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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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始めようぜ

thread
始まってもいないのに
終わってしまっている顔をしている

俺たちエレベーターの鏡を覗けば
何処へ上がっているのか、と
不完全燃焼を感じているんだから
詰まらない男だと苦笑いしてしまう

何をするために生まれてきたのさ
要するに全く楽しんでいないじゃないか人生

それで終わってもいいのかい
チャンスやラッキーが向こうから来るだろう
なんて呑気にしているのは時間を忘れているからだ

有限なんだよ俺たちは
笑われることを気にして何も出来ないなんて
意味ないって話なんだよ

希望、夢、愛、平和を
ダサいなんて思っている場合じゃない
クズグズしているとすぐに終わってしまうぜ

なあ、もうわかっているんだろう俺たち
何をするための生きているか、をだよ

#詩

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#麻酔詩

thread
白い液体が血管に流れる
身体にピリピリとした微弱の電気を
感じたあとに意識はなくなる

覚醒すれば開創された痛み
何事もなかったような術中の代償

しかし鎮痛剤を自己投与も出来る時代
ポンプのボタンを適宜自分で押せば和らぐ痛み
麻酔の進歩を有り難く思う

#詩

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跳ね返りの微睡み

thread
休日の朝方には
固まる精神、固まる身体

何を弱気なっているのか
平日の踏ん張りが緩み
自信も思いやりも昨日の夜に
消された重力を感じている

この怖さはいったい何だろう
失うのは自己満足くらいなのに
無気力になっていく変化に
驚き浮き上がれない萎んだ風船

これで終わってしまってもいい
そう思えるのは疲れなのか
諦めなのか、十分なのだろうか

薄明るいガラスの色は時計
出来ることなら時間が止まれば
不安を解消しないで済む
永遠のモラトリアムになり
包まっていられればそれでいい

今がずっと今であるように
次なる刺激は消えてなくなり
再び目を閉じてみれば
そこは濃厚な自分らしさの卑屈

#詩

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#安全詩

thread
四面楚歌の中にもう僕はいない
世間が覗いているのはダミーなのさ
その様子を監視カメラで見ている

訳わからず世間に攻撃される
僕には僕の欠陥が治せない
だから生きるために違う自分を立てた

だけどこの監視室もそろそろヤバい

……どうしたことだ
ダミーが玄関から出てきやがった

#詩

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#朝詩

thread
朝は静かだから聞こえる

自分の息
ゴミを出すビニール袋の音
自転車のタイヤが擦れている音
枯葉が地面に落ちる音

クリヤーだから
風の声さえ聞こえてきそうな……

カラスの大きな鳴き声は遠くまで
そんな朝に行ってきます

#詩

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#萌え詩

thread
いつの日からだろう
私の頭の中で「萌え」という
言葉の意味がすり替えられていた

秋に葉の色が赤や黄になり
燃えているような、光っているような景色を
その言葉の意味にしてしまった

今日、辞書で調べて急に恥ずかしくなる

「萌え」の意味がすり替えらてしまい
「秋葉原」になっていた

#詩

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#トラック詩

thread
荷台に乗った
ゴツゴツと響く想い出

摘み取られた野菜や果物と一緒に
風を切り空を見た夏の田舎

叔母さんの返事はいつも
「うんだにゃ〜」
猫語を話すんだと思っていた
幼かった自分

とても楽しかった田舎には
もう誰もいない寂しさ

ゴツゴツと想い出す空は
ここと違っていた

#詩

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#骨と関節詩

thread
骨にはピアスだらけ
これは俺のファッションではなく
受難であるパッションだ

しかし
こいつのお陰でなんとか生活ができる
「このやろう」という激情にもなるパッションだ

俺は精神とピアスで骨を支えている

#詩

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過程

thread
僕は何をもって弱いのか
なんて考えてしまう人間だったので
いつだって自分の気持ちも
君の気持ちもわかっていなかった

僕は何をもって強いか
なんて考えてしまう人間だったので
いつだって自分の気持ちも
君の気持ちもわかっていなかった

そんな僕が初めて知ったんだ

ごめんなさいもさよならも言えないまま
君のカタチは無くなり初めて抉り出された涙

弱さを知ってしまった僕は
強く生きて行くことなど考えられなかった
それでも心からありがとうを伝えたいと思っている

#詩

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街の海

thread
ベランダの椅子に座り込むと
猫のハナとユメが黒目を大きくして
手すりに上がり通りを見ている

タイヤの擦る音は
波のように打ち寄せては返す街の海
風は風鈴をやさしく鳴らし
コーヒーの程よい苦味に
いつかのどこかの憧れを夢みている

大波のトラックが過ぎてゆく
小波の乗用車は追いかける
私は揺れない船の上で漕ぐこともなく
周りを動かし繋がってきた時間の不思議に
すこし戸惑いながら残りのコーヒーを口にする

そして枯葉が迷い込んだ床に横になると
説明しようもない涙が流れ出しては
その心地よさに救われていた

ユメとハナはもう部屋へ戻っている

私はもう少し街の海に浮かんでいたい

#詩

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