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  • くまごろうのサイエンス教室『光の速度』

くまごろうのサイエンス教室『光の速度』

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光の速度は秒速約30万キロメートル、正確に言うと、299,792,458(憎くなく二人寄り添いいつもハッピー)キロメートルである。これは1秒間に地球を約7周り半まわる早さであり、最高でも秒速10メートルである人間の3,000万倍、秒速約340メートルである音速の88万倍、地球の周りを約90分で1周する秒速約7,700メートルであるスペースシャトルの39,000倍の速さである。

しかし宇宙に目をやると、光の速度は速すぎることはない。地球から月までの距離は約384,400キロメートルのため、光でも1.28秒、また太陽までの距離はおよそ1億5,000万キロメートルあるので8.34分かかる。太陽から最も遠くにある太陽系の惑星海王星までの距離は、地球までの距離の約30倍だから、太陽からの光が届くのに4時間10分必要だ。更に太陽系の外に目をやると、太陽から最も近い恒星はケンタウルス座アルファ星であるが、光のスピードでも4.39年もかかる。

光速は意外と古くから測定されており、1676年にデンマークの天文学者オーレ・レーマーが木星の衛星であるイオが公転により木星の陰に隠れる周期が計算値からずれる現象を観測することにより、光速が毎秒21.4万キロメートルと計算した。また、フランスの物理学者アルマン・フィゾーは1849年、歯の数が720ある歯車を毎秒12.6回転させると、歯車の谷を通過した光が8.6キロメートル先に設置した反射鏡で折り返して谷の隣の歯に当たることを測定し、光が8.6 x 2 = 17.2キロメートルを進むのに要する時間が1/(720 x 2 x 12.6) = 0.000055秒と計算し、光速が31.3万キロメートル/秒であるとした。

イギリスの物理学者ジェームズ・マックスウェルは1864年にマックスウェル方程式を発表し電磁気学の基礎理論を確立したが、電磁波が真空中を進む速度を理論的に計算し、その速度が約30万キロメートル/秒であることを示した。そして電磁波の速度が光速と一致したことから、光は電磁波の一種であると結論づけ、光速は不変なものとなった。

17世紀以来のイギリスの物理学者アイザック・ニュートンが確立した古典的物理学では、時間の進みや空間の大きさは誰にとっても等しい絶対的なものであったが、ドイツ生まれの物理学者アルバート・アインシュタインは、幼少の頃から光を光と同じ速さで追いかけたらどのように見えるだろうか?という疑問を抱き続け、1905年、26才の時に電磁気学が理論的に示すように光速は光源の速度によらず不変であることが絶対的であり、光速に近い速度で移動する人は時間の進みや空間の大きさが移動速度に応じて変化する、という特殊相対性理論を発表した。この理論によれば、光の速度に近い高速で動いている人の時計はゆっくり進む、あるいは高速で動く人や物は静止している人から見れば縮んで見える。

一例を挙げれば静止している観察者Aと光速の約75%の速さで水平に移動している観察者Bの両者が長さ約30万キロメートルの筒の下端から発せられる光を観察すると、Aは1秒後に光が上端に達するのを観察するが、Bの見ている筒の中ではその時、光はまだ全長の66%の位置にある。この筒は光時計と呼ばれ、下端から発せられた光が上端に到着するまでの時間を1秒と規定するが、この例ではAの時計が1秒経過してもBの時計は0.66秒しか経過していないことを示している。

アインシュタインは特殊相対性理論から有名なE = mc2 というエネルギーと質量の関係式を導いているが、スイスにあるLHC(Large Hadron Collider)のような陽子加速器で陽子を加速する場合、速度が速くない時はエネルギーを加えれば陽子はどんどん加速されるが、光速に近づくと加えたエネルギーは陽子の見かけ質量の増加に消費され、どんなにエネルギーを加えても陽子が光速を超えることはない。この現象は質量を持つすべての物質に共通であり、光速不変の原理は光速が何者も超えることが出来ない宇宙の最高速度である、としている。

2011年9月、CERN(European Organization for Nuclear Research)のセミナーで発表されたニュートリノの速度が光速を超えた、というニュースはきわめて衝撃的であった。もしも発表されたデータが正しければ特殊相対性理論を否定し、素粒子物理学や宇宙物理学などに大きな変革をもたらすことになりかねなかった。しかしその後の調査で、実験に使用したGPSの接続不良が原因の誤差であり、ニュートリノの速度は光速であったことが確認された。

ところで1メートルという長さの単位は、以前は地球の北極から赤道までの子午線の距離を10,000キロメートル、その10,000,000分の1を1メートルと定義し、パリにある白金とイリジウムで作ったメートル原器が基準であったが、1983年の国際度量衡総会以降、1メートルとは光が真空中を299,792,458分の1秒に進む距離、という定義に変っている。この際1秒の定義が重要となるが、セシウムが発振する電磁波の周波数に基づくセシウム原子時計により測定することになっている。1メートルの単位もずいぶんとハイテク化したものだ。

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