詩が空を飛び、雲をかき分け 心地よさを知り 何処までも行ける気がして しかし、詩は詩を傷つけ始め 言葉の羽根に疑問符ばかり付着させ 落ちてしまえば重たく空を見つめるだけ 自由を奪われた詩は 悲しみの涙に流されてしまう 飛ぶことも、立っていることも 許されずに孤独の溝を それでも綴らずにはいられない 苦の羽根になろうとも 詩の魂は言葉を越えようとする そして、裏切るのさ 空白だらけの羽根になろうとも 終わらない命題の元で 詩は匍匐しながらも進んで行く
みんなの魂は青だった 今まで知らないで 僕は自分の色も知らず ひとに寄り添えば 消えてしまう赤だった 澄んだ青は赤を嫌った 負の奇跡は運命か それでも生きたかった 僕は燃えて燃えた やっと青に消えぬ赤に 無邪気を装いつつ 僕は燃えに燃えて今が 無邪気を装いつつ 歯を食いしばり燃えた
雨が降ってきそうな 怪しい雲がもくもくと迫ってきています だけれども動けそうにありません 広場の芝生で横になり 平日の疲れはどんどん身体から 根っことして抜け出し芝生になりたいのです 僕はこのまま 人間として何もなかったように芝生となり ゆったりと移り気な空を見ていたいのです そんな気持ちわかりますか 椅子に五分と座っていられず 立っているのも五分と耐えられず 歩き出せば何とか耐えられる痛み 僕は今週も頑張りました 雲から零れる雨より先に涙が零れてきます どうしようもなく自分が可哀想で だから僕はこのまま 人間として何もなかったように芝生となり ゆったりと移り気な空を見ていたいのです そんな気持ちわかりますか
詩を書くことは 詩を書くことでない 自分をどれだけ 滲み出すか に、かかっている 自分と自分が闘って どれだけ自分を完成できるか に、かかっている 詩を晒した時 もうひとつの闘いがある 敗れて粉々になる言葉 に、笑えばいい 詩を書くことは 詩を書くことでない
どうしても 行かなくてはいけない 場所があった 風が吹き終わる場所 三丁目にある真っ暗な喫茶店 ドアが開く音でオーナーが いらっしゃいませ、と 低い声を響かせる ドアが閉まると テーブルも椅子も 見えなくなってしまい 手探りで席につこうとする オーナーの姿は 未だ見たことがない コーヒーのいい香りはするが テーブルに置かれたカップを いつも指を引っ掛けて こぼしそうになる しかし美味い 実に美味いコーヒーである 香り深み温度と 陶器の口触りから流れ 魅惑へ誘(いざな)ってくれる 見えない店内の 見えないコーヒーを飲む 情報は限りなく少なく 時間とコーヒー 今日もここへ来てしまう
中学一年生の時 僕は初体験をした と、言っても 初めて女子に殴られた って、話だ 授業中 ちょっとしたことで 口論になって いきなり教科書が 頭に落ちてきた でもなんだろう まったく痛くない 怒りもない 僕に苦笑いをさせる 初めての女子を知った
明日はわかっている たぶん生きていて 何時ものように 風が冷たいとか 身体が痛むとか たいして頑張って いないのに 俺はどれだけ 頑張っているんだ なんて思うのだろう 明日はわかっている たぶん生きていて 何時ものように さほど変わらない 自分で流れて そんなところで 安心しながら へらへら笑い 平凡を味わって たぶん生きている
僕は何色にも染まることができる ただほかの色に混ざると身体も心も 変わってしまいもとには戻らない 友だちはつぎつぎにほかの色に染まり おとなになってゆくのさ ひとりの僕はあせっている だけどこのままでいたい なぜなら僕はこの色が好きだから
- 命日 - 林の中では すでに線香が焚かれ 花に囲まれた彼は 照れ笑いをしていた お互いに 「献杯」とビールを飲む 私は 「俺はまだ死んでないよ」と 彼のひょうきんな性格は あの世にいってもかわらない 生前に静かなところで 眠りたいと言っていた彼は 林の中で暮らしている