講師 プライス悦子氏
講師紹介と略歴
6月は、海外での江戸美術収集家の第一人者であるプライス悦子氏に「江戸美術普及に捧げた我が人生」と題して話していただきます。
〔プライス悦子氏のプロフィール〕
武庫川女子大卒、日本美術史は学習院大学院で小林忠教授に学ぶ。
1966年に、鳥取の旧家からオクラホマの資産家に嫁ぎ、人種差別に耐えながら夫のジョーと共に江戸美術の収集と普及に努めてきた。その後カリフォルニアに移住し財団法人「心遠館」を設立。1982年にはロスアンジェルス郡美術館に私財を投
じて、日本館も設立、半世紀かけて集めた作品のうち1/3を所蔵している。江戸美術について彼女の信念と波乱の人生を語っていただきます。
講義内容
・2006年7月から、東京国立博物館でプライス氏所有の江戸美術120点の「里帰り展」が開催される。今回は里帰り展で公開される伊藤若仲や円山応挙の作品などを中心に、コンピューターに取り込んだ画像を紹介いただいた。
・江戸美術は、明治から昭和中期まで見過ごされてきた文化。明治時代は近代化のため、封建社会だった江戸時代は悪い時代として、文化的にも完全に無視された。昭和中期以降大学でも取り上げられるようになり、見直されてきた。
・夫のジョー・プライス氏は、学生時代より日本芸術に造詣が深かった建築家フランク・ロイド・ダイトと交流があり、影響を受けた。ニューヨークの画廊で、たまたま出会った江戸美術に一目惚れし、5点ほど買い求めた。それを機に、コレクションを始め日本へも足を運ぶようになる。その時、通訳したのが縁で悦子氏と出会う。以後、40年間ともに江戸美術の普及活動に費やす。
・ 余白の美が他国の美術にはない、際立った特徴。計算されつくされた美しい余白を鑑賞してほしい。
・欧州美術には大いに影響を与えている江戸美術だが、そのことを隠そうとする風潮が欧州の学者にはあり、正当な評価を受けていない。アメリカでは、本格的なコレクターは5名と十分認知されていない。日本でも、明治から昭和中期まで学術的に無視された歴史があり、日本人自身素晴らしい日本芸術を十分理解していない。
過去40年江戸美術の普及に務めてきたが、「里帰り展」はその集大成。
講師 渡部隆男氏
講師紹介と略歴
5月度のセミナーはSBMSの会員でもある渡部隆男氏に講師をお願いして、「食肉業界の実態:どうなるBSE/鳥エンフルエンザ」と題してお話し頂きます。
米国でたった一匹のBSE(狂牛病)にかかった牛が発見されたことにより、日本のファーストフード店から「牛丼」が消えました。そして最近は鳥エンフルエンザの連鎖的な感染により、養鶏業経営者の自殺にまで発展してしまいました。渡部氏は下記プロフィールの如く、40年以上にわたり食肉を扱っており、日米の食肉業界に精通している方です。いま話題性のある演題で、業界の実態や裏話など、面白い話が期待できそうです。
〔渡部隆男氏のプロフィール〕
1963年早稲田大学卒業と同時に貿易商社野崎産業入社。
1973年同社のLA支店長として出向。
1997年同社を退社してNEVADA-UST創立し現在に至る。
野崎産業時代から一貫して食肉輸出入に従事。
講義内容
米国で発見されたBSE(狂牛病)のために、日本はアメリカから牛肉の輸入を全面禁止し、吉野家から牛丼が消えてしまった。しかし、米国では、牛肉の値段は下がらず、アメリカ人は気にせず食べている。この違いは、農耕民族と狩猟民族の違いとして考えると理解できる。狩猟民族は何万年にもわたって肉を食べ続けており、米国ではミートといえば牛肉のことで、牛肉の無い生活は考えられない。また、パニックになるのを防ぐために、米国政府は必死にBSE隠しをしていることも十分考えられる。
牛の数を比較すると、米国は1億頭、米国人2人に1頭の割合で、日本は280万頭しかいない。日本では、肉は高いものと考えられている。日本で、なぜ肉が高いかというと、それはコストがかかっているから。
米国では、18ヶ月の短期肥育だが、日本人の求める霜降り肉を作るためには4年間かかる。この肥育期間の差が、コスト差となって現れてくる。豚の場合は、一頭あたりの生産コストが、米国は13500円、日本は29000円。内訳は、日本は飼料代が18000円。これは、日本では飼料(主としてトーモロコシ)を100%輸入しているからで、米国は、自国産飼料を使っているので、コストが安い。
日米のひとりあたり、1年間の肉消費量を比較すると、日本人は牛肉7キロ、豚肉11キロ、鶏肉10キロの合計約30キロ、アメリカ人は牛肉30キロ、豚肉25キロ、鶏肉20キロの合計75キロ。魚の消費量の比較では、日本人が100キロで、アメリカ人は10キロ。日本人はたんぱく質を、魚で取っている。日本人は歳を取ると、肉から魚を食べるひとが増えるので、これからの日本では、肉の消費はあまり伸びないかもしれない。
日本の、肉の自給率は、牛肉が39%、豚肉が65%、鶏肉が96%。牛肉は自由化になり、日本で生産してるのは、高級品だけで、一般向けは輸入に頼っている。豚肉もまだ、国内生産者を保護するために輸入制限をしているが、この制限が撤廃されるのは2,3年のうち。
米国は世界一の肉の輸出国で、BSE発生以前は、年間50から60万トンを輸出している。また同時にオーストラリア、ニュージーランドからハンバーグ、ソーセージ用の安い肉を輸入している。オーストラリア、ニュージーランドの生産者は米国が一番の客なので、日本市場への関心は低い。
米国でのBSEの発見で、米国からの牛肉の輸入が止まったとき、オーストラリアやニュージーランドから輸入すればよいと、日本では考えたが、オーストラリア、ニュージーランド産の肉では、吉野家の牛丼の味を出すことができなかった。米国の牛はトーモロコシで育っているからうまく、オーストラリア、ニュージーランドは草で育てられているので、肉も硬く、米国産のような味がでない。
日本が米国に要求しているBSEの全頭検査は、米国は受け入れられないこと。膨大な費用がかかるうえ、米国人に不安を与える。日本の米国産牛肉輸入禁止問題は、いずれ政治決着がつくと思う。
BSEは人間に感染するために恐れられているが、本当に怖いのは、牛、豚、鹿などひづめのある動物だけが感染する口蹄疫。世界で汚染されていない国は18カ国しかない。中国は豚の大生産国だが、口蹄疫の汚染国のため、輸出することができない。もしアメリカで口蹄疫が発見されたら、米国の肉食業界は破綻する。
講師 津川国太郎氏
講師紹介と略歴
4月度の月例セミナーは健康維持、医療に関する話題を取り上げました。中でも、病状が顕在しているのに病名が不確定で曖昧にされている病気。”めまいといびき”です。この症状は一見健康と思われる男女にも顕れ、潜在的な病気への遠因とみなされているとのこと。
津川先生は耳鼻咽喉科の専門医としてアメリカで多くの患者を治療してきた方です。皆さんの中に大きないびきをかくので悩んでいる方は是非真剣に聴いてみてください。
津川国太郎氏
1926年岡山生まれ。
岡山医大へ進学時に終戦。岡山大学医学部耳鼻咽喉科入局2年半後に渡米留学。
LosAngeles地区のWhite Memorial Hosp., Cedars of Lebanon Hosp., Harbor General Hospital などで研修。
1957年から数年は個人開業医となる。1961年から1991年までの30年間はKaiser Permanente Medical GroupのHarbor City Medical Centerで勤務し引退。
日系医師として、地元の羅府新報、TVFanなどに長年に亘り健康関係の話題を連載投稿している。また、同人雑誌”新植林”のエッセイストとして健筆を振って活躍中
4月講義お礼状
1. めまいについて
めまいとは、学術用語。非常にわかりにくいもので、医者が嫌がる症状でもある。目が回る、という表現も使われるが、少し異なる。耳鼻科医が専門家とみられている。
原因:
調べても特に原因がわからない場合が多い症状。
高血圧、糖尿、船酔いなどから生じることもあるが、必ずしもそれらが一番の原因ではない。
貧血、酸素が足りない、平衡感覚の中枢がちゃんと働かない、そのため、めまいが起きる事もある。
また、高血圧が原因と診断されることがあるが、それは、薬を飲むと血圧がさがり、頭に血が回らないために生じていることもある。
脳に血を増やすには血圧を上げる必要がある。しかし上げすぎると血管が破ける事もあるので、高血圧だといけないのは確か。だが、原因の発端とはいえない。
めまいと平衡感覚とは:
情報は全て小脳の中枢にあつまっている。目が回る症状が脳の中で別の中枢に伝わり、それらがおなかに影響を及ぼしたりし、いわゆる合併症を引き起こす。
耳は情報を与える一つの機関であり、一般的に生活の中で、知覚から情報が入ってくる。目が回ると感じるときの状況は、例えば、横になったら、天井が回っていると感じ、原因がわからないので不安になる、という不安に感じる精神状態へ変化していくものである。
また、めまいが発作的に起きる病気の一つメニエルシ病の原因は、内耳にある液の圧力があがることによって異常な反応がおきるというものである。そのほか、特徴として、子供はめまいを起こすことはない。ジェットコースターなどにのって目が回って喜ぶという感覚なので、たとえくらくらしてもめまいとは感じていない、ということでもある。
脳などの手術によって直るのか:
内耳の液の圧力があまりあがらないようにする手術がある。この結果、情報が上がってこなくなるのでめまいがおきにくくなるかもしれないが、直接の対処法ともいえない。
めまいはいろいろな局面から、調べないとわからない症状の一つである。
本物の頭骸骨を閲覧できました。
2. いびきについて
少しぐらいのいびきはご愛嬌かと思われるが度を越すと迷惑なもの。いびきをかく人は、なんとも思っていない事が多い。
いびきから生じてきたこと:
いびきをかく人は、呼吸をしていない時間がある場合が多い。人によって、寝ている間10秒から、30秒ぐらい、無呼吸状態に陥る。この無呼吸によって、結果、睡眠不足につながったり、血中の酸素量が減るので、いびきはむしろ病気とみなされてきている。
いびきの原因:
軟口蓋が発達していて、震えていることが多い。一概にはいえないが、全体的に口を開けている人が多い。寝ている間、舌がさがってしまっている。特に熟睡している人に多い症状だといえる。
また、鼻が詰まっていて鼻で息をするより、口で息をしている人、太っている、酒をのむ、ということも一つの原因と考えられる。
子供のいびきの原因はたいてい、扁桃腺が大きいためだったりする。
しかし、全てにおいて、何が原因とは言い切れないものである。
治療方法:
横に向かせたり、鼻をつまんだり、などの方法もあるが、これも、一時的に止める対処方法の一つとしかいえない。手術で喉を広げて音をださないように(振動させない)方法もあるが、ある程度はとまるかもしれないが、最適というわけではない。
統計:男性の方がいびきをかく傾向にあり、やせた人よりも太った人、という統計はあるようだが、あくまで統計。
講師 Walter 渡辺氏
講師紹介と略歴
3月度の月例セミナーは講師としてS.B.M.S.会員でもあるWalter 渡辺氏に語っていただきます。渡辺氏は米国滞在43年、現在はビジネスコンサルタントのかたわら国際政治経済の調査・分析に心血を注ぐ “情熱と信念の人” です。
講演では、本当の情報とは?日本、米国の現状はどうなっているか?について忌憚なく論じていただき、特に私たちの祖国日本の問題点と進むべき方向について語っていただく予定です。
渡辺氏からも『我が祖国日本の将来を心配する話題になると思いますが、矢張り日本人として何か喋らなければならないと言う義務観念が生まれてきました』というコメントをいただいています。
Walter 渡辺氏略歴
1943年:同志社予科入学。1944年:日本陸軍に徴兵入隊。
1946年:同志社大学部に復学。
1948年:卒業、亀井株式会社入社。New York事務所長、米国支店長から本社貿易部長を経て、1969年依願退社。米国系航空貨物会社極東方面支配人。
1983 - 1994年西濃アメリカ社長、会長を経て1996年退社。以降国際政治経済の調査とコ ンサルタント業。
講義内容
はじめに 1. 私は他人から“間違っている、過激だ”といわれることは気にしない。人それぞれいろいろな信念を持つことは当然だからである。
2. 私は戦後、日本の教育の基本となっている『みんな仲良く、同じように』という考えには同意できない。
3. 一人ひとりが自分の意見を持つ人間でなければいけない。そうしなければ日本国は良くならないと思う。
4. 今日ここでは、世界が、日本と日本人をどのように見ているかについて、各国の情報網の原文から拾い出して紹介し、同時に私が日頃気になっていること、許せない問題について述べたい。
1. ボジョレ・ヌーボについて 1. シアトルに本部がある、世界の日本通が日本について書いているグループのコメントによると、フランス人のセールスマンが「これは日本人にゴミを飲ませているのだ」と言っているという。
2. こう言うことを言われるのは、日本人として耐えられないことだ。
2. 日本語の劣化で我慢できないこと 1. 今やNHKのアナウンサーで敬語を完璧に使える人は十人に一もいなくなった。
2. カタカナ外来語があふれ、間違って使われている。(例:フレッシュなレモンちゃん)
3. 日本人はまず、日本語をしっかり身につけるべきである。
4. 日本の教育では日本教員組合が日本を堕落させたと思っている。
3. 米国の環太平洋防衛戦略布陣について 1. 米国のシンクタンク(STRATFOR=C.I.A.に最も近いグループ?)が 昨年11月に発表したところによると、ラムズフェルド米国国防長官は将来は太平洋の防衛戦略の中心をオーストラリアに移したいと考えており、米国が太平洋で最も信頼できるのはオーストラリアであることが良くわかる。
2. 同じく STRATFOR に次のような記述がある。「日本のイラクへの自衛隊派遣に関して、サマワ地区の首長(酋長)に100億円を払って、自衛隊員の安全を図った」自国の自衛隊の安全を保障してもらうため100億円を払うとは、情けなく、恥知らず、品のなさ、日本人として身の縮む思いである。100億円で安全を買うことは、友軍からの嘲笑と自衛隊員の孤立を招くだけだ。
3.日本の問題点は国民に問題意識がないことだ。
4.イラク戦争とは 1.イラク戦争とは、石油と、キリスト教・イスラム教との戦争であり、ネオコンとは、キリスト教徒の右派が精神的に高度化されて、それを アメリカの国力に結びつけた原理主義者といえる。
2.いうなれば、イスラム原理主義者とキリスト原理主義者は同じようなものだ。今回のイラク戦争も、ネオコンが推し進めたものだ。(ブッシュ大統領、チェイニー副大統領、ウオルフウイッツ副長官など)
5. ロイヤルダッチ・シェル連合 1.英国 ― プロテスタント ― ピューリタン渡米 ― 米国誕生 ―
キリスト教右派 ― 米国ネオコン誕生 ― 9.11事件 ― キリスト教右派、ネオコンに協調。
2. オランダ ― カトリック ― ローマ法王パウロ二世 ― パウロ 法王米国非難 ― 独・仏、イラク戦争に反対。
3. 日本は石破防衛庁長官(プロテスタント系?)、緒方貞子氏(カトリック系)
6.Small & smaller 1.【ニューヨーク・タイムス記事“Small and smaller”より】最近はインドのBangalore という町では米国の税金の申告業務をビジネスとし ている人や会社が数多くあるという。
2.世界は急速に小さくなったことを示している。
7.Japan that can't say No 1.【Slate とFinancial Timesより】「日本の国家財政の立て直しは日本人には出来ない」と書かれている。―― 日本長期信用銀行の米国 Ripplewood 社への売り渡し問題。(日本政府は国民の税金を8兆円もつぎ込み、それを10億円程で売り渡し、そのご新生銀行として発足させた)など。
2.日本人が出来ないことを“Gaijinn(ガイジン)”がやろうとしている。
3.このような日本人が聞きたくないようなことは日本では報道されないことに危機感を感じる。
8.人口問題と財政問題 1.世界の人口問題:【Christian Science Monitor より】
2050年までに世界の人口は90億人になるという。また人口増加の著しい地域のうち、96%がアフリカ、アジア、ラテンアメリカの貧困地帯である。
2.日本の人口問題:
2050年の日本の人口構成は、0-14歳(10.8%)、15―65歳(53.6%)、65歳以上(35.7%)となってしまう。
3. 日本の借金は、今日時点で905兆3,447億円、国民一人あたり720万円の借金があり、毎秒200万円づつ増加している。たいへんな問題である。
講師 豊田泰久氏
講師紹介と略歴
2月度のセミナーは、今や日本人の顔のひとりになりました、Walt Disney Concert Hall の音響設計を永年に亘って担当した豊田泰久氏を講師に迎えて、「Walt Disney ConcertHallの音響デザイン」と題して、Disney Hallの音響の特徴、世界のコンサートホールとDisney Hallの比較、コンサートホールとオーケストラについて講演いただきました。
米国の各紙だけでなく、ロスフィルハーモニー指揮者の篠崎靖男さんが今や世界最高峰の音響設計と絶賛されたWDCHは、1989年から14年の歳月と2億7400万ドルかけて昨秋完成しました。日本人の手によって成し遂げられた、このコンサートホールの心臓部である音響技術の背景を知ることは、私達ロス在住の者にとっても大変興味深いものがあります。
なお、今回はJBAビジネスセミナーとの共催となります。
豊田泰久氏略歴
広島県出身。九州芸術工科大学を卒業後、永田音響設計に入社。50以上の音楽ホールの設計を担当。
東京・サントリーホールの音響設計を手がけたことでも知られる。舞台を取り囲む客席の段差を音響に利用した方式は世界的にも珍しい。
ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団は、豐田氏の設計されたホールに対し「世界でも最大級に音の良いホール」と絶賛している。
講義内容
講義の要点
・Disney Hallは、1987年Wallt Disneyの未亡人故Lillian Disneyの$50ミリオンの寄付で始まったプロジェクト。LAフィルがホームとする公共ホールである。
・Disney Hallと 札幌ホールは姉妹のような関係。札幌ホールは、 Disney Hallより後の91年開始し、97年に完成。Disney Hallの 設計を大いに参考にして造られた。先行していたDisney Hallは資金難で94年に設計がストップ、98年に再開された。札幌の結果を参考にすることができ、結果的にDisney Hallの完成度が高まりタイミングが良かった。
・建築設計のFrank Gehry氏は、常に「音響はOKか」と確認した上で設計を進めたので、音響設計はやりやすかった。それだけに、弁解の余地はなくプレッシャーは大きかった。
・ウィーン、ボストン、アムステルダムなど、伝統的な音響の良いホールは皆シューボックススタイル。Disney Hallのようにオーケストラが客席に囲まれるスタイルは、ベルリンホールを起源とする新しいスタイルで音響的に難しい。
・ベルリンホールは音響的には素晴らしいが、外観は今一つ。シドニー・オペラハウスはランドマークとして有名だが、音響は今一つ。Disney Hallは、ランドマークとなる斬新なデザインと音響を両立できた世界でも希有な成功例。
講師 北岡 和義氏(J.A.T.V.社長)
講師紹介と略歴
[講師からのメッセージ]
2003年を回顧するとことしもまた「イラク戦争を強行したブッシュと追従する小泉」という日米の隷従構図が浮かび上がってくる。株価は上昇したとはいうものの先行き不透明な日本経済である。先の総選挙は自民党に対する支持層の低迷にも関わらず公明党と組んで安定多数を確保した。自民党の小選挙区当選者の多くが公明党の票に支えられていた ことは政界の常識となっている。弱小政党の保守新党は自民党に吸収され、社民党は土井党首の引責辞任で存亡の危機に直面している。日本の政治は二大政党制へ傾斜しつつも政権交代にはほど遠い。
イラク戦争とそれがもたらしたものは何か。小泉首相は自衛隊派兵を決めたが、一体その目的、任務は何か。小泉改革はどこまで進むのか。多くの疑問は解けないまま、われわれはまた1年を越えようとしている。
イラク 戦争と止まない自爆テロに、解決不能の拉致問題。世界はさらに不安で危険横溢の様相が濃くなってきている。2003年を振り返り、新たな年への展望を語ってみたい。
[略歴]
1941年12月15日岐阜県生まれ。64年南山大学文学部卒。読売新聞社入社。千葉支局記者、北海道支社編集部記者。70年衆議院議員・横路孝弘第一秘書。74年からフリージャーナリスト。79年渡米。邦字新聞編集部長を経て、85年「ジャパン・ニュース・マガジン」プロデューサー、キャスター。JATV社長。ロサンゼルス日本記者クラブ会長。著書に『べらんめえ委員長』『ドキュメント選挙戦』『13人目の目撃者』ほか。
紹介者 佐藤氏
講義内容
は じ め に
1. 21世紀になって特徴的に言えることは、ひとつひとつの出来事や事件が完結型ではなくなり、後まで引きずっている感じになっていることと言えよう。
2. したがって、「2003年は」と言っても一つの形として総括できない。
3. 2003年を読み解くキーワードは <流> と言えるかと思う。
(去年は <戦> であった)
4. 今年のニュースと言えば「イラクでの戦争」がすべてであり、その他には殆どニュースはなかったという言い方も出来る年であった。
5. 以下は読売新聞から抜粋したものを中心に重大ニュースを拾ってみた。
重大ニュース
(日本国内)
1月:貴之花の引退、朝青龍の横綱昇進。
2月:「ネット心中」相次ぐ。
ハウステンポス経営破綻。
3月:小泉首相、イラク攻撃支持。
「千と千尋・・」にアカデミー賞受賞。
4月:野茂、メジャー100勝。
白装束集団が林道占拠。
5月:ヨルダンで毎日新聞記者の手榴弾が爆発。
6月:有事関連3法成立。
りそな破綻。
7月:中学生が4歳男児を殺害するなど、少年関連事件続発。
辻元清美前衆議院議員を逮捕。
8月:凶悪犯罪が過去最多に。
万景峰号入港で厳戒体制。
9月:百歳以上が2万人突破。
阪神、18年振りのリーグ優勝。
自民党総裁選で小泉首相が再選。
民主党と自由党が合併。
10月:日本産のトキ絶滅。
松井選手、ワールドシリーズで活躍。
日本テレビで視聴率買収工作。
11月:総選挙で与党が絶対安定多数。二大政党化進む。
重大ニュース
(海 外)
1月:北朝鮮、核拡散防止条約から脱退。
2月:スペースシャトルが空中分解。
イラク問題で国連機能不全。
韓国で地下鉄放火事件、198人死亡。
盧武鉉氏、韓国大統領に就任。
3月:中国、国家主席の胡錦涛氏。
米英軍がイラク攻撃。
フセイン政権崩壊。
4月:新型肺炎(SARS)が各国で猛威。
ヒトゲノムの解読完了。
中東和平へ「ロードマップ」提示。
5月:NYタイムズで記事盗用発覚。
東欧諸国が相次ぎEU加盟承認。
6月:仏でエビアン・サミット開催。
7月:脱北者の駈け込み相次ぐ。
8月:ジャカルタのホテルで爆弾テロ。
米国東北部、カナダで大停電。
イラクで爆弾テロなど続く。
北朝鮮の核をめぐり6カ国協議。
9月:イスラエルがアラファト議長の「排除」決定。
10月:カリフォルニア州知事にシュワルツネッガー氏。
中国で初の有人宇宙飛行。
カリフォルニアで大規模山火事。
イラク復興へ支援国会議。
マハティール首相が引退。
11月:歌手のマイケル・ジャクソン逮捕。
トルコなど各国でテロが相次ぐ。
シュワルナゼ大統領辞任。
北岡和義氏が
選んだ重大ニュース
◎ イラク開戦 → 戦闘終結宣言 → 死者続出。
◎ 9・11が生み出した21世紀の戦争とテロ。
◎ 小泉再選、総選挙 → 二大政党への傾斜。
◎ デジタル放送とモーバイル・コミニュケーション。
○ 移民パワー → シュワちゃんが加州知事へ。
○ 阪神リーグ優勝と星野仙一監督の退場。
○ WDCH(ウオルトディズニー・コンサートホール)のオープンとL.A.24時構想。小東京の変貌。
○ 「千と千尋の神隠し」アカデミー賞受賞とアニメ・ビジネス
2003年が<流>
であるという
ことは
* 時代の激流に一人立ちはだかる巨人。
* 一超大国 + 地域諸国 → ニューワールド・オーダーという幻想と孤独。
* 多様性国家の正義は唯一という逆説。
* 「敗北を抱きしめて」生きてきた日本の戦争と平和。
* 民主天皇制国家 と 民衆軍国主義。
講師 篠 崎 靖男 氏
講師紹介と略歴
[講師からのメッセージ]
「日本では、12月にベートーヴェンの第9を演奏するのが定番となっており、俳句の季語にも“第9”が入っております。素晴らしい名曲であるばかりでなく、その内容はその時代を強く反映し、ベートーヴェンの人生と伴って、大変深いものになっています。
実際に指揮者として“第9”にどう向かっていくか、そんな事もお話ししながら、この名曲の素晴らしさを、指揮者として語りたいと思います。」
[略歴]
1968年京都生まれ。桐朋学園大学にて、指揮を山本七雄、飯守泰次郎、声楽を木村俊光各氏に師事。同研究科を修了後、「フィガロの結婚」を指揮し、オペラデビューをした後、1993年にはイタリア2大国際指揮者コンクールである、第3回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールにて最高位を受賞。その後、イタリア・シエナ音楽祭にて、イリヤ・ムーシン、チョン・ミュンフンに師事し、正統的ヨーロッパ音楽に大きな薫陶を受け、1996年より渡欧。ウイーン国立音楽大学にて、レオポルド・ハーガー氏の下、研鑚を積む傍ら、1996年ボストン交響楽団主催、タ
ングルウッド音楽祭指揮セミナーに参加。
小澤征爾、ベルント・ハイティンク氏など著名な指揮者に師事。大きな成果を得た。
1998年には東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団定期演奏会にて日本デビュー。「押し出しのある熱気を持つ棒の持ち主」(音楽現代)と大絶賛を受けた。
2001年にロサンゼルス・フィルハーモニックの副指揮者に就任。これまでに定期演奏会、ハリウッドボウルなど数々のコンサートを指揮し、大好評を博している。
紹介者 矢部氏
講義内容
写真
第9について
1. ベートーヴェンの“第9”は世界中で演奏される曲である。特に日本ではポピュラーで、年末になると演奏されることが多い。
2. なぜ年末かと言うことは明確でないが、この曲にはコーラスがあり、大曲で“音楽の中の音楽”と言われるからかもしれない。
3. また、日本の年末の風土に合っているのかもしれない。
4. 日本ではアマチュアのコーラスが参加することも多い。これも“第9”の魅力のひとつかもしれない。“第9”は俳句の季語にもなっている。
指揮者について
1. 指揮者とは音楽の中で唯一音を出さない音楽家である。
2. この音楽はどう言うメッセージを持っているかを考え、それをオーケストラに伝えて、ひとつの意思にして聴衆に伝えるのが役割である。
3. 指揮者はオーケストラと観客の間にある立場だといえる。
音 楽 と は
1、 良く聴衆の中に、「私は音楽のことは、まったくわからないけれど、でも音楽が好きです」という人がいる。
2、 それでも構わないが、特に、クラシック音楽の場合はちょっと知識があるとますます興味が広がるものである。
“第9”の背景とベートーヴェンの思想
1. ベートーヴェンは1770年ドイツのボンで生まれた。当時は産業革命が始まった頃であり、古いしきたりから新しい科学へ生まれ変わる過渡期の時代だった。
2. 人々が王侯貴族に無条件に従っていた時期から民衆が目覚め始める時期でもあった。
3. 当時、ドイツにゲーテとシラーという二人の偉大な思想家がおり、その中のシラーがフリーメーソンの中で「歓喜に寄す(アン・ディヤ・フロイデ)」という詩を発表した。この詩はたいへん思想的な内容(これまで王侯貴族に抑圧されてきた庶民がこれからはひとつになって行こう、という内容でフランス革命を扇動したとも言われている)で、ベートーヴェンはこの詩に曲をつけてみたいと思っていた。
これが“第9”作曲のもととなった。
4. ベートーヴェンは生活に困窮していた若い頃、恩師から言われた言葉 ―― 「世界中にはもっと飢えや病気で苦しんでいる人たちが沢山いる。君はただ、音符をいじるだけのつまらない音楽家になってはいけない。宮廷の人たちを楽しませるだけでなく、苦しい人たちを癒すものでなければいけない」と教えられている。
5. 当時は、音楽をやるということは王侯貴族か教会の庇護がなければ不可能だった時代に、このような思想をもってウイ―ンに旅立ち、作曲活動を進めた。
6. 彼は、このように、それまでの思想とは異なり、新しい思想(啓蒙思想)の洗礼を強く受けていたことになる。
7. 王侯貴族の出ではないナポレオンのために書いたのが“第3、英雄”である。
8. モーツアルトは(宮廷向けの)美しい曲を作っているが、ベートーヴェンは彼が感じているものを一般大衆にぶつけている音楽を書いている。即ち、精神的要素を音として具体化させた音楽を書いている。_
9. かれの存在が、その後、ワーグナー、マーラー、シューマンなどに大きく影響を与えることになった。
ベートーヴェンの“歓喜”とは
1. ベートーヴェンの“歓喜”とは、ただの喜びではなく、いろいろな苦悩があって、その結果、最後に喜びを得た時が“真実の歓喜”だというのが彼の考えである。
2. しかも、この時代は革命でどんどん一般の人が新しい社会を造ってゆこうという時代であり、苦悩はつきものであり、その苦悩があって最後に辿りつくのが「百万人の人々が自由になり、ひとつになる」歓喜 だということになる。
3. さらに個人的にも、ベートーヴェンの場合は後に難聴になり、苦悩を味わい、それでも彼はそれを乗り越え、音楽の喜びで生きようと決意している。
“フリーメーソン”とベートーヴェン
1、 ベートーヴェンの時代の文化を考える時、“フリーメーソン”を避けて通ることは出来ない。
2. もともとはイギリス中世の石工職人組合から始まったもので、社交クラブ的様相を持ち、宗教・身分・人種を問わないものであった。
3. “友愛”と“道徳”をモットーとした“フリーメーソン”ではすべての人が兄弟である。この考えはベートーヴェンの思想とぴったりと一致した。
4. “第9”の歌詞の中に「世界の人はBruder(兄弟)である」という文句が数多く出てくる。
篠崎氏と“第9”
1. 毎年12月に自分(篠崎氏)は日本のある病院主催の“第9”の指揮をしている。看護師の学校の学生たちが合唱をしている。
2. この病院には精神病患者もおり、その人たちも聞きに来る。
3. (それをビデオで紹介)
“第9”を指揮すること
1. ベートーヴェンは時代を越えて、音楽によって平和へのメッセージを残している。
2. ベートーヴェンを指揮することは特にたいへんである。
3. 「苦悩を付き抜け歓喜にいたる」を演奏し、指揮することはオーケストラメンバーも指揮者も、まさに疲労困憊する。
4. でも、振り終え終了してから、「なんと良い曲なんだろう」といつも思う。
最 後 に
1. 音楽会を聞きに来たからといって、別に人生がすぐに変わるわけでも
ない。
2. しかし音楽会は“夢を見る”場所だと思う。同じ場所で同じ夢を見る
ことの出来る場所であると言えるのではないだろうか。
3. そして聞いた人が何か自分の中が変わって返っていただければと願っ
ている。
4. ベートーヴェンがいて“第9”が生まれたことに感謝したい。
質 疑 応 答
(質問):ベートーヴェンは貴族のサポートなしに活動して、どのように収入を得ていたのですか?
(答え):ベートーヴェンの思想を理解してくれた貴族が援助していたようだ。後は民衆へ演奏会をして収入を得ていたと思われる。
(質問):ベートーヴェンが実際に“第9”を演奏したホールとかオーケストラの数は?
(答え):正確なことはわからないが、初演はドイツのブルック・シアター(現在のではなく)一般の人が集う劇場でやっている。オーケストラも今のフル・オーケストラに近いものだったといわれている。
(質問):最近完成した「ウオルト・ディズニー・コンサートホール」の音響は?
(答え):結論を言うと、最高に素晴らしい音響システムになっている。音がとろけて降ってくる感じ。全部の楽器の音がきちんと聞こえる。音の色がカラフルで、オーケストラが身近に感じる。このような素晴らしいホールが出来たことをロサンゼルスに住んでいる私たちは誇りに思って良いと思う。例えて言うと、我々日本人が、久しぶりに日本へ戻って、最高の日本酒で最高の和食を堪能した時のような気分に
させてくれるような感じだ。音響担当の豊田泰久氏を近いうちにここの講師に招いて聞いて欲しい。
講師 ロマリンダ大学医学部微生物分子遺伝学科、笠淳一博士
講師紹介と略歴
今年は、生命の根幹をなす遺伝子に関して大きなエポックとなった年です。ヒトゲノムの読み取り完成など、最近の遺伝子学は目覚しい進歩を遂げています。クローン動物、クローン植物の誕生は実は遺伝子(DNA)操作の応用によるものです。遺伝子治療から犯罪の決め手となる遺伝子分析まで、遺伝子の応用性には計り知れない可能性を含んでいます。その一方、環境汚染など複雑な問題も秘めています・・・・
そんな問題をロマリンダ大学の遺伝子学者、笠淳一先生と一緒に考えてみませんか。
講師略歴: 千葉大学、東京都立大学大学院を卒業、理学博士。 1979年ロマリンダ大学医学部の基礎医学部門に医学交換教授として渡米、現在ロマリンダ大学遺伝子学科の助教授。1996年スイスのバーゼル大学客員教授。 ロマリンダ大学の大学院では薬学部と医学部の授業と実習に携わっている。 専門は遺伝子(DNA)を切る”制限酵素”の研究。 2000年にアメリカ市民権取得。 1991年よりロマリンダにJapan Clubを組織し、日本からの研修者や近隣の日本人社会への奉仕活動に努める。
講義内容
遺伝子は、人間は人間になる、トラはトラになるという、生物を作るための設計図である。50年まえ、ワトソンとクリックという20代の大学院生が、DNAの構造を発見した。今年になって、人間の遺伝子がすべて解明された。人間の遺伝子は、30億個の塩基配列からなる約3万5000個あることが明らかになった。
全生物に共通している遺伝子は、約20%もあり、人間に特有な遺伝子の率は約1%くらい。遺伝子の違いと身体特徴の違いは、必ず一致したものではない。例えば、日本人とアメリカ人の遺伝子は、けっこう似ており、日本人と韓国人は、遺伝子がけっこう違っている。アフリカは、遺伝子の宝庫で、アフリカ人の遺伝子の多様性は、日本人とアメリカ人の差よりも大きい。
母性遺伝子をたどっていくと、アフリカにたどり着き、人類の祖先は、アフリカにいたと言われている。
1946年に国連のディレクターが、バイオテクノロジーがエンジニアリングより重要になる時代がくることを予言している。遺伝子操作で、初めて商品化が行なわれたのが、バクテリアを使っての糖尿病の薬であるインシュリンの大量生産で、1960年のことだった。30年前には、遺伝子を作ることも可能となった。
クローンは、目新しいことではない。例えば、ニラは、葉を切っても、またはえてくるが、これが、クローンと同じことである。遺伝子組替食品についても、大騒ぎすべきことではない。われわれが、毎日食べている野菜は、自然状態ではなく、何百年も品種改良が行なわれて来た結果である。遺伝子組替も、品種改良のひとつと考えれば、心配すべきことでないと、アメリカの食品局は言っている。
今後50年間で、地球上では、約80億人が飢餓状態に置かれるという予測があり、遺伝子組替で、食料が増産されれば、解決策になる。遺伝子組替は、人類にとって必要なことでもある。しかし、遺伝子組替が、長期にわたった場合の危険性は解明されていない。
ヒツジのクローン「ドーリー」は、イギリスのロザリン研究所で、生まれ、7歳まで生きた。ヒツジはふつう、14歳くらいまで生きるので、寿命が短いようだが、「ドーリー」は「ボニー」という子孫を残している。
人間のクローンはまだ出ていないが、クローン人間が生まれても、パニックになる必要はない。クローン人間とは、一卵性双生児のようなものだ。ただ、一卵性双生児が、同じ時期に生まれることにたいして、クローン人間は、双子の片方が、ずっと後になって生まれてくる、ということだ。一卵性双生児は、1000人にひとり生まれる確立だ。
遺伝子の研究が進むと病気の原因を遺伝子で説明することが可能になってくる。例えば、日本人の自殺が多いのは、セラトニンS型の割合と関係があるようだ。アメリカ人が68%に対して、日本人は98%の割合だ。10年後には、医者は、患者の容体を見るために、まず遺伝子情報を知ろうとするだろう。現在のカルテは、患者のゲノム情報の入ったCDに置き換わっているだろう。
人類は、これまで、食料生産のように環境をコントロールすることにいしょうけんめいであったが、これからは、遺伝子をコントロールすることにいっしょうけんめいな時代に入っていくだろう。人間が死んでしまうと、そのひとが持っているゲノム情報は消えていくが、遺伝子操作では、一度変えた遺伝子が永久に残されていく状態が生まれる。ゲノム操作は、慎重に行なわなければならない。遺伝子組替は、知識を深めて、賢い判断をする必要がある。
(録音テープの聞き取りによる要約=カルチュラル・ニュース、東繁春)
講師 立川朱理亜 弁護士
講師紹介と略歴
立川さんはカリフォルニアで20年以上にわたり様々なケースを手がけ、その豊富な体験と事例に基づいた著書「訴訟亡国アメリカ」(1995年文藝春秋社)、「弁護士が怖い!」(1999年文藝春秋社)があります。これらの著書で、訴訟関係にうとい日系企業は訴訟大国でもある米国では標的にされやすく、最低限の法律知識を持たなければ大きなリスクを抱え込むと警鐘を鳴らしています。
講演では、セクシャルハラスメントや雇用平等法に対する日系企業の陥り易い対応のまずさ、また訴訟にならないような防止手段について、実例を交えて分りやすく解説していただきます。会社の運営に携わる人の多いSBMS会員にとって必須の講座になるものとご案内申し上げます。
立川珠理亜氏略歴
聖心女子高、国際キリスト大学、UCSB大学を経て、1973年東京大学修士号取得、博士課程入学。1975年UCLA修士号、1978年ロヨラ大学法学博士号取得、1981年米国加州司法試験合格。以降、PAUL,HASTINGS,JANOFSKY & WALKERを皮切りに4箇所の法律事務所で国際部長や主任を歴任され、2002年よりTACHIKAWA & ASSOCIATES法律事務所主任。日・英・中国語を話す国際派弁護士
講義内容
1. 弁護士料金は高い!
雇用関係の訴訟になると原告勝訴でも$300,000はかかり、相手も$300,000係り合計$600,000程度にはなる。そうなる前に「和解」して決着したほうが安くつくケースは多いが、何よりも大事なのは普段の訴訟に至らないような防止策である。
2. 雇用法に関する州法の社内掲示が企業の最低基本姿勢
社内の目立つところに州法のポスターを掲示して「この会社は州法を遵守します」という姿勢を示しておくことが大切。訴訟になった場合にも調査対象になる。掲示していないと「もともと法律を遵守するつもりのない会社」という判断材料になり敗訴の一因にもなる。
3. 間違いや誤解される例
1) 残業手当の支給不要な例
Administration、社長秘書、ProfessionalなどはExemptとみなされ残業手当ては不要である。
2) Managerというタイトルでも残業手当が払われる例
Managerというタイトルでも部下がおらず管理職的な業務がなければ残業手当てを支払わなければならない場合がある。対外上タイトルだけManagerにしているときなど要注意である。
3) 出向者の残業
現地人と同じポジションにある場合などは現地法律を適用するのが無難。
4) タイムクカードのクロック
時間集計は15分単位の四捨五入(9:07=9:00、9:08=9:10)
5) 代休
Non-Exemptの代休は本人の都合以外は強制できない(代休を取らせて休日出勤分を支払わないということはできない)。
Exemptの代休は不要(年間給与で補償済み)。マニュアルにも入れないほうが良い。
4. マニュアル(就業規則)の見直しは極めて重要
1) 特に他州に本社(支社)がある場合、現地法律に合致しない場合が多く、抜けや不必要な記載が原因で係争になるケースがある。
2) 日本の本社の社是などを海外子会社のマニュアルやパンフレットに記載すると米国の訴訟範囲が日本の本社に及ぶ危険がある。
3) ハラスメント
カリフォルニアで定めた14項目を遵守。発生したら定めたフォームに調査記入し、後で言いがかりをつけられないようにしておく。毎年防止教育をして署名をとっておくこと。出向者には着任時にオリエンテーションをしてハラスメントに関して理解させる必要がある。
4) 社内のデート規制
通常、仕事で上下関係がなければデートはOK。同性愛者がもれるケースあり。
5) Fair/Unfairについて
雇用者はUnfairであってもよいが差別はいけない。
6) Temp(臨時員)
一年以上の継続採用は危険
7) 産休
出産4ヵ月後までポジションはOpenに。そのポジションがなくなれば雇用責任なし。
8) マニュアル作成の基本的な考え方
マニュアルは社員をHappyにさせるものではなく訴訟を防止するため、と考えなければならない。
5. 訴訟を防止するための一口アドバイスとは?
小さなクレームを放っておかないこと
小さなクレームでも人事のプロであるAdministrationや弁護士と相談して早期に訴訟の芽を摘んでおくことが大切。そうしないと高い弁護資料を払うことになりますぞ!!
記録(井出)
講師 阿木慎太郎 氏
講師紹介と略歴
地元ロスに在住するハードサスペンス小説の巨匠、阿木慎太郎さんです。最近上梓された大作「ラストインテンション(遺志)」の創作過程を辿りながら、豊富な映画・出版業界での経験を踏まえて「創作のヒミツと小説ができるまで」と題して講演していただきます。
阿木先生は昨年出版したテロリストを主人公にした「ヴァイオリニストの息子」が、創作中に発生したその後のテロ事件に酷似したために急遽展開を変えたという、綿密な調査と資料に基づいた作風で知られています。阿木先生の執筆活動は30年に及びますが、その作風は恋愛小説、シリアスホームドラマ、ハードボイルド、ポリティカルフィクションなどどんどん変わってきており、ドラマ化された本も夥しい数に上ります。
[略歴] 慶応大学在学中より劇団を主宰。多くの人気俳優を育てる。
卒業後、東宝に入社。東宝映画の企画担当重役の傍ら執筆活動を本格化。
阿木慎太郎のペンネームで、多岐にわたる小説を発表。NHK・民放などで多数ドラマ化される。
最近ではポリティカルフィクションやハードサスペンスものが多い。
また人気作「闇の警視」5部作も近々100万部突破記念の「新・闇の警視」も発刊予定。
紹介者 諸橋氏
講義内容
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なぜ本が売れなくなったか
・読書以外に金を使う趣味・余暇の過ごし方が増えた
・図書館の存在。無料で自由な貸しだし。ベストセラーでは延べ数十万冊の貸し出し -> 販売機会が失われている。
図書館側は、読書の底辺拡大に貢献と反論。
・新古書店の台頭。読書には安価で嬉しいが、出版業界には金が入らない。
・読者層の変遷。文芸が売れない。ハウツー、健康、経済が売れ筋。
出版業界の現状
・大変景気が悪い。
・2.39兆円産業と大きいが、3.9%減。毎年減少傾向。
・ある統計によると、書店が毎年2千店減少
-> 日本映画界の凋落に大変似ている
新たな動き
IT化。電子ブック。
阿木先生の半生
・終戦直後、学校入学。貧しい時代。貸本屋で本を読みあさる。
・映画女優の姉の影響で、中高時代芝居に熱中。
・大学時代、 劇団を主宰。奥様と知り合う。
-> 芝居では食っていけない。結婚のためには就職が必要。
奥様との馴れ初めをお話し中に音響機器不具合で、大爆音発生*
・卒業後、東宝に入社
・東宝に23年間務め、うち十数年はTVドラマ企画を担当。
*SBMSより:大変失礼いたしました。しかし、何というタイミング!
TVドラマ企画時代
・スタッフ7-8人で 、ドラマのネタとなる原作を探し、企画書をTV局に売り込む。
・原作は各社の奪い合い。原作不足となる。
・オリジナル脚本を執筆し、制作する。
・ 原作の著者にはギャラが支払われるが、オリジナルの制作に当たっては仕事の一部であり通常の給料以外何もない。クレジットすら出ない。ストレス溜まる。
・ 出版社に原稿1000枚持ち込み、出版とTVドラマ化を掛け合う。
-> 実現し、出版とTV化の相乗効果でヒット。
作家ってなんて儲かる商売なんだろう!
作家へのきっかけ
・23年務めた東宝を退社。「毎日が日曜日」状態。奥様の勧めもあり、ロスに移住。
・ロスでコーディネート会社を設立。しかし、 儲からず失敗。折からの急激な円高で手持ち資金が消失!
-> やむを得ず、小説「挙聖処刑行」を執筆。ヒット作となり、作家を本業とするようになる。
創作の秘密
・阿木先生の奥義: ストーリーを作らずに書く。
・感情移入できるキャラクターを設定するのがカギ。後はキャラクターが勝手に動いてくれる。
・執筆場所は、ご存じスターバックス
最新刊「ラスト・インテンション」について
・タイトルは版元が決めた。日本人にはわかりにくい?
・映画界が舞台と言うことで、版元は当初撮影所のトリックを題材にしたストーリーと考えていた。阿木先生としては、日本映画の産業構造の宿命について描きたいと考え、執筆した。
・ラスト・インテンションの秘密
前半: 1980年代のサラリーマン物。文体もサラリーマン風
後半: アメリカの作家が書いたような文体
小説について
小説を読んでも
お金が儲かるわけではない
健康になるわけでもない
時間を浪費する
しかし・・・・
小説は素晴らしい
何通りもの人生を味わえる。ヒーロー、ヒロインになれる
主な質疑
Q: 作家志望です。どうすればデビューできますか?
A: 現在作家使い捨ての傾向が顕著。従って新人には逆にデビューのチャンスは大きい。新人賞懸賞に応募するのが最も近道。出版社に持ち込んでもまず読まれない。私のところにも持ち込まないでください。
Q: 裏の世界を舞台にしたストーリーが多いですが、取材はどうされていますか?
A: 実際にヤクザや警察内部の人と会って話を聞いている。言ってることが正反対だが、そこはフィクションなので脚色して書いてます。
講義全体の感想
SBMSの新記録ではないかと思われる約80名の聴衆を集めた講義となりました。質疑もいつにもまして活発で阿木先生の人気ぶりが伺えました。
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