『白い牛のバラッド』<ベタシュ・サナイハ/マリヤム・モガッダム>監督
Jan
11
日本の<濱口竜介>監督が銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した『偶然と想像』と並んで「第71回ベルリン国際映画祭」(2021年)のコンペティション部門に出品されたのをはじめ、世界中の映画祭で絶賛された本作は、<ベタシュ・サナイハ>監督と<マリヤム・モガッダム>監督が自国のタブーに斬り込んだ衝撃のえん罪サスペンスです。
斬り込みすぎて自国イランでは、2020年2月のファジル国際映画祭で3回上映されて以降、政府の検閲により劇場公開の許可が下りず、2年近く上映されていない、という問題作品です。
愛する夫を死刑で失い、ろうあの娘を育てながら必死で生活するシングルマザーの「ミナ」(マリヤム・モガッダム)。1年後に突然、夫の無実が明かされ深い悲しみに襲われます。賠償金よりも判事に謝罪を求める彼女の前に、夫の友人を名乗る男「レザ」(アリレザ・サニファル)が現れます。「ミナ」は親切な彼に心を開き、3人は家族のように親密な関係を育んでいきますが、ふたりを結びつけるある秘密には気づいていませんでした。罪と償いの果てに、彼女が下した決断とは。
解禁された30秒予告は、最愛の夫をえん罪で失った「ミナ」とろうあの娘「ビタ」の元に、謎の男「レザ」が現れるシーンから始まります。「レザ」は「ご主人に借りた金を返しに来ました」といい、悲しみに暮れていた「ミナ」は親切な彼に次第に心を開いていきます。
続くシーンでは水浸しの部屋に佇む「レザ」が映し出され、不穏な空気に一変。「愛する人をえん罪で失った時、あなたならどうしますか」という究極の問いかけとともに、「死刑」「犠牲」「過ち」の言葉が、二人の姿とあわせて映し出されます。この男は一体、何者なのか? そして、タイトルにかかる最後の白い牛が印象に残る予告に仕上がっています。イランの闇をあぶり出した本作は、死刑制度が存在する日本でも問題作となるに違いありません。