くまごろうのサイエンス教室『水はどこから来たか』
Jul
3
太陽系が生まれた約46億年前、宇宙に存在していたたくさんの恒星の内部では超高温・高圧のために水素原子が核融合してヘリウム原子核を生成し、より質量の大きな恒星ではヘリウム原子核2個の核融合によりベリリウム原子核が、ベリリウム原子核とヘリウム原子核の核融合により炭素原子核が、炭素原子核とヘリウム原子核の核融合により酸素原子核が生成した。このような質量の大きな恒星内における核融合で生成するのは鉄の原子核までであるが、これらの恒星の超新星爆発によりもっと重い他の元素が生成し、また元素が宇宙空間にばらまかれる過程で炭酸ガス、水蒸気、メタンなどの分子が生成した、と考えられている。このような超新星爆発によって生まれた水素やヘリウムなどを主体とした星間ガス、分子雲、宇宙のちり(星間塵)などが集まって太陽と太陽系の惑星が生まれたが、地球は水星、金星、火星と同様に太陽からの距離の関係で主に岩石や金属が集積して岩石惑星となった。
45億年前に微惑星(隕石)の衝突や合体の結果生まれた地球は、誕生直後は微惑星の衝突のエネルギーで地表が高温になり、表面は融けたマグマオーシャンの状態であったが、微惑星の衝突がおさまってくると地表の温度が低下して固まり、薄い地殻が形成されたと考えられている。誕生当時の地球は太陽の大気と似た高温のヘリウムと水素を主成分とした大気をもっていたが、その大気は誕生したばかりの太陽からの強力な太陽風によってほとんど吹き飛ばされてしまった。地殻が形成された地球の表面では多くの火山が噴火し、太陽風もおさまってきた地球周辺には二酸化炭素やアンモニアなどによる大気が形成されたが、この大気には微惑星を構成する岩石に結晶水や水和物の形で存在していた水が水蒸気として多量に含まれていた。この水蒸気が地表の温度低下に伴って大気中で凝縮し、雨となって数100万年も地球表面に降り注ぐことによって約40億年前に海洋が誕生したと考えられている。初期の海洋は大気に含まれていた亜硫酸や塩酸を含んでいたため酸性であったが、地殻の金属が溶解することによりある程度中和された。27億年前には海洋の浅瀬にシアノバクテリアが発生し、光合成を行っていたことが化石により明らかになっているが、この光合成により酸素分子が発生し、酸素が地球大気の重要な要素となっていった。
地球表面では主に太陽からの輻射熱により海や湖などから水が蒸発するため、地球の大気には多量の水蒸気が含まれている。大気は高度が増すと気温が低下し、水蒸気はある高度で凝縮して雲となり、ある気象条件下で雨、あられ、雪などになって地表に降り注ぐ。このような水の蒸発・凝縮・雲の形成・降水を水循環と呼ぶが、地表の水は宇宙に散逸せずに地球に保存されることになる。
こうしてみると、炭素化合物の燃焼などにより生成する水を除き、地球上にある大部分の水は太陽系誕生の前に起きた恒星内での核融合、それに続く超新星爆発などによって生じた酸素原子と水素原子から生成し、微惑星の成分である岩石の結晶水などの形で地球に飛来し、微惑星の衝突や火山の噴火により水蒸気となって大気の成分のひとつとなり、やがて大気温度が低下したことにより液体の水となったのだ。そしてこの宇宙からの贈り物である水は地球の特殊な環境により、宇宙に散逸することなしにわれわれの役に立っていることになる。この次に水を飲む時は、はるか46億年前に宇宙から来た水の歴史に想いを寄せてみるのも一興だろう。
Posted at 2014-07-04 10:33
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Posted at 2014-07-06 18:04
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