子宮内や膣内のフローラ(細菌叢)を、
遺伝子検査できるようになってきましたが、・・・。
人間の粘膜(口や鼻や腸)には無数の常在菌があり、
エール大学のギル モア教授は、
「人間の体の常在菌が妊娠の継続に極めて重要である」
という有力な研究報告をしています。
2015年に「サイエンス」という権威ある医学誌に、
「寄生虫と妊娠継続の関係」が報告されました。
世界の10億人以上が何らかの寄生虫に
感染していると言われていますが、
回虫に感染していると、
感染していない婦人に比べて妊娠、出産率が高く、
十二指腸虫では逆に低いという内容です。
胚(受精卵)も子宮で寄生して育っているわけです。
つまり、
胚を受け入れる免疫と、
拒絶する免疫があると考えられるのです。
身体とこころの状態によって影響を受ける
子宮内フローラの検査は参考にはなりますが、
「胚へ直接的に影響を及ぼす免疫状態」
の詳しい検査と、
その治療が大切です。
Th1/Th2比が高い人は、高くない人に比べて
その後の妊娠で有意に流産率が高くなったという
報告はありません。
正常妊娠維持にはTh2優位が必要という概念が
20年ぐらい前に支持されていましたが、
動物実験では否定的です。
妊娠の同種免疫検査として、
Th1/Th2比だけでは不明です。
タクロリムスは、ステロイド以上の
強力な免疫抑制薬ですから、
移植免疫には有力な薬ですが、
妊娠免疫には現時点でお勧めできません。
妊娠維持のための免疫抑制が必要と
考えられる場合は、
まず適量なステロイド治療と思います。
タクロリムスは、日本の公文書としての添付文書に、
「警告」 として(2021年)、
重篤な副作用により、致死的な経過をたどる
ことがあるので、緊急時に十分に措置できる
医療施設及び本剤についての
十分な知識と経験を有する医師が使用
と記載されています。
Th1/Th2細胞比という免疫検査の説明は
ブログNo.549を参照ください。
2021年3月、Natureという
信頼度の非常に高い医学誌に、
「胎盤には胎児に存在しない
染色体異常(モザイク現象)がある」
ことが報告されました。
(Nature 592, 80-85, 2021)
2020年1月より日本でも
臨床研究として行われている
#PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)、
以前は、
#着床前スクリーニング
と言われていた胚(受精卵)の染色体検査は、
胚の外側の胎盤になる細胞を採取して
検査していますので、
「その検査結果が、
胎児の結果ではないことがある」
ことが証明されたことになります。
下記をクリックすると、
関連した内容のブログを検索できます。
初診から出産までの費用だけではなく、
その期間の長さも関心事です。
不育症の場合、
保険内での検査では、
「よくある相談Q28」の理由で、
一度には検査できませんが、
費用は約1~2万円です。
自費の血液検査では、
一度に検査できますが、
費用は5~8万円です。
着床障害の場合は、
体外受精費用が1回につき
約30~70万円と高額であり、
出産までの期間を考えたとき、
1回治療(採卵・移植)による生産率は
約5~25%のため、
自分の状態に適した施設と
治療法を選択しないと、
総費用だけでなく、
出産までの期間にも
大きく影響してしまいます。
当院は
不育症・着床障害の子宮側の問題だけを
心身両面から専門的に検査・治療しており、
体外受精は行っていませんので、
第三者的に、
より客観的に
いろいろな体外受精クリニックを
評価できています。
迷われていたら、
メール相談してみてください。
数多く胚移植しても
結果がでない方の中で、
ベルトコンベヤーのような
連続する移植スケジュールに
心を痛めていませんか?
何回移植しても、
いつも胚の原因と言われ、
あるいは、
子宮側の原因を調べると言われても、
詳しい内容説明もなく、
検査、治療を受けていませんか?
納得のいく説明がないのは、
おかしいですよ。
もしそうならば、
そのストレスが
子宮内環境を益々悪化させている
可能性もあります。
子宮内環境の多くの異常に
ストレスが密接に関係しているからです。
着床障害についての
子宮内環境の検査と治療は、
不育症の専門的な知識と経験が
必要なのです。
当院では、
こころのケアを基本として、
納得できる説明と、
心身両面からの治療を
行っています。
胎芽の栄養補給は、
母体の「らせん動脈」から供給されています。
胎芽側の胎盤になる細胞(絨毛細胞)は、
母体子宮内膜内だけでなく、
らせん動脈にも数多く侵入しています。
らせん動脈内の絨毛細胞の主な役目は、
以前、
プラグ(栓)形成による動脈の流れを
緩やかにして「圧迫死」を防ぐことと
考えられていましたが、
最近では、
「血管壁の再構築」のためであることが
わかってきました。
母体の血管壁内の神経線維と筋肉細胞が
絨毛細胞(胎芽側の細胞)に入れ替わって、
血管壁の「再構築」が起こっているのです。
血管壁の「再構築」は妊娠16週ごろまでに
完了しているようです。
再構築が完了したら、
血管腔は約10倍太くなり、
母体の神経支配を受けないで済むのです。
逆に、
「再構築」が完了するまでは、
母体の交感神経が緊張すると、
血管壁の筋肉細胞が収縮して、
らせん動脈が
過剰に細くなってしまいます。
その結果、
虚血による胎芽死が起こる
可能性が高くなってしまうのです。
過去のブログのなかで、
不育症、着床障害と甲状腺ホルモン
の関わりの関する記事を
まとめてみました。
下記の #甲状腺 をクリックしてください。
甲状腺ホルモンは、
子宮内膜の脱落膜化を促進している
という報告が2020年にありました。
(Endocrinology 2020; 161: bqaa049)
子宮内膜がうまく脱落膜化することは、
着床、妊娠維持に最も大切なことなのです。
従来から、
子宮内膜の脱落膜化には、
卵巣から分泌される
黄体ホルモンが必須であることは
わかっていましたが、
甲状腺から分泌される
甲状腺ホルモンも重要な要素のようです。
脱落膜化が十分でないと、
子宮内膜内の免疫細胞(NK細胞等)や、
間質細胞に悪い変化を発生させ、
着床不全、流産が起こるようです。
受精卵は子宮内膜に接着すると、
胎盤になる細胞から、
hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)
というホルモンを産生します。
hCGは、卵巣を刺激して、
妊娠維持のために
黄体ホルモンの産生を促します。
同時に、
hCGは、甲状腺も刺激して、
甲状腺ホルモンの産生も
促しているのです。
実際、
正常妊娠において、
妊娠4~10週の期間、
hCGの影響により、
甲状腺ホルモン値(FT4)は
高くなっており、
TSHは低くなっています。
妊娠ごく初期に
TSHを検査して、
TSHが高いならば
(基準値の上半分以上)、
要注意です。
正常な妊娠を維持するためには、
特別な甲状腺機能の管理
が必要です。
ただ肝心な甲状腺検査の値が
世界的に、施設間で多少違うため、
問題でしたが、
今回4月より、日本でも標準化が
開始されました。
生殖医療下の妊娠13週までの
妊娠維持にとっては、
TSHが2.5μIU/mL以下か、
妊娠初期特有の基準範囲の下半分
であることが良いと、
米国甲状腺学会ガイドライン(2017年)
で示されています。
また、
妊娠ごく初期には、
甲状腺機能を20~30%上げる必要があります。
妊娠14週以後については、
TSHを3.0μIU/mL以下ぐらいに
コントロールすることが良い
のではないかと考えています。
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