脳ミソと1850mmの関係
May
16
これは健康上の問題なので致し方ない。
ドライバーズシートに身を沈め、前方がクリアかつ、周囲のあらゆる安全が確保されるとき、僕は反射的にアクセルペダルを踏みつける。
僕の脳の感覚と、ステアリングを握るマシンの加速が同一であるならば、何も問題は起こらない。
仮に僕の脳の感覚よりもマシンの加速が速いならば、僕の脳はヘッドレストに押し付けられながら加速するので、この場合も問題にはならない。
しかし、僕の脳の感覚よりマシンの加速が遅い場合は大変だ。
僕の脳は僕の頭を飛出し、フロントガラスより前を走行してしまう。
この感覚が激しい頭痛を引き起こし、ストレスの元となっていく。
前回の足車E63型 BMW M6は非常によくできたマシンで、僕の感覚に素晴らしくマッチしていた。
この車体の全幅は1855mm。
実は会社で使用している機械式の駐車場は、全幅1850mmまでを許容する。
この駐車場の規格は、おそらくミラーを含めた全幅2050mmのサイズのものだ。
通常のカタログサイズならば、さらに大型の車両が入庫できるのだが、BMWのスポーツグレードなど、タイヤの外幅とボディ全幅がほぼ同一の車では、カタログ数値の全幅1850mmが事実上の入庫可能サイズとなる。
さて、全幅1855mmのM6を1850mm規格の駐車場に、何とか入れ続けてきた僕であるが、次回登場するであろうF12型のM6は全幅1895mmを超えることが分かっている。
そこで、「僕のM6が旧型になる前に」というわけのわからない理由で乗換えたのが、F11型 BMW535iだ。
F11型の全幅は1860mmで、E63型 M6と比較するとわずか5mmの増加であるが、この5mmの増加は入庫時に神のテクニックを要求してきた。
しかも、5mm差と言うものは駐車場のプレートが停止する位置の誤差を越えてしまうため、事実上は既にコントロール不能の範囲に突入しているため、少々面倒くさくなってきた。
さらに、健康上の問題も勃発した。
Mの冠のない鈍重な一般車両の加速に耐えかねた僕の脳ミソは、頭蓋骨を抜け出し、車体のはるか前方へと加速していく。
そのため、僕はアクセルを踏むたびに激しい頭痛と吐き気に悩まされ続ける。
僕が健康状態を取り戻すためには、適正な加速が必要である事は、医学的に明快だ。
つまり、僕の治療のためには、僕の脳の感覚と同等かそれ以上の加速が可能で、全幅1850mm以内のマシンンが必要というわけだ。
新型M6 ×
ランボルギーニ・ガヤルド ×
フェラーリ458イタリア ×
アウディR8 ×
ポルシェカレラGTS 〇
なんと意外な事よ。
ポルシェのボディはターボSでも1850mm!
このメーカーは、走るという事の本質を理解している。
しかし、僕のマシン選びには「憲法」のような、厳しいルールがある。
既に何度も記述している「吊るしの車は乗ってはいけない」が記載されている憲法の第一条。
それは、「ポルシェ以外で・・・」という言葉から始まっている。
「ポルシェは速いに決まっているから、面白くない」と言うのがその理由だ。
それでも、今回は国民の命と健康を守るための苦渋の決断が求められる。
どうやら、憲法改正が必要な時期がやってきたようだ。
さあ、仕事だ!