ベテルギウスの超新星爆発
Feb
28
ベテルギウスは冬の星座であるオリオン座のオリオンの右肩にある一等星で、今頃は晴れた夜なら三ツ星のやや左上にあるから簡単に見つけることが出来る。ベテルギウスは恒星としては地球に非常に近く640光年の距離にある。
ベテルギウスは太陽の約20倍の質量を持ち、大きさは半径が太陽の1000倍もあるが、誕生してから既に1000万年水素の核融合を繰り返しており、現在は膨張して表面温度が下がり赤くなる赤色巨星の状態になっている。そのため今後100万年以内に超新星爆発を起こし、ブラックホールとなるか、中性子星になるという。
天の川銀河内での超新星爆発は平安時代の1054年と徳川家康が江戸幕府を開府した翌年の1604年にもあったが、前者は地球から7200光年、後者は13000光年の距離にあり、ベテルギウスはこれらに較べはるかに近い。1604年のケプラーの星の超新星爆発でも木星位の輝きが約1年続いたという記録があるが、ベテルギウスの超新星爆発が起これば昼間でも輝いて見えるそうだ。
超新星爆発の直前に赤色巨星は大量のニュートリノを放出するため、地球上でニュートリノの観測をすれば超新星爆発を予知出来る。そこで活躍するのが1987年に大マゼラン雲で起きた超新星爆発によるニュートリノを検出したことにより小柴博士がノーベル賞を受賞したカミオカンデの後継のスーパーカミオカンデだ。1987年の超新星爆発では超新星が16万光年も離れていたため11個のニュートリノしか検出出来なかったが、ベテルギウスの場合にははるかに多量のニュートリノが観測されるはずだ。超新星爆発によるニュートリノが検出されたら直ちに世界中の天文観測施設に通報され、ベテルギウスを詳細に観測する態勢が既に出来ている。
近頃の宇宙物理学の世界は急速に進歩しており、最新の研究によればニュートリノが観測されて1.5日後にベテルギウスの表面温度が急上昇し、色が赤色から青色に変化する。そして星が急速に輝き出し、3時間後には半月と同等の明るさとなるが、見える星の面積が小さいのでぎらぎらと輝き日中でも眩しく見える。輝きは7日後がピークでその後膨張による温度低下のために色が変化し輝きが減少してゆく。400日もすると昼間には見えなくなり、4年後には夜でも見えなくなる。
もしもベテルギウスが超新星爆発の後にブラックホールになると、ガンマ線バーストを起こし大量のガンマ線が放出される恐れがある。もしも大量のガンマ線が地球に向うと、地球を守っているオゾン層を破壊し太陽の紫外線が地球に降り注ぐため多大な影響があり、かつての超新星爆発ではそのために種の絶滅も起こったが、最近の研究によればベテルギウスのブラックホールから放射されるガンマ線の方向は地球への方向に対し20度ずれているので問題とはならないだろうと予測している。
それにしても宇宙物理学者は気が長い。ベテルギウスの超新星爆発は100万年の間に起こるという。光が届くのに640年もかかるので、もしかしたら既に超新星爆発しているかもしれないし、今から1000年後にもまだ爆発していないかもしれない。