- Hashtag "#ブログ" returned 354 results.
不育症の原因を検査して見つけ、
その原因に対して治療することが私たちの仕事です。
でも、
理想的な治療をしたとしても、
一回の妊娠につき、
約20%弱の赤ちゃんは流産という運命を背負った、
数週間だけのわずかな命だけをもらった
赤ちゃんなのです。
ですから、私と私のスタッフは、
病気を治すというより、
赤ちゃんのもらった寿命をまっとうしてもらえるように、
お手伝いさせていただいていると考えています。
「不育の人を看護する」 ことが最終的な目標なのです。
検査について不安があり、
治療についても、不安があり、
妊娠中には、恐れの感情と同居して、
日々を過ごされたことと思います。
そのときの支えになれるのは、
基本的には、夫であり、家族であり、不意仲間であり、
そして、主治医であると思います。
しかし最近では、
不育専門の助産師、看護師
が育ってきています。
最新の着床障害、不育症に関する専門知識を身につけ、
助産師、看護師として、ご本人と医師の間に入り、
各論的、個別的な相談、カウンセリングを、
看護という視点から
受け持っているのです。
それが、いわゆる
「支持的精神療法」 となっていると思っています。
その能力を最大限に発揮する場面のひとつとして、
不幸にも再度流産されたとき、
その原因分析よりなにより、
ご本人の心の隅に寄り添ってあげ、
流産手術前後の細心の心配りをし、
つらい現実を何とか乗り切っていただけるよう、
たとえ結果が悪くても、
少しでも納得していただけるよう、
夫と同様に、ときには夫以上に、
頼りになる存在になることができるのです。
この状況においては、医師は脇役でしかありません。
「不育を治す」
と同時に、また、ときにはそれ以上に
「不育の人を看護する」
ということが、非常に大切であると思います。
当院で流産手術をされた人ならば、
その違いを感じられたことと思います。
特にスタッフの助産師さんの看護には、
「看護の真髄」
を感じられたのではないでしょうか。
ただ、助産師ゆえに大きな壁を感じているようです。
できれば、
このブログをみられた人からの
助産師さんへの励ましのお言葉がいただけたならば、
どんなにか心強いことでしょう。
医師は治療、看護の一端を担っているにしかありませんから。
流産と宣告されたとき、
「なぜ」
「どうして」
「原因は」
と、思いませんでしたか。
また、医療側から、
流産した原因の説明として、
「赤ちゃんの原因によるものだから不可抗力ですよ」
「赤ちゃんが弱かったと考えてください」
と、その流産がまったく防げなかった出来事のように
言われませんでしたか。
一回だけならば、
運命的な原因による可能性は約60〜70%ぐらいありますが、
2回以上連続して流産を繰り返された場合、
その原因が2回とも運命的なものであった確率は
約30〜40%です。
運命的な原因ではなくて、
助けられた原因による確率は50%以上あったのです。
もしも今後、また、
流産という辛い出来事を経験するようなことがあれば、
その赤ちゃんが
「流産という運命を背負った赤ちゃんであったのか」、
あるいは、
「原因を見つけて治療していれば助けられた赤ちゃんであったのか」、
その判別のための検査を受けられることをお勧めします。
流産した赤ちゃんのためにも、
また、
ご夫婦のためにも、
何が起こったのかを知ることは、
きっと何らかの力を与えてくれます。
その検査とは、
「「 流産組織である絨毛の染色体検査 」」
です。
残念ながら、この検査は自費の検査です。
また、検査可能な施設と検査できない施設があります。
もともと自然に妊娠できていたご夫婦が、
流産を繰り返すという辛い経験をされた後、
なかなか自然に妊娠できなくなってしまったという例は、
稀ではありません。
その原因は、大きく二つに分けられます。
一つ目は、ご本人が流産を繰り返したことにより、
ホルモンバランスを壊してしまい、
排卵障害を発生してしまった例です。
この場合は、基礎体温表を記録すれば、
その状態がよくわかります。
二つ目が、多くの不育症患者さんに発生しています。
それは、基礎体温表からみればほとんど問題ないのに、
なかなか妊娠できないケースです。
一日も早く妊娠したい。追いつきたい。
傷ついた自分から、早く開放されたい。
と、いろいろな焦り、ストレスがその主な原因です。
今までの妊娠では、基礎体温を記録していなかったのに、
少しでも早く妊娠したい一心から、
毎日、几帳面に記録していませんでしたか。
市販の排卵検査薬を使い、こまめに排卵日を推定し、
子作りのタイミングに意識を集中していませんでしたか。
タイミング、タイミングと
気にしすぎていませんでしたか。
不妊の本を読んで、
頭でっかちになっていませんでしたか。
よく考えてみてください。
もともと、あなた方ご夫婦は、不育症ではあっても、
不妊症ではなかったのです。
精子もあり、排卵もあり、卵管閉鎖もないご夫婦です。
焦りは禁物です。
以前のように、
基礎体温は一時、記録せずに、
排卵検査薬も使わずに、
おりもの感、下腹痛等の
わずかな自覚症状と感をたよりに、
ご夫婦の「 体 調 」を最も重視して、
コウノトリを待ってみるのも、
ひとつの良い方法ですよ。
旦那さんの「 体調 」にも目を向けてください。
そして、自分の「 体調 」はいいですか。
お互いのいたわり、やさしさが、
こころの体温を
上げてくれますよ。
この方法のいいところは、
不妊治療というより、
「 ご夫婦のきずな 」
をより強くするところです。
多くの不育症のご夫婦の場合は、
「 タイミングより体調 」
が大切であると考えています。
ただ、年齢因子の場合は、たとえば40歳以上の場合は、
レベルの高い体外受精専門クリニックを
受診して治療していただくのも、
ひとつの選択肢と思います。
その場合、
体外受精・胚移植法は
不育症の治療にはなりませんので、
妊娠成立後は、
不育症専門クリニックでの
不育症原因に基づく流産予防治療が必要です。
たび重なる流産手術のあと、
悲しいはずなのに実感がどんどん薄れていく。
こころが動かない。凍りついていくように。
「赤ちゃんは、もう、だめかもしれない。」
そんな心境のなか、
今までの出来事を少しでも納得できるものにするために、
今までの事実と向き合うために、
決意して、
不育症の検査を受けてみたとします。
ひととおりの検査をして、
「異常なし」
と診断されたとします。
「異常なし」
とは、どう解釈したらいいのでしょう。
たとえ、今までの流産がすべて、
運命的な結果によるものであったとしても、
その想定外の出来事による
心身のキズ、狂いはないと言えるのでしょうか。
今がつらいならば、
心身の異常が何かあるはずです。
不育症の検査結果の説明の日と、
妊娠成立後の受診の日は、
できれば、お時間をつくって、
ご夫婦で来院されることをお勧めします。
不育症の原因としての、
ご夫婦の染色体異常による必然的因子の有無、
胎児の偶然的な染色体異常による偶然的因子の確率、
子宮の形の異常の有無とその程度、
甲状腺、乳汁分泌ホルモン等のホルモン異常の有無、
凝固系因子の異常の有無、
抗リン脂質抗体等の自己免疫異常の有無、
NK細胞活性等の拒絶免疫異常の有無、
精神的危険因子の有無とその程度、
などについての結果の説明とともに、
その治療法をお話します。
できるだけわかりやすくお話しますが、
その内容は非常に複雑です。
ですから、できれば、ご夫婦で聞いていただきたい
と、思っています。
ひとりより、ふたりで聞いていただいたほうが、
より納得していただけるからです。
次に、妊娠反応が陽性になったとき、
「祝妊娠」、
「おめでた」
という感情は一瞬にして消えてゆき、
「また流産したらどうしよう」、
「今度は絶対に流産したくない」
という恐怖心と悲壮感におそわれるかもしれません。
妊娠後の受診は、本当に怖いと思います。
赤ちゃんが育っているのか、
また、・・・・・・ なのか、
超音波検査でしかわからないからです。
残酷なくらい、
すぐに、その結果が突きつけられます。
いつも、生と死がとなりあわせの状態ですから。
こんな緊迫した瞬間の連続ですから、
できるだけ、ご夫婦いっしょに、
乗り切っていただきたいと思っています。
たとえば、あなたが近年その病態がよくわかってきた
抗リン脂質抗体症候群であったとします。
その治療として、
ヘパリン、アスピリン等の世界的標準治療法をしたとします。
その治療内容としては、最善であったとします。
しかし、過去に流産手術を6回以上受けていた場合は、
5回以下に比べて、
その成功率は非常に低いものとなります。
リンパ球免疫療法も含めた、
その他の一般的に行われている治療法についても、
同じ結果です。
すべての不育症治療において、
その成功率を左右する最も大きな因子は、
ご夫婦の年齢ではなく(45歳以下の場合)、
過去に受けた流産手術の回数
であると考えています。
このことは、
2001年、シカゴで開催された
アメリカ生殖免疫学会の特別講演で発表しました。
なぜ、そうなるのかについては、
三つの仮説を立てています。
一つ目は、
流産手術による、
正常の子宮内膜組織への度重なるダメージ〔炎症〕です。
内膜組織が荒れるというイメージです。
二つ目は、
流産手術による、
ご自身でも制御できない、
「妊娠イコール流産」 という反射的ストレスです。
これにより子宮内膜内のらせん動脈が
萎縮してしまうと考えます。
三つ目は、
流産手術とは無関係ですが、
染色体レベルではなく、
何らかの遺伝子の異常の存在です。
一つ目と二つ目は、
強力な子宮内膜環境の再構築治療と、
強力な薬物療法を含めた精神療法により、
改善すると確信しています。
しかし、三つ目は、
不育症の治療としては不可能です。
その場合は、
赤ちゃんを抱きしめること以外の、
ご夫婦のきずなの大切さ、
ご夫婦のいたわりの気持ちの大切さ、
今までのいっしょに頑張ってきた時間の尊さ、
人生はわずか80年ちょっと、
人生は結果ではなく、
その日々の過程に大きな意味がある
という哲学、
等を感じ取っていただけるように、
ただただ、祈るような気持ちで、
今後の人生が、
より豊かでありますようにと、
お送りしています。
診察室の超音波検査で、期待と不安の嵐の中、
先生から、
「赤ちゃんの心臓の動きが・・・・・。」
「流産です。」
と、静かに告げられ、
一気に感情が爆発する人、
感情が凍りついて恐ろしく冷静にみえる人、
何が起こったのか理解できない人、
といろいろな人がいらっしゃいます。
しかし、どのような人に対しても、
その後すぐに、
今後の方針が説明されると思います。
「いつ手術しますか?」
と聞かれて、
ほとんどの人は、
頭が混乱し、即答できません。
言われるままに、あるいは、おぼろげに、
「早く手術してしまおう。」
と考えませんでしたか。
私の30年以上の臨床経験から言うと、
少なくとも、一週間ぐらいは
自然に様子を見たほうが良いと思います。
この間に、出血が起こってきたら、
それは、赤ちゃんが自分の力で出てこようとしているのです。
母体の子宮内膜組織と赤ちゃんの組織が
自然に分離しているのです。
同じ手術でも、少し分離が起こった状態ならば、
正常の子宮内膜組織をあまり傷つけずに手術できるからです。
また、「流産です」 と言われたとき、
胎のう(赤ちゃんの袋)が15mm以下の場合は、
二週間ぐらい様子をみてもいいように思っています。
その間に、出血が起こったとしても、
通常の生理の2倍ぐらいの量であり、
通常の生理の2倍ぐらいの下腹部痛です。
もしも、手術をせずに、
自然に赤ちゃんが出てきてくれれば、
ご本人にとっても、
また、将来の赤ちゃんにとっても良いと思います。
ただし、その間の待機的管理と自然排出の確認は、
絶対に必要ですから、
担当医と十分相談する必要があります。
最近の欧米の傾向でも、いろいろな臨床研究結果より、
流産したら即、手術ではなく、
まずは自然に様子を見るという
「待機的管理」 が、
ひとつの大きな選択肢となってきています。
また、日本では未だ認可されていませんが、
初期流産(妊娠6週ぐらいまで)の患者さんに、
ミソプロストール
というお薬を膣内に入れると、
3日目に71%、8日目に84%の割合で、
子宮内容物が完全に排出されたことが、
世界で最も信頼できる医学誌(N Engl J Med)の
2005年8月25日号に報告されています。
詳しくは、ミソプロストールというキーワードで、
検索してみてください。
自然に赤ちゃんが出てきてくれたならば、
それは一番いいことです。
子宮はまったく傷ついていませんし、
かえって毛細血管網がはりめぐらされたまま残り、
次の赤ちゃんにいい財産を残してあげられる
可能性があるからです。
さらに、ご本人の精神的な恩恵も大きいのです。
産婦人科の待合室に、どんなイメージをお持ちですか。
みじめで、
情けなくて、
時には嫉妬心を感じて、
できれば、
一刻も早く逃げ出したくなる場所
ではなかったですか。
普通の産婦人科外来の待合室は、
妊婦さんでいっぱいです。
幸せいっぱいの笑顔であふれています。
壁には、天使のような赤ちゃんの写真が
自然と目に入ってきたと思います。
多くの妊婦さんは、流産を繰り返す不育症
の存在すら知りません。
多くの先生や看護師さんでさえ、
不育症の全体像がよくわかっていません。
そのため、なんとも言えない孤立感を感じませんでしたか。
ときどき、その言葉や態度に、
大きなストレスを感じませんでしたか。
不育症の治療には、精神的サポートが非常に大切です。
ですから、理想的には、
待合室は、不育症患者さん専用、
あるいは不妊症患者さんと同室が良いと思います。
さらに、
できれば旦那さんといっしょに、
ゆったりと、
診察を受けていただくことが理想です。
私は、日本で最初に不育症専門クリニックを開業しました。
まだまだ、不備な点が山積していますが、
スタッフ一同、日々、改善するよう努力しています。
流産手術時の麻酔は、
10分間ぐらいの短い時間だけ、
意識を無くして、
痛みを感じないようにしなければなりません。
しかし、
自発的な呼吸機能を残さなければなりません。
そのために、
全身麻酔薬、催眠・鎮静薬、麻薬、抗不安薬、鎮痛薬を、
単独あるいは併用して、静脈内へ注入する全身麻酔が
行われています。
この麻酔方法の違いと、
手術前のこころの安静度の違いにより、
麻酔されることが
怖く
なることがあります。
急に、強制的に、意識が無くなっていき、
その途中で、
自分が暗いブラックホールのような闇へ落ちていく、
きつい色のついた怖い夢をみる、
などです。
流産手術は、ほかの手術に比べて、
短い時間で終了します。
ですから、往々にして、安易に考えられていますが、
私の経験からみて、
非常に多くの精神的ケアーが要求される、
非常に重い手術です。
つらい手術ですから、
こんなときこそ、
旦那さんのこころからの看護が必要です。
当院での手術では、
ほとんどの患者さんが、ご夫婦でいらっしゃいます。
半数ぐらいはまったく夢を見ないですが、
残りの半数ぐらいの患者さんは、
麻酔中に、カラーの楽しい夢を見られています。
野原、あるいは遊園地で遊んでいる、
海外旅行をする、
などです。
つらい手術ですから、
麻酔についても、
慎重に、ゆったりと行い、
少しでも居心地のいい時間を
持っていただきたいと思っています。
ある状況下のなかで、
麻酔をしないで緊急に流産手術を受けたことはありませんか。
たとえば、妊娠中に出血があり、
あわてて救急病院を受診したとき、
流産しかかっている、あるいは流産が進行していると診断され、
「数分、我慢してください。」
と言われた後、
麻酔をしないで緊急手術を受けたことはありませんか。
あるいは、
意識がある状態で痛みだけ和らげる処置を受けた後、
流産手術あるいは、子宮内容除去術を
受けたことはありませんか。
このような場合、
「何か起こっているのか」
その状況を説明されても、
精神的にパニック状態になっていれば、
ほとんど理解できないため、
恐怖心
のみが残ってしまいます。
実際、不育症の患者さんは、
まず早く妊娠することを希望されますが、
いざ、妊娠されると、
少なからず、
怖いという感情を覚えるようです。
その怖いという感情のなかには、
流産手術への極度の恐怖心も含まれていると思います。
「病院が怖い。」
「内診台が怖い。」
などの感情です。
ある患者さんは、
来院されるごとに、血圧が200ぐらいまで上がり、
自宅へ帰ると120ぐらいになっていました。
「白衣性高血圧症」
といって、
精神的な過剰な緊張が血圧の上昇までもたらしている一例です。
このような
流産手術などに起因する
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者さんは、
自分自身、気がつかない例も含めて、
かなり多くいらっしゃるのではないでしょうか。
元気な赤ちゃんを出産するための治療とは別に、
必要ならば、
今、病んでいるこころの状態を治すことも大切だと思います。
こころの治療が不育症の治療に直結するからです。
- If you are a bloguru member, please login.
Login
- If you are not a bloguru member, you may request a free account here:
Request Account