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まるでラジオの周波数が、
外界の雨と湿気のこもった部屋の空気とで
おかしくなってしまったかのように、
パーソナリティーの声は割れ、
不規則なノイズに邪魔されて、
BGMも途切れ途切れにしか聞こえない。
亜理紗はテーブルに無造作に置いたレジ袋から、
ガサガサとコンビニ弁当を取り出して、
電子レンジのスイッチを押した。
オレンジのライトが灯り、
ウィーンと音を立てたのを確認してから、
冷蔵庫からキンキンに冷えた缶ビールを取り出す。
外では雨が一層激しさを増し、
屋根を強く叩きつけている。
亜理紗はラジオを消してテレビのリモコンを手に取った。
流れてきたニュースに思わず、
チャンネルを変える手が止まる。
幼稚園の頃、無邪気に結婚を誓い合い、
やがて疎遠になった幼馴染。
彼が、特殊詐欺の容疑で逮捕されていた――。
出窓から彼の姿を確認し、
わたしは階段を駆け下りる。
キッチンからはスクランブルエッグの
美味しそうな香りが漂っていて、
わたしは思わず足を止める。
ピンポン、というチャイムの音に、
わたしは我に返り、家主も慌てて玄関に向かう。
彼女が「セールスお断り」のステッカーが貼られたドアを開けた瞬間、
わたしはすかさずドアから飛び出して、
彼の脚にすり寄った。
「おはよう、ミケ」
しゃがんでわたしの頭を撫でる彼に、
わたしは飛び切り甘えた声を出す。
「にゃぁん♪」
彼女になんか渡さないんだ。
彼はわたしのものなんだから。
時間も字数も守れていないので、タグ付けはしませんが、
Twitterで流れてきた300字小説のお題で詩を書いてみました。
かなり抽象的な表現にはしていますが、
不衛生な描写や暗い表現が含まれますので、ご注意ください。
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開けない朝はない。止まない雨はない。
そんな言葉なんて届かない。
嗅覚は衰えた。
鈍くならないと生きてはいけなかった。
果てしないゴミ屋敷。土足で上がる居間。
あちこちに蜘蛛の巣が張った天井。
破れたカーテンに群がる子猫。
いとも簡単に消える命。
不意に淡々と伝えられる、誰かの訃報。
その先にある、暗くて深いトンネルと山積みの仕事。
時に命の消え方は残酷で、
心が追い付かぬまま、ただひたすらに仕事に向かう。
徐々に心が麻痺していった。
衝撃的な訃報を聞いても、前ほどは衝撃を受けなくなった。
否、そうでもしないと、生きてはいけなかった。
衝撃に慣れないと、生きてはいけなかった。
正直、よく、生きていたと思う。
ようやく、朝が来たような気はするのだけれど、
この朝焼けがどこに続いているのかはまだ、わからなくて。
ただ茫然と、空を仰ぐ――。
その言葉はまるで、暗号のようだった。
唯一の手がかりは不確かすぎて、
肝心なことが掴めない。
今の僕にできるのは、
ただひたすらに、待つことだけだ。
君が応答してくれる、その日を夢見て――。
君に繋がるワードを手にした。
その先にあるのは、夢の続きか、夢の終わりか。
初恋は叶わないから良いんだと、誰かが言った。
想い出は綺麗なままの方が良いんだと、誰かが言った。
焦げつく想いは、果たして綺麗と呼べるのだろうか。
空想は空想のままで、現実は現実のままで。
僕は今、岐路に立っている。
初恋はいつまでも甘く、いつまでもほろ苦い。
それはまるで、行き場をなくして染み渡るカラメルソース。
喉元を滑り落ちてもなお、あの味が消えず、
僕は悶え続ける。
もはや夢まぼろしのような存在の君に、
今日も想いを巡らせて、正しい呼吸を見失う。
うだるような暑さの中で、君に別れを告げる。
じりじりと焼けつくような痛みが胸を襲う。
焼け焦げた想いはまるで、
干からびて朽ちかけた蝉の抜け殻のようで。
揺らめくアスファルトの湯気を呆然と見つめながら、
君にさよならを告げた――。
盲腸で入院した彼女を見舞うために、僕は病室に足を踏み入れる。
そこで目にしたのは、彼女のとびきりの笑顔。
「ねえ、このキーボード、可愛いでしょう?」
小説家を目指している彼女は、
病室に自前のパソコンとキーボードを持ち込んでいた。
「どうしたの、それ」
「奮発して買っちゃった」
えへへ、と笑いながら、彼女はキーボードを楽しそうに連打する。
その動きに合わせて、かちゃかちゃと軽やかな音が部屋中に響く。
「メカニカルキーボードっていうの。ごついデザインが多いんだけど、これはすごく可愛くて」
花水木をあしらった薄紅色のそれは確かにものすごく可愛いらしい。
(君の笑顔に勝るものはないんだけどな……)
そんな言葉を声をする勇気はなくて。
まるで楽器を奏でるかのように夢中でキーボードを叩く君を、
僕は黙って見つめていた――。
「感情なんて、地図のない宇宙だよ」
またもや教授が難解な言葉で何かを語ろうとする。
「まるで、このおでんのように?」
適当に相槌を打ってみれば、教授はそうそう、と嬉しそうに頷く。
(やっぱこの人は、単に話し相手がほしいだけなんだ……)
ひらめきが確信に変わり、やがて諦観へと変わっていく。
「時に教授、奥さんとは仲直りできたんですか?」
「それが、地図のない宇宙で彷徨う子どものように不可解でねぇ……。
ブラックホールに飲み込まれてしまって、明けない夜を三度迎えたんだ……」
「……出て行っちゃって、帰って来ないんですか。もう3日も」
翻訳作業もだいぶ板についてしまった。
こんなまどろっこしい会話が四六時中続いたら、
そりゃ嫌になるかもなと、私は密かに奥さんに同情の念を抱いた。
「『盗賊も改心するほどの美味しさ!』ってのはどう?」
開発したばかりの新商品を試食しながら、彼が得意げに声を上げる。
「う~ん。パンチを狙いすぎてる割には、パンチが足りない……」
私は蓮華ですくったスープを啜りながら、ダメ出しをする。
「じゃあ、『美味しさの圧縮袋、ここに見参!!』とかは!?」
「……なんかダサい」
じゃあ、何なら良いんだよ、と膨れる彼の横で、私は改良に改良を重ねて出来上がった特製の麺を啜る。
「普通で良いんじゃない?『普通に美味しい屋台のラーメン』とか」
「う~ん……」
彼は唸り、まるで縮れ麺のような天パを抱えて突っ伏した――。
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