ヤブツルアズキ(薮蔓小豆) マメ科(Fabaceae)
学名:Vigna angularis (Willd.) Ohwi et Ohashi var. nipponensis (Ohwi) Ohwi et Ohashi.
Phaseolus nipponensis Ohwi(basionym)
ヤブツルアズキは、草地に生える蔓植物。蔓が長く草等に巻きつく様は、強生命力を感づる。
茎や葉に黄褐色の毛がある。葉は3小葉からなり、小葉は、狭卵形~卵形で浅く3裂する。
花は黄色で2個が合着して筒状の竜骨弁はクルリとねじれ、左側の翼弁がかぶさっている。
右側の翼弁は竜骨弁を抱くようにつきでる。
蝶形花冠はマメ科特有の花冠で左右相称が普通。
上位の旗弁1個、中位の翼弁2個、下位の竜骨弁(舟弁) 2個からなる。
竜骨弁は合着して雄蕊雌蕊を包むのが普通だが、
ヤブツルアズキは非相称で花が左に偏って渦を巻いているのがユニークで面白い。
(竜骨弁とは、蝶形花(ちょうけいか)で、翼弁の下位につく左右一対の花弁。舟弁。)
*アズキ Vigna angularis はヤブツルアズキを品種改良したものといわれている。*
ヤブツルアズキ、花構造は不思議なほどに面白い!!
マメ科で見られる、上側にある大きくてよく目立つ1枚の花弁は「旗弁」といい、
昆虫に花の存在を知らせる旗印の役割をしている。
旗弁の根元には昆虫に蜜のありかを教える模様(ガイドマークまたは蜜標)がついている。
花の下側には重なり合った4枚の花弁があり、一番内側の2枚を「舟弁または竜骨弁」といい、
雄ずいと雌ずいを左右から包み込んで保護している。
舟弁の左右には翼のように張り出している「翼弁」が2枚あり、昆虫の足場となるようだ。
このようなマメ科に見られる花を「蝶形花冠」と呼んでいる。
雄ずいと雌ずいが舟弁に包み込まれているために、
昆虫が花に来てもうまく受粉されるのだろうかと思ってしまうが、うまくできている。
花を訪れた昆虫等は、旗弁のガイドマークを目印にして旗弁の根元に頭をもぐり込ませる。
そのときに脚に力が入って翼弁と舟弁を押し下げる。
そうすると舟弁の中にある雌ずいと雄ずいの先端が花弁の外側に出てきて、
昆虫に触れる仕組みになっている。昆虫が飛び去ると翼弁と舟弁は元の位置に戻る。
また、雌蕊と雄蕊にも、この仕組みに対応した工夫がみられる。
マメ科の多くは1本の雌ずいが、花糸同士くっついた雄ずいに囲まれているために、
まとまって一緒に花弁の外に出す。マメ科の多くは10本の雄ずいがある。
また、蜜は雌ずいの付け根にあり、10本の雄ずいがすべてくっつくと、
昆虫は蜜が吸えない。だが10本の雄ずいのうち1本だけが離れている(両体雄ずい)。
この離れた1本の隙間で昆虫は口を差し込みやすくなり蜜が吸える仕組みになっている。
「令和参年(皇紀2681年)8月13日、記」