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「奥穂高岳」頂上でのすばらしい時間を過ごした後、
いよいよ去る時が来た。
帰りの行程は長く普通に下って6時間かかる。
そこに長くとどまることは出来ない。あまりにすばらしいこの景色を、
そのままにすることが惜しい気がしてならなかった。
またいつか、この頂を再度訪れても、
この景色がそのままで待っているとは限らない・・・。
いや、可能性はほとんどゼロだろう。晴れ渡っていても雲界なく、
ガスが上がってはご来光なく、
「槍ヶ岳」も見えない。山の天気はそれほど気まぐれで、
予測をつけることも出来ない。出来るだけ記憶にとどめるべく、
シャッターを押し続けた。
デジカメが熱くなったほどだ・・・。
実際はここにアップした何倍もの写真がある。
可能な限りこと細かく記録しておきたかった。意を決してザックを背負うと、
下りの道に突入して行った。下り始めるとすぐ穂高の奇岩、
「ジャンダルム」が目に飛び込んできた。
この岩はなんとなく穂高で逝った登山者たちの、
墓標に見えてならない。
穂高登山でもっとも険しいといわれている、
「西穂高岳」に向かう道すがらにあるせいかもしれない・・・。とにかく特異な姿に違いはない・・・。しかし、言い尽くすことが出来ないほどたくさんの写真がある。
でも、もう少しでこの登山日記も終わりです・・・。
長いといえば長いですな・・・(_ _))
ついに奥穂高岳頂上に到着。弾む息を抑えてザックをおろし、
回り見渡すとはっと息を呑む風景が待っていた・・・。まったくそれは大袈裟ではなく、
自分が天上界に立っていることを自覚した。目の前には朝日にきらきら輝いて、
見渡す限りの雲海が広がっている。
見たこともないような美しさだ!!
これまでの登山で一回も見たことがないような美しさだ・・・。
きらきら輝く大海原のようだ。砂浜に立って海を見ると水平線が盛り上がって見える。
その感覚と同じで雲海が盛り上がって見える。雲海の果てには富士山が見えており、
影絵のように美しい!!
ここはもう日本海のほうが近い。
そこからなを、
はるか富士山を望むことが出来る。
これだけはっきり見えるのは、
間違いなく、信じられないほど空気が澄んでいる証拠だ。しかし、今までこれだけ美しい風景を見たことがない・・・。
頂上を逍遥していると、
目の前に「槍ヶ岳」が現われた。まったく曇りのないすばらしい眺め!!
これだけはっきり見ることが出来るとは・・・。今回「奥穂高岳」に登ったことの意義のすべてが目の前にあるという感じ・・・。豪放にして優美・・・。
繊細にして磊落・・・。
切っ先も鋭く天にそびえている。
なんともいえない感動だ!!これまでの登山が一瞬にして頭をよぎる・・・。
鮮烈な姿を見せていた。
少し惜しいが「滝雲」これがもっと下に落ちれば本格的なんですが・・・。
穂高岳山荘の夜は、
人の多さと物音のうるさいのと、
少々暑さで眠れなかった・・・。
とはいっても、
いびきが響き渡るまでには寝入ってしまった。午前3:30起床。
子や全体が目覚めた感じで、
あっちこっちで出発の準備が始まっていた。
奥穂高岳の頂上でのご来光を目指しているのだ。
思いは一緒で着替えとザックのパッキングを急いだ。ヘッドランプを頭に乗せて外へ出ると、
東の空が若干赤く染まってきている。
ご来光もそこまで来ているようだ。
昨日見た奥穂高岳の取り付きの岸壁に向かった。
寝起きの状態からいきなりの垂直の登り・・・。
これはなかなかきつい・・・(>_<)。
とにかくご来光を頂上で迎えたいと気持ちは焦るが、
早々飛ばして登れるわけでもない。垂直の壁を突破して、
岩の急角度の登りをひたすら登り続ける。
次第に空は白み始め、
雲海が目に入ってくる。
東の空はますます赤く染まってきた。結局、頂上でのご来光は間に合わず・・・。
しかし、ちょうど視界が開けたところで太陽が昇ってきた。
山の朝での最も感動的な一瞬だ!!
ご来光というのも、
実はそうそう簡単にめぐり合うわけではなく、
雲が頂上まで上がっていれば見ることは出来ない。
山小屋が頂上から離れているとこれもなかなか難しい・・・。
しかし、なんと言ってもお天気にものすごく左右される。
この日も天気予報は必ずしも良くはなかった。
まあ、運としか言いようのない一瞬だった。しかし、太陽というのは登る速度は驚くほど速い。
あっ!という間に雲の上まで上がってしまう。
この登ってくる速さを見ていると、
人間もこの速度で老いているってことだと思う・・・。
なんとなく恐ろしくなる一瞬でもある・・・。ご来光を見た後は、ひたすら頂上を目指す。
さすがに日本第三位の高峰の登りはきつい!!
ようやく頂上の人影が視界に入ってきた。回りには一面の雲海が広がっていた。
涸沢岳を空身で往復して、
まだ夕食までは時間がある。小屋の中にザックを運び込んで、
フリースペースの椅子に座り込む。
このスペースは真ん中にストーブが置かれていて、
回りの壁に椅子が並べられている。
なかなかすわり心地が良い。小屋に備え付けの写真集、小説、エッセイ集などなど・・・。
山の関する読み物が自由に手に取ることが出来る。
コーヒーを片手にボケッとしていることも出来る。
今日の登りを振り返りつつ、
ゆったりと時間が流れる。
最高に贅沢な至福の時間だ。置くには談話室も有り、
山の話でなかなかにぎやかな会話が聞こえてくる。
この山荘はさすがに北アルプスの盟主、
奥穂高の頂上直下にあり、
奥穂高岳を目指す登山者が、
いろいろなルートから一気に集まってくる。
小屋の規模もかなりのものだ。激しい呼吸で登っている時間の刻みとはまったく対照的な、
少々間延びしたような、
この時間の流れは、
普段の生活ではまったく感じることが出来ない感覚だ。6時少し前に食事の時間となる。
おっくうに体を動かして食堂に行く。
おかずは山小屋とは思えないくらい品数があり、
味付けもおいしい!!
ご飯のお代わりも自由で、
もちろんお代わりをする。
この食事で何を一番感じたか・・・、
一番感じたのは、味噌汁が異常においしく感じられた。
普段の生活では感じたことがないおいしさだ。
今日の登りで大汗をかき、
塩分も相当出てしまったのが原因だと思う・・・。
なんだか味覚が変わってしまったような感覚だった。
三杯もお代わりしてしまった・・・。食事が済むともう少し明るい外を歩いたり、
夕暮れを写真に撮ったりして、
今日の寝床に横になる。
穂高岳山荘といえども、
寝床はいきなり山小屋そのもので、かいこ棚。
この二階となると相当天井が近い。
かなり混雑しているために、
布団も隙間なく敷き詰められている。
ここでとにかく睡眠をとらなければならない。山小屋で寝るということは、
即いびきとの戦いになる。
これはもう壮絶で、
いびきの大合唱が始まる前に眠れるかどうかが、
その夜の睡眠を、
どのくらい快適に取れるかどうかの勝敗を分けることになる。
いびきの大合唱が始まってからでは快適な睡眠は難しい・・・。
翌日は寝不足のまま山登りだ・・・。
これはかなりつらい行動となる。最後の写真の「奥穂高岳」の垂直の岸壁を登るには、
ちょいとつらいかも・・・((+_+))。
しかもご来光を目指して暗いうちに出発となればなおさらだ!!
とにかくいち早く眠り込むのみだ・・・。
太陽が沈みきって空に闇が迫るころ、
岩山の上に月が出ていた・・・。風はいよいよ冷たく、
空気は乾ききっている。
まだまだ細い三日月は、
少し瞬いているようにも見える。この後に続く星空もすばらしい!!
山の夜は昼間とは違う、
また違った感動的な風景を準備していた。今回は、25年の登山歴の中でも屈指の好条件にめぐり合った。
日ごろの行いの成果だと勝手に思いたい・・・。
ドイツ語で朝焼けが「モルゲンロート」
そして夕焼けは「アーベントロート」今まさに落ちようとしている太陽が、
今日の別れを惜しむかのように、
山の頂を照らしている・・・。3000メートルを超えてこそ眺めることの出来る風景・・・。
荘厳な静けさに包まれる瞬間だ。
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