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くまごろうのひとりごと

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窓の話3『窓枠とサッシュの材質』

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日本では窓の開口部を支えるフレームだけでなく、ガラスをはめる枠(サッシュ)をまとめて窓枠と言うことが多いが、ここではより正確にフレームを窓枠、フレームの中に取付けられるガラスをはめる枠をサッシュと定義する。

1940年代までは住宅の窓は現場で大工さんが作るのが一般的で、窓枠やサッシュはほとんど例外なく木製だった。窓は雨や風にさらされるため、アメリカでは窓枠やサッシュの樹種としては腐蝕しにくいレッドシダー(米杉)、ダグラスファー(米松)、レッドウッド、マホガニーなどを使うこともあったが、これらの中には加工性がよくないものや高価な樹種もあり、多くの住宅では耐候性は高くないが加工性の良いパイン系樹種の木材を使って屋外側にハウスペイントによる保護膜を形成させて耐久性を高めてきた。

アメリカでは1940年代から住宅用窓を工場で生産するようになり、その場合も木材で窓を作るのが主流だった。工場で窓を生産する際には、縦かまちや横かまち、ガラスストップや格子などの細かい木製パーツを量産する上で加工性が良く、更に長期間に渡り寸法安定性の高い樹種が求められ、キルンで乾燥されたウェスタンパインが最も広く使われるようになった。これらの木製パーツは更に撥水性や腐食防止、防虫などに効果のある薬剤を含浸させて耐久性を高めて使用され現在に至っている。

通常の木製窓では屋外側ペイントは10-15年に一度再塗装する必要があるが、木製窓の屋外側に焼付け塗装したアルミニウムをはり付けたアルミクラッド窓はこれら屋外側再塗装を軽減することが出来るため、現在では多くの木製窓メーカーがアルミクラッド窓を生産している。 

第二次世界大戦が終わるとアルミニウムが民生用として急速に普及して、1960年頃になると主に商業建築の窓用アルミサッシュが生産され、それまでのスチールサッシュに代り高層ビルに広く採用されるとともに徐々に住宅用サッシュとしても普及するようになって、1980年頃にはアメリカの新築住宅用窓の約半分はアルミ製の窓枠やサッシュとなった。しかしアルミは熱をよく伝える性質があるため、たとえ断熱性の高いペアガラス(2重ガラス)をはめた窓でも窓枠やガラス周辺のサッシュが屋外の寒さをよく伝え断熱性を著しく損なうとともに、アルミ製パーツが結露を発生すること、更に1990年代からの断熱性の優れた低価格な塩化ビニル製窓枠材が普及することにより、アメリカでは1990年代後半以降、アルミサッシュは断熱性能が必ずしも重要ではない温暖な地域向け住宅や高層ビル、商業建築にのみ使用されるようになった。アルミサッシュでも屋外に晒される部分と室内側パーツとの間に合成ゴムなどを挟んで熱を遮断するThermal Breakと呼ばれる窓枠やサッシュもあるが、それでも断熱性能はより廉価な塩化ビニル製窓枠には及ばないため、住宅用としてはあまり使用されない。

引抜き塩化ビニルを使用した樹脂サッシュは第二次世界大戦後、木材やアルミに代わる窓としてドイツで生れたが、初めはデザインが重厚であまり普及しなかった。1970年代から断熱性の高い窓の需要が高まり、またデザインも改善されて1980年代以降は樹脂サッシュが高断熱で廉価な住宅用窓としてアメリカで急速に普及しはじめ、1998年には遂にその生産量が木製窓を超えるに至った。樹脂サッシュは断熱性と価格競争力により、今後も住宅用窓として一層普及することと思われるが、塩ビ樹脂の塗装には特殊なコーティング技術が必要なため、多くのメーカーの窓枠やサッシュは原料ポリマーによるホワイトやベージュなどのカラーに限定されている。なお樹脂サッシュの寿命についてはまだ十分解明されておらず、アメリカの有力な住宅建築雑誌によれば、これらの窓の寿命は20-30年と言われている。

2000年以降は再生木材繊維とビニル樹脂による複合材や、ファイバーグラスを使用した窓枠やサッシュによる窓も生産されている。ファイバーグラスは小型船や車両、浴槽など広範に使用されており、その強度や耐久性については実証済みと言え、下地塗りの上から塗装することが出来、構造強度も十分なため、今後樹脂サッシュと並んで広く普及すると思われる。ただ屋外側塗装は10-15年ごとに再塗装する必要があることは木製窓と変らない。

インテリアとして窓を考えると、塩化ビニル樹脂やファイバーグラスの窓は機能的には優れた点があるものの、木製フローリングや木製ドアを用いた住宅には木製の窓が似合う。アメリカの高級住宅では室内のフローリング、ドア、壁パネル、窓・ドアまわりの額縁、幅木などにダグラスファー(米松)、オーク(樫)、メープル(かえで)、アルダー(はんの木)、チェリー(桜)、マホガニーなどの樹種を使うことが少なくないが、その場合、窓枠やサッシュも同じ樹種に統一する必要があり、アメリカの高級木製窓メーカーはそのような需要に応えるために色々な樹種の木製窓を製作している。
#PC #テクノロジー #ネット

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KUMA
Commented by KUMA
Posted at 2010-07-15 17:38

詳細なレポートをありがとうございます。

前にも書きましたが、二重ガラスにしてもサッシ部の結露は解決しないので諦めて正解でした。
今度はサイズを統一するなどと言い出しておりますが、所詮はアルミで作るようです・・・・

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くまごろう
Commented by くまごろう
Posted at 2010-07-16 04:55

日本でもアルミサッシュではなく、木製窓や樹脂サッシュの二重ガラスにすれば、真冬に鍋物をやっても結露を全く心配しなくて済むのですが。


アルミサッシュでの規格統一って日本の窓業界の向っている方向は世界の趨勢とは違っている?

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エメラルド
Commented by エメラルド
Posted at 2010-07-20 01:42

今回もとても勉強になりました。


アルミサッシュの結露、それほどの寒冷地ではなくても冬がある日本では、問題です。
シアトルでなぜ結露がないのか、やっとわかりました。
材質の問題だったのですね。
日本も早くそのことに気付いて改良をして欲しいです。

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くまごろう
Commented by くまごろう
Posted at 2010-07-20 22:29

結露の詳細については既に原稿は出来ていますが、いずれ窓の話の中で解説する予定です。


私は日本ではアルミサッシメーカーの力が強くて、結露しない窓枠やサッシュが普及しにくいと思っています。

例えば準防火地域では防火窓と呼ばれる、20分間800度の熱に耐えられる窓でないと、広い敷地でなければ合法的に取付けることが出来ません。準防火地域はほぼすべての都市が対象であり、このことがアルミサッシがいまだに広く普及している理由のひとつと思います。

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