 敵の機微を見逃すことなく心理を暴く それが雀士の目だ 小芝居をし 小芝居を見破り 脅し 脅しにのらず 能面をかぶり 顔色を伺い 速さで威圧 急かされず打つ 癖を持たず 相手の癖を見抜く 勝負はせず 相手に勝負させる 何もかも思い通りにいかない 赤ん坊をあやすように ひたす...
  • 右君は左君から聞いた

    君は右君だと思っているみたいだけど ほんとうは左君なんだよ 右を見ると右君の僕がいるでしょ だから君は左君なんだよ 僕を左君だと思っているでしょ だったら僕が左君になってもいいよ 右君でも左君でも構わないよ 右君に拘っても左君に拘っても 僕は僕で僕以外の僕じゃないんだから それに君は君で君以外の君じ...
  • 弱い朝から

    朝は弱い僕を知っている 不安が目を覚まさせ 今日の始まりに躓いて起き上がる 昨夜の他愛もない一言が 浅い眠りから気怠さへ繋げて 椅子に座り肩を落とす カラダは重たく沈んでゆく ミャ〜と猫が膝に飛びのり 何もかもお見通しのその目で 僕を見つめると腕を伸ばし胸を掻く 両手で撫でる 気がかりを少し消しなが...
  • Loopy

    月に雨 螺旋を描き ダーツのように大地を刺す雨 泥は隆起し足枷となり 俺の足は奪われる 腹を空かした禿鷹が距離をおき 俺という獲物の様子を伺う すでに食物連鎖を 俯瞰している立場ではない だが俺はまだ生きている お前達が集まるにはまだ早い 失せろ 失せろ 俺は終わっていない 次第に 腐食してゆくカラ...
  • 枯渇のオアシス

    今日も飲まされながらも 満たされぬ渇きが次第に強くなる 主人はテーブルにコップで差し出す ふたりは笑窪をつくる、上手につくる 定事の絶対に手だけが震え 右手に左手を添えれば 左手も震え 次第にテーブルがガタガタと震え 床に共振すれば主人が痙攣し始めながら これは僥倖だ 素晴らしき我がオモチャよ さあ...
  • 騒客(そうかく)

    愚かなる我を知り 充実から滲む言葉を磨き 喜ばせよう貪欲を散りばめ 放つ詩は惜しみなく 鈍き輝きであろうとも 光放つ詩人であれ 咀嚼しきれぬ想像 表現しきれぬ創造 未だ貧困なる詠み手だが 山月記の詩人と同一化せず 虎に成ることを拒み 拒絶は頑固に硬い コンプレックスを才能の素とし 先天的な継続力 集...
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