太陽の構造(太陽系図鑑より借用)
太陽については2012年5月21日の金環日食の時に主に太陽活動について書いたが、もう少し太陽について解説したい。一部は重複するが許してほしい。
太陽は地球のような岩石からなる星ではなく、水素やヘリウムなどの原子核と電子などによるガス体で構成されており、太陽の輪郭となる光球の半径は約70万キロメートルで、これは地球の約109倍であり、また太陽の質量は地球の33万倍もある。太陽の表面にあたる光球の温度は約6,000℃で、太陽からの可視光線はほとんどが光球から放出されている。
太陽は中心部の中心核(半径約15万キロメートル)、その周辺部の放射層(同50万キロメートル)、更にその外側の対流層(同70万キロメートル)、対流層の表面部である光球、光球を包む彩層、更にその外側にあるコロナなどにより構成されている。
太陽核は2,300億気圧ときわめて高圧であり温度も1,600万℃と超高温なため、水素原子核が核融合してヘリウム原子核を生成し、その際に膨大なエネルギーと光を放出して、これが太陽のエネルギーの源になっている。このエネルギーと光は、水素やヘリウムが高温のために原子核と電子に分離したガス状態であるプラズマによって形成される放射層を外側に向けてゆっくりと移動し対流層に達する。対流層は内部の熱せられたプラズマが光球では冷やされるために対流している領域で、光球まで移動したエネルギーや光は宇宙空間に放出される。
このようにして太陽から放出された光のうち、地球に到達するのはわずか22億分の1である。なぜそれほど少ない光だけが地球に届くかというと、それは地球が太陽から遠く離れている上、とても小さいからだ。太陽から地球までの距離は1億5千万キロメートルあり、太陽を直径10センチのボールに例えると、地球は10.7メートル先にある直径0.9ミリの小さな球に相当する。
光球の外側には地球の大気に相当する彩層があるが、これは厚みが2,000キロメートルを超える約10,000℃のプラズマの層で、この部分から紫外線やX線が宇宙に放出されている。彩層の外側には約200万℃という高温の薄いプラズマによるコロナがあり、皆既日食の際にその美しい姿を観察することが出来る。彩層ではフレアと呼ばれる巨大な爆発現象が発生するが、これは太陽内部から磁力線によって運ばれてきた磁気エネルギーが彩層で一瞬にして熱や光に変換される現象で、フレアの温度は1,000万度を越し、強い紫外線やX線が放出される。フレアがおこると太陽からのプラズマの流れである太陽風が強くなり、地球では磁気嵐がおこって無線通信障害が発生したりオーロラが出現しやすくなる。
太陽表面を観測すると黒い点を散らしたように見える部分があるが、これは黒点と呼ばれる。黒点では温度が光球よりも低い4,000~5,000℃のため黒く見えるが、その存在は古代ギリシャや古代中国でも知られていた。ガリレオは望遠鏡を発明した17世紀初めから黒点の観測を始め、以後現代にいたるまで黒点観測が継続されている。黒点では磁力線が太陽の内部から出てきて光球の外側の大気に向って伸びて行き、Uターンした後別の黒点を通って再び太陽内部に戻る。そのため黒点は2つがひとつのペアになっていると考えられている。この磁力線にそって低温になったプラズマがコロナの中に描いたループをプロミネンス(紅炎)と呼ぶ。黒点における温度が周辺よりも低いのは、黒点の下部では強い磁力によりプラズマの対流が起こりにくく、そのために太陽内部からの熱が運ばれにくいためだ、と言われている。
黒点観測によれば、光球での黒点の数は約11年の周期で変化し、黒点が少ない時期を黒点極小期、黒点が多い時期を黒点極大期と呼ぶ。また黒点の数が変化する周期を太陽周期と呼ぶ。黒点の数は太陽自身の活動と密接な関係があり、黒点極大期には太陽が最も活発に活動している。最近では2008年が黒点極小期、2013年が黒点極大期と考えられているが、今年の黒点数は極大期ではない2011年を下回り、約100年来の少なさとなっている。
1645年から1715年の間、黒点がほとんど見られない状態が続いたが、この期間はマウンダー極小期と呼ばれ、色々な調査の結果、この期間が地球の寒冷期であったことが知られている。また1790年から1820年も黒点が少ない状態が続き、ダルトン極小期と呼ばれているが、この期間も地球の平均気温が低かったことが明らかになっている。これらの歴史的な事実から、現在の黒点の少なさは地球寒冷化の兆しではないか、と言われている。
2006年に打上げられた日本の太陽観測衛星『ひので』、およびNASAのSDO (Solar Dynamics Observatory)によって収集されたデータに基づく最近の日米欧の共同発表によれば、太陽の北極では磁場がS極からN極に反転しているのに対し、南極ではN極からS極への反転が見られず、南北の両極がN極となり、南北の低緯度付近にS極を持つ四極構造になると予想されている。このような4極構造は太陽観測では初めてのことである。ちなみに太陽の両極での磁場が逆転するのは以前から観測されており、その周期は太陽周期である11年であることが知られている。すなわち太陽周期とは北極がプラスからマイナスあるいはその逆に反転する期間と言える。
太陽では今、黒点活動の少なさや4極構造など、これまで蓄積されたデータでは解析しきれない現象が観測されている。太陽の静穏化により地球が寒冷化すれば、寒冷期の歴史が示すように農作物の収穫は減少し疫病が流行する恐れがある。地球温暖化は声高に騒がれているが、寒冷化についてももう少し心配する必要がある。
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Posted at 2013-06-07 16:24
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Posted at 2013-06-08 05:48
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