窓の話6『ローイーガラス』
Oct
14
現在ローイーペアガラスに広く使用されている低輻射ガラスは銀、金属酸化物などのきわめて薄い膜を真空蒸着させて生産するが、このコーティングは機械的強度が低く、そのため外部からの接触がないペアガラスのエアスペースに施すことにより保護されている。
アメリカの窓業界ではペアガラスの表面を屋外側から順に屋外側ガラスの外側を第1面、その内側(エアスペース側)を第2面、室内側ガラスの屋外側(エアスペース側)を第3面、その内側、すなわち室内から触れることが出来る面を第4面と呼ぶ。
ペアガラスに銀、金属酸化物などのコーティングを施した低輻射ガラスは、本来は夏の太陽からの輻射熱を防ぐことを目的に開発されたものであるが、冬期の室内からの輻射伝熱による放熱を防ぐにも大きな効果がある。屋外側-18℃、室内側20℃の条件では、単なるペアガラスの窓では伝導伝熱による放熱を削減することは出来るが、輻射伝熱による放熱を削減することが出来ない。ローイーガラスのペアガラスでは輻射伝熱による損失が大幅に低減するため、総熱損失が単なるペアガラスの約半分、すなわち単なる1枚ガラスの25%程度となる。このような熱損失低減効果はローイーコーティングが第2面であるか、第3面であるかによらない。窓の話その4『ガラス』で述べたように、4重ガラスの窓のガラスを通しての熱損失量は単なる1枚ガラスの25%程度であるが、ローイーガラスのペアガラスはそれと同等の断熱性能がある。
夏の太陽からの輻射熱を防ぐ点については、ローイーコーティングが第2面に施されている場合は輻射熱を屋外にはねかえすため大きな遮熱効果があるが、第3面に施されている場合には内側ガラスにおける室内側への再輻射現象のため、第2面である場合よりも遮熱効果が大幅に劣る。そのため一般的な地域では第2面にローイーコーティングを施したガラスパネルが一般的であるが、北欧などの極寒冷地で夏の太陽の遮熱は重要でなく、むしろ冬の太陽からの輻射熱を積極的に室内に取り入れたい場合には第3面にコーティングを施したガラスパネルが使用される。
一口にローイーペアガラスといってもその性能は同じではない。窓のガラスにとって重要な性能は、透視性、断熱性、遮熱性、紫外線防止性などである。ローイーコーティングを行うと、コーティングを行っていないガラスに較べ透視性が低下するが、他の性能は格段に良くなる。透視性をあまり犠牲にせずに他の性能を高めることがローイーガラス技術の見せ所となる。アメリカCardinal社のLoE3-366と呼ばれるローイーガラスは最先端の真空蒸着による3層の銀・金属酸化物コーティング技術を採用しており、透視性をあまり犠牲にせずに高い断熱性、遮熱性、紫外線防止性を誇っている。透視性は1枚のガラスでは90%、単なるペアガラスでは80%、通常のローイーペアガラスでは70%であるのに対し、LoE3-366は66%を確保している。
因みに色付きガラス(Tinted Glass)も夏の太陽からの輻射熱をある程度防ぐことが出来るが、サングラスをかけているのと同じで窓の透視性が45%程度まで低下する。
また昔ながらの方法として屋外にすだれを垂したり、にがうりなどを植えて夏の太陽からの輻射熱が室内に侵入することを防ぐこともそれなりに効果があるが、高遮熱のローイーペアガラスの窓ならそのような手間をかけずに、また屋外の景観を楽しみながら夏の暑さをしのぐことが出来る。
肝心のローイーペアガラスの遮熱性能については後述するが、第2面に蒸着膜を形成したローイーガラスでは約62%であり、更に高性能なローイーガラスでは70%程度削減出来るものもある。
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Posted at 2010-10-15 01:01
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Posted at 2010-10-15 23:18
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