砂糖入れる? わたし 甘党だから三杯で 新築祝いに来てくれた 友だちにコーヒーを入れた どうぞ ブッファッーーー とゴジラが火を吐くように コーヒーが飛んだ どうしたの? と訊くとコーヒーカップを渡された そして私も コーヒーをおもっきり吹き出した ………汚れた新築祝いに笑う
息子と公園で遊んでいた 公園内をスクーターで乗り回すヤンキー ひとりのお父さんがそのヤンキーに近寄る ヤンキーの足をはらい倒す このお父さん どんだけケンカしてきたんだろう 百戦錬磨の強さだった 110番され ヤンキーは逃げ お巡りさんに囲まれるお父さん ヤンキーを追いかけろよ
破れない風船は お世話になったひとたちへ 垂れ下がった糸を振りながら 感謝の気持ちを伝えに行きます 少しの間 この世界を自由に飛べるのです 私も風船になりました 先ほどから挨拶まわりをしています 飛んでいるのは夢のようで なんだか不思議な気持ちがします カラスはカァーカァーと鳴きながら 私のことを見ています けれどもクチバシで突くことはしません その黒い出で立ちで親近者のように 喪に服しているのだろうか 懐かしい小学校が見えてきました 私が描いた絵はまだ飾られているだろうか 見てみたいけれど そこまで時間はないようなので 家族のところへ向かいます なんてことでしょう 私の身体を囲み家族が泣いています ろくな人間ではなかったのですが いざ風船になると ちょっといいひとになるようです 家族には ありがとうの言葉しかありません この世界で共に過ごせた幸せ 私も泣いています ああ どんどん空の上にあがり とっても速く景色は流れています もう雲の上まで来てしまいました なんだかとても懐かしい匂いがします そして おふくろと親父の声が聞こえ どんどん光の世界に近づいています ただいま 帰って来ました お前の帰りをずいぶんと待ったよ いい人生だったんだね ご飯の準備はできているから いっぱい食べるといい
帰るところを知らない 僕たちを星が笑っています 手をつなぐ温かさがあれば 寂しいさは どこかに飛んでいきます なんだろう このありがとうの気持ち こころは夜空に とっても澄んでいきます ふたり手をつなぎ歩く ここが ただいまの場所でしょうか 僕たちを星が笑っています
どんよりと重たい夢を引き摺り 現実の朝に上手く戻れない どうにもならない苦しみだけが 生きていることを自覚させる 未来の不安がそうさせたと言うのか 強度な追い込みは このままではないことを知っている 時間と共にどんよりが溶け始める 自転車のスタンドが上がる音 掛け布団から出た肩の冷たさ 立ち上がる時の腰を気づかうイメージ 現実に追われた俺は この現実に救われてゆくというのか 夢の世界と現実の世界 その間の世界から抜け出して 始まろうとしているのか それとも何も無いだろう世界に近づき 終わろうとしているのだろうか 必要のなかったアラームが鳴る 動かす左手からどんよりが消えてゆく
それでは 賛成の僕は挙手をお願いします はあ まだ手は挙がりませんね その先は進めないってことですね では もう一度 自分を振り返りよく考えてください さあ どうでしょう 時間は経ちました その時が来ましたよ そうですね 大人でも手を挙げて 横断歩道を渡る、に賛成ですね
美しい日々よ 私の美しい日々よ 時間は音色を添えて 歌い出すよ 優しさは 温かさは 凍えそうな心を さり気なく包んで 溶け出すと 目の前に ふっわっと明るい 景色が広って 美しい日々よ 私の美しい日々よ 感じていよう この幸せをずっと ありがとう 美しい日々よ 私の美しい日々よ
見えない私は 見ようとしない私がいて 見えない 同じ道しか歩かず 失敗のない私ばかり 見ようとする 景色はいつも同じでないと 私でいられない 私でない私も私であって 私は諦めている 私は私を諦めて 私になろうとしている ひとはそれを 甘えと言うのだろう それでも 見ようとしない私がいて そんな私を 壊したい私もいる
どんきゅら どんきゅら 僕はなななななな どんきゅら どんきゅら ここちよい寂しさの 夢は未来になくて 過去のののの どんきゅら どんきゅら 伝わらないから 僕より それぞれが咲いて 救われ どんきゅら どんきゅら 小さくなって 僕はなななななな
指先を凍らす季節が来る 頭の中で描く世界も 冷たさに動けず 吐き出せない苦悩は 行き場をなくし 身体の中で心が扁形する 再び来ようとしている お知らせの風が 枯れ葉を落とし静かに鳴り どこに希望があるのか 探すことにも疲れ 背を丸めベンチに座り 足先を包む 雲の谷間からの光に 涙を流している