30年近くも前。昭和のころ。深夜の東大阪市長瀬。 Soubitezの黄色いハロゲンライトで闇を切り裂きながら、国産スポーツ自転車に2人乗りした俺達は、住宅街の裏道を「吉野家」目指して疾走する。 安物のスポーツ車ではあるが、前傾姿勢の強いハンドルポストにフラットバーのハンドルを装着し、自転車野郎を気取っている。 また、2人乗り用に頑丈なキャリアとステップを装備し、重量級のパッセンジャーを受け止めるブレーキの強化も怠りない。 運転中にわずかな疑問も感じたくはない。だから今夜も、全てのワイヤー、スポーク、空気圧などの整備状態は万全だ。 次の路地は左折だ。 進入速度、角度よし! 減速と同時にシフトダウン! パッセンジャーのN君も体をイン側に入れながら、車体をバンクさせてコンパクトにコーナリング。 加速!そして、シフトアップ。 今日もリズミカルにコーナーをクリアする。 しかし、今日は様子が違う。 照らし出されたライトの先には、警邏中の警察官が2人、赤色の誘導棒を振っている。 その横には、スーパーカブがエンジンをかけたまま置かれている。 一瞬、ブレーキレバーを握りかけたが、そのタイミングを逸した俺が声を発した。 「今日の作戦は?」 「ぶっちぎりだ!」即座にNが応えた。 シフトダウン!加速! 警察官をパイロンをぬうようにかわす。 警察官達は、2人乗り自転車の以外にも機敏な動きに動揺するも、すぐにバイクに飛び乗り追走してくる。 自転車の加速も最高速も、バイクにかなうはずがない。 唯一かなうことは、慣性重量が軽いこと。 軽量な自転車は、コーナリング手前ぎりぎりまでブレーキを我慢しても減速が間に合うが、重量がかさむバイクはその遥か手前から減速しなくてはコーナーに侵入できない。 そのため、コーナーの連続するコースを選べば、平均速度で自転車が勝る可能性がある。 狭い路地を、5つ6つと角を曲がる。 そのたびに、警察官のバイクとの距離が離れていく。 そして、ついに彼らを諦めさせた。 これで、3勝1敗。 1敗の内容は、口が裂けても語ることはない。 ところで、今回の道交法改正には、子供2人を乗せた自転車3人乗りの明確な禁止は盛り込まれなかった。 「子供が2人いるのよ!どうするのさ?」 との声が多かったためだ。 俺達も言おう!「どうしても、牛丼食いたかったのだよ!」 ちなみに、道路交通法では、自転車の2人乗りは【罰則】2万円以下の罰金又は科料。 良い子は真似をしてはいけない。 これはフィクションです。
Posted at 2008-06-05 05:56
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Posted at 2008-06-06 09:43
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