『喜びも悲しみも幾歳月』
Jan
17
電車がホームに到着する。
岩魚太郎(73歳)が所在なく座席に足を組んでいる眼を閉じて
いる。
車内のアナウンス「神保町−神保町−ホームは右側です」
太郎がアナウンスの声に思わず眼を開く。
神保町の駅名。
太郎が慌てて座席を立って、扉が閉まる直前にホームに降りたつ。
地下鉄出口案内の表示。
その前に立って眺めている太郎。
その横を降りたった反対側のホームに滑り込んでくる電車。
ホーム中央を、肩を丸めて歩く太郎の後ろ姿。
2.神保町地下鉄の出口。
太郎が階段を上がって出でくる。
太郎の顔が左右に視線を走らす。
その視線の先には、古本屋が軒を並べている。
その方向に向かって歩き始める太郎。
3.一軒目の古本屋
太郎が入って行く。
棚一杯に学術書籍が並んでいる。
箱の上にも乱雑に置かれている本・本・・・・
その中に白い値札がついている。5.000円の文字
その本を無造作に取り上げ、如何にも興味なさそうにめくってポ
イと置く。
番台に座った老眼をかけた店主らしい男が、音のした方の太郎を
眼鏡越しにちらりと見る。
ひやかしはお断りと言って目線である。
太郎はそくそくと店から外へと出る。
4.再び古本の通りが並ぶ。
その前を通り、積んである本を手に取ってパラパラとめくっては
戻しながら歩く太郎が本を手にとって突然足が止まる。
その本の表紙がUPされる。
「昭和39年5月キネマ旬報」と書かれていた雑誌だった。
太郎は、慌ててその通りの車道側に立って、その書店の屋号を確
認した。
矢口書店 映画・演劇・戯曲・シナリオ・の文字があった。
5.矢口書店店内
店内の構成は通路がU型で、奥がカウンターの台が置かれ、尚子
(35歳)と桂子(40歳)が忙しそうに本の整理をしていた。
太郎がその前を通りすぎようとする時、一瞬太郎の足が止また。
太郎の視線の先には、本のタイトルが、『新喜びも悲しみも幾歳
月』とある
太郎は迷わず尚子に聞いた。
太郎「これおいくらですか?」
尚子「五百円です」とぶっきらぼう。
太郎が財布から五百円玉を取り出して渡す。
太郎が尚子に声をかけたい様子で受け取って本を片手に眺めてい
る。
尚子「何か?」と言う怪訝な表情
太郎「この本の前の、佐田啓二と高峰秀子のシナリオはありませんか?」
尚子「ありません」と素っ気ない。
尚子「出ましたらご連絡します、ご連絡番号を」
太郎「ここへ電話をしてください」と名刺を出す。
尚子「わかりました」と言って名刺の保管箱に無造作に入れる。
6.外に出て、まじまじとそのた本を眺める。
『新喜びも悲しみも幾歳月』に、佐田啓二と高峰秀子の映画のポスターが(OL)
そのポスターにさらに(OL)して
7.千葉県犬吠崎灯台、快晴の朝日が昇る
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タイトル「岩魚太郎の青春(仮題)」
――――――――――――――――――――――
当時の私は、映画青年であった。
1958奮起して上京、日本に一校しかない学校「シナリオ研究所」にアルバイトをしながら夜間通学二年、二期生として無事卒業。
卒業以降の映画業界は、テレビドラマに押されて第一次映画斜陽時代、映画にかかわる人材の解雇が相次ぎ、映画関係会社への就職はゼロ。
苦い想い出、だが我が青春に悔い無し!と言った充実した青年期を過ごした。
映画『喜びも悲しみも幾歳月』とは、私の人生をも変える映画であった。
それから幾歳年月・・73歳の私が、何となくの思いつきで神保町に下車、そして偶然、まさに偶然にも『新喜びも悲しみも幾歳月』と言う、シナリオで書かれた本に巡り合ったのである。
その冒頭から、シナリオの文章方式で記述した。
シナリオとは、イメージ文学である。
Posted at 2011-01-17 05:46
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Posted at 2011-01-17 15:48
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Posted at 2011-01-17 07:21
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Posted at 2011-01-17 17:40
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Posted at 2011-01-17 07:33
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Posted at 2011-01-17 17:50
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