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現代詩の小箱 北野丘ワールド

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反魂

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親指と人指し指のくらがりで
ごろすけほうと ふくろうが鳴けば
浜のはずれの家から
精悍な男の影が岬へと歩いていく
三年目の秋 滸呂裳(コロモ)は死んだ

おれは 何をするのだか考えちゃいなかった
流れ着いて 奇跡というのか

たいした奇跡だった
あいつは目が悪かった
それで 何でもおれの思いが動けば
ぼんやりとしたものでも察して
思いどおりに動いた

小さな間取り 物の場所は寸分の狂いなく決まって
おれは その位置をずらさないことだけを 守らされた
それで あいつを どう乱そうと
あいつは喜んだのだ

おれは この秋 何をするんだか
考えちゃいなかった

朝 村の老婆たちが
こんなにいたのかと思うほど湧いてきて
白絹のコモに女を収め 蟻のように運んでいった
何がどうとも 互いにいわなかった
ただ 和紙一丁と筆を おれに残していった
これに扶桑の歴史を書き
女をよみがえらせろといった
おれは女を愛しかけていた気がする
だが 生まれてこのかた
死人の肌みたような真っ白い和紙に
これほど憎しみが湧いたことはなかった
#字扶桑

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