電気なんてなかった時代 静電気の発光を 何だろうと思っていたのだろう 雷の赤ちゃん? 痺れは誰かの祟り? かまいたち? 得体の知れない 現象だったに違いない はて、僕がUFOを見たのを 未来の人間は証明してくるのだろうか
何時だって君は迷走 僕の熱帯魚をつかめないでいる 時の鳴門に埋もれてしまい 揺れるオーロラとなり 奇麗に尾を振りながら君は擬餌針 底の主も操れない固執 君は不自由な鱗の悲しみにより 未だに美しさ知らずの美しさを持つ 君は知らずの擬餌針 僕の熱帯魚をつかめないでいる
僕の気性は晴れたり曇ったり 世界の気象も晴れたり曇ったり 最近は天気予報が高い確率であたる 寒くなるとか暑くなるとか 傘が必要とか花粉が多いとか できたら僕の一日の気性も 予想してくれたら あらかじめ心得て過ごすのに 世界の気象は読めるようになるが 僕の世界は全く読めない
桜も濡らす雨 染み込む冷たさに身体を丸め 何処へ行くわけもなく 傘に落ちる疎らを聴き 弾く気持ちに同情しながら 街をふらついて 霞んだ一枚の絵になってしまう街 誰もいないほどに響く音 離れるほどに近づいてしまう自分へ
子どもの頃 練習機能のついた電卓があった ランダムで数字が出現してきて どんどん増えてしまう 全部埋まってしまえばゲームオーバー そうならないために その数字を押し消してゆく 巷では流行りわたしも買った 数年後、アルバイトのレジ打ちで 早打ちのジョーと呼ばれた 打つんだジョー!
蝕んでゆく身体 床に転がり仰向けになり 矢印みたいに両手をひろげ 調子が良かった頃を思い出す 垂らす涙はきっと汚れている わかっている 身体はすでに過去の輝き 握力のなくなっていく 左手は細く萎んで 捨てろ忘れろ消してしまえ 比べて僻む心など しかし 自分の中にある情けなさが 未練となり辛く重たくさせる 俺は終わりたいのだろうか 初めて吐く言葉に 自分の返答を待っている 脱力も見逃さぬ痛みの中 逃げの言葉は救う術を知らず 俺はまだ終わりたくなどない 誰にも見られたくない 何時もと違う立ち上がり方に 歯をくいしばっている こんちくしょうと吐き出し 一粒の錠剤を流し込み まだある意地が俺を保っている
脊椎は穴だらけ オモチャもそこに 入っているし さすがに三度の手術 もういいでしょう でも病室には もっと先輩がいて お前さんの脊椎なんて まだまだ、と ほらっ 歩けるだけましだ 俺の身体を 見ればわかるだろ お前は幸せなやつだ ああ先輩 リハビリ呼ばれてますよ 痛いの嫌なんだよ ごめん隠れる …………先輩 頑張りましょうよ
ねえ わたし 詩んでもいい ああ いんじゃねえ えっ そこは だめだよ って 止めるとこでしょ そうかあ そうは思わないから 俺も詩んでいるし うそっ それっ やばいじゃん ジャンル的に… おねがい そんなこと やめて あっ お前は俺に 詩んでもいい って訊いたよな でも… そうね わたしも詩のう
ほかの言葉を探したけれど 見つからない さざ波を眺め揺れる髪を とどめる指はしなやかに弧を描き 僕が彼女のそばに居ることが 信じられないほど自分が見窄らしいと 思っているのはたぶんその通り 夢ばかりみている僕は 現実の中では君を守れていないし 喜ばすことさえ上手にできていない でも君は美しく 何も言わずに手を握ってくれる 僕は内緒の涙を流しているけど 君は気づかない振りをしてくれる 夕陽がひろがり僕たちにたどり着き 君の微笑みに触れてみたら 頬は赤みをますほどに愛らしくて ふたたびさざ波へ視線をかえす 君は……