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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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虹の作業員 7 (全10編)

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≡ 7 ≡



わからない約束のことを考えながら作業員は歩いた
私の約束って何?
それは本当に虹をつくることなのだろうか?
雲の上にくる前の約束?
そんな大事な約束を忘れてしまったのだろうか?
オゾン層の修復作業員にとって約束の内容はないようだった
作業することがその答えのように言っていた
何がそうさせているのだろう
私は虹の作業員
それでいいのだろうか?
それしかないようだが
それでいいのだろうか?

「コケッ、コッ、コッ、コッ、コォー」
短い羽をバタバタさせて一羽のにわとりが突然、雲の上にやって来た
「にわとりさんって、飛べるのですね」
作業員は驚いて言った
「飛んではいけないって言うの!」
にわとりは言葉を使い話しだした
「いや、そんなことはないですけど……」
だけど、どうしてにわとりさんはこんな高いところまで来たのですか?」
「どうしたもこうしたもないわよ。あなたが呼んだのよ」
「私がですか……」
「約束を思い出したいのでしょ?」
「そうですけど……。約束を思い出すことと、
にわとりさんを呼ぶことが繋がらないのですが」
「そんなことはどうでもいいの。約束を思い出させるのがミーの仕事。
雲の上と下界をむすぶメッセンジャーなのよ。いい仕事でしょ」
「では、私の約束って下界の人間との約束なのですね?」
「こんな鈍い作業員は初めてよ! まあ、それはいいとして。
約束のシーンを見に行く、行かない?」
にわとりは羽をバタバタさせて返事を急かした
「もちろん、お願いします」
「ああ、そうそう。下界で見たことは雲の上へ戻ると、すべて忘れてしまうわ。
だからって、私の仕事をインチキなんて言わないでよ。
これが下界へ行くための条件よ」
「それでは雲の上に戻ってくると、約束を忘れて私の疑問は続くのですね」
「そんなことミーの知ったことではないわ。
行くんだったら、羽に触れて。あなたのからだは下界に行かないから、
ミーのからだを使ってその約束、教えてあげるのよ。
さあ、どうするの?」
作業員は恐る恐るにわとりの羽に触れた
「うおーっ、落ちるー!」
作業員がにわとりに触れた瞬間、目の前には街が広がっていた
「意外と面白いでしょ。なかなか経験できないんだから。
あなたはラッキーなのよ」
にわとりの声は作業員にはっきりと聞こえていた
「ぜんぜんラッキーじゃないですよ! 死ぬー!」
「今さら何を言っているのよ、雲の上の作業員が」
「ぶつかるー、コンクリートだろっ、あそこは!」
「大丈夫よ、ミーはコンクリートも突き抜けちゃうんだから」
「バカなーー! %$#~_?!” %$$」
「ねえ、大丈夫だったでしょ。目を開けてみなさい」
「はあー、びっくりした。で、ここは?」
「病室を天井から覗いているのよ」
「病室?」
「そうよ、あなたが入院した病室よ」
「……」
作業員はベッドに寝ている男性を見た
それは作業員本人であった
「私は病気をしていたのですね」
「そうよ」
「ずいぶん顔色が悪くて頬がこけてるな」
「誰か、入ってくるわ」
病室のドアは開き、作業員の妻と息子が入ってきた
「あなた、具合はどう?」
明るく振る舞う妻は言った
「ごめんな、かなえ。こんなことになってしまって。
かなえと信也に出会えてほんとうに幸せだったよ」
「何を言っているのよ、あなた……、私だって……」
「パパ、死んじゃうの?」
「そうだよ、信也。
でもパパがいなくなっても悲しいことなんて、何ひとつないんだよ。
パパは信也とママを雲の上からいつも見ているからね。
そして、雲の上でふたりのために虹をつくっているから、
たまにきれいな虹を見せてあげるからな!」
「パパ、ほんとうに雲の上で虹をつくってくれるの?」
「ほんとうにだよ!」
「約束だよ!」
「絶対に忘れないよ、信也とママとの約束だから」
作業員は息子と妻への約束を思い出し、心が熱くなるのを感じていた
にわとりはしばらく黙って、作業員に病室の様子を見せていた
そして、クシュンクシュンと二回くしゃみをすると「時間だわ。帰るわよ」言った
「信也、かなえ、ありがとう。パパは幸せだってよ。元気でいろよ!」
作業員の聞こえない声とともに、にわとりは病室を抜けて空へ上がっていった
「雲に着くと、今見た記憶はすべて消えてしまうから、心に焼きつけておくのよ」
にわとりが力強く言った
「もう大丈夫です。
記憶がなくなっても心が繋がっているから、二度とこの気持ちは忘れないです。
にわとりさん、ほんとうにありがとうございました」
「あら、なかなか謙虚ね。
この間の作業員は現場に連れて帰ろうとしたら、
記憶がなくなるなんてお前はインチキンだ!
って、ダジャレを言いながら怒鳴りまくって大変だったのよ」
「インチキンですか、面白いことを言う作業員がいますね」
「ぜんぜん、面白くないわよ。ほら、もう雲の上よ。
自分のからだに戻ってもらうからね」
にわとりはそう言うと、作業員の頭にとまった
「ふうー、戻ったみたいですね」
作業員は手で自分の頭や胸を触りながら言った
「どう、何も覚えていないでしょ?」
「いえ、覚えています」
「えっ、記憶が消えてないの?」
「大事なことは覚えています。内容はわすれましたけど。
私の心が虹を一生懸命につくることは忘れていません」
「びっくりさせないでよ、まったく。
もうあなたに会うことはないからね。作業員が私を使えるのは一度だけ。
それにしても今回はいい話だったわよ!」
「いい話だったのですね。私は虹の作業場に戻って虹づくりに専念します」
「そうね。では、さよなら」
「にわとりさん、ありがとう」



続く。。。

#虹の作業員 #詩

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虹の作業員 6 (全10編)

thread
≡ 6 ≡


作業員はオーロラの作業員と出会って
思いついたことがあった
それは旅に出ること
目的があるわけではないが
オーロラの作業員のように旅をしたくなった
作業員は旅の間は虹をつくらないと決め
バケツは事務所の金庫
虹のことは考えたくなかった
流線型の雲はないけれど
雲の上を歩いて行こうと思った
作業場の柵を乗り越えて旅は始まった

歩き始めて五時間が過ぎた
薄くなった雲の上を慎重に進む作業員がいた
のどが渇き薄い水蒸気を手で集め
水滴を口にした
「うーん、ここの水蒸気はよくないな。
空気が汚れているからだ。水がおいしくない」
きっと下界には煙をたくさん出す大きな工場があるのだろう」
「その通りだよ。俺はオゾン層の修復作業員だ。あんた誰?」
突然、雲のすべり台からタンクを背負った体格の良い青年が降りてきた
「いやっ、びっくりした……。私は虹の作業員です。初めまして」
「初めましてじゃないよ。危ないから、この辺をウロチョロしていたら」
オゾンの作業員は腕を組み、えらそうに言った
「どうしてですか?」
「この上のオゾン層に大きな穴があるんだぜ。
穴はずっと上にあるからこのすべり台を使って
そこまで行って修復作業をするんだよ。
まあ、あんたじゃこの作業はむりだろうな。
空気はほとんどなくなるし、なんせ足腰が強くないと務まらない」
修復作業員は自信満々に言った
「へえー、すごいですね修復作業員さんは。
ところで背中のタンクはなんですか?」
「あー、これはオースリーだよ。
オゾンの濃縮されたものが入っていて、これをオゾン層の穴に吹きかけるんだよ。
ちなみにこのタンクは何キロくらいあると思う?」
「んー、五キロくらいですかねー」
「ははぁ、笑っちゃうね。そんな重さじゃ一センチ四方も修復できないよ。
二百キロだよ」
「えっ、二十キロの間違いでは?」
「なかなか信じてもらえないようだな。背負ってみなればわかるよ。
あんたがこれを背負ったらつぶされるだろうな。
俺が背負っている状態でタンクを持ち上げてみな。
一センチでも持ち上げたらこの作業をあんたにゆずってあげるよ」
「いやいや、私には到底オゾン層の修復作業などできそうにないです。
だけど、タンクを持ち上げてることはチャレンジしてみます」
作業員は修復作業員の背に回り、タンクをもちあげようとした
「くぅー、はぁはぁ。一ミリももち上がらない」
「だろう! 俺ってすごいだろ。
この作業がたいへんなのがわかってもらえてうれしいよ」
「かなわないですよ、修復作業員さんには。
だけど、どうしてそんなに危険な作業をしているのですか?」
「ああ、約束したんだよ」
修復作業員は強い口調で言った
「えっ、誰とどんな約束を?」
「それがまったく覚えていないんだよ。
でも俺がここへ来る前に誰かと約束したんだ。
どんな約束かも忘れてしまったけど、
オゾン層の修復をすることっていうのはピンときたんだよ」
「約束……」
「そう、約束だよ。
俺はオゾン層の修復作業員、必死になって作業するだけさ」
作業員は修復作業員の言葉にハッとし、班長の言葉と重なって聞こえた
「えらそうなことを言ったけど、俺はまだなっちゃいない。
すべてのオゾン層を修復するつもりでこれからも作業、進めるよ。
俺には虹をつくる芸術性がないからさ。
まあ、お互い約束を果たすために作業しようぜ」
「ありがとう。私は行き詰まって旅に出たけど、君に会えて元気をもらいました」
「なんだよ、そんな恥ずかしいこと言わないでくれよ。
俺も久しぶりに話ができて楽しかったぜ。
それじゃ、もういっちょのぼってくるから、さよなら」
「ありがとう、さよなら」
作業員は修復作業員が雲のすべり台をのぼる姿を見て頼もしく思い、
そして羨ましかった
それから作業員はどんどん東へ向かった

#虹の作業員 #詩

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浪曲子守唄

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「逃げた女房にゃ未練はないが
お乳欲しがるこの子が可愛い」

夜中に食器を洗いながら
浪曲子守唄を歌っている自分
家事で辛いなんて思った時に
つい歌ってしまう

「子守唄など苦手な俺だが
馬鹿な男の浪花節
一ツ聞かそかねんころり」

#詩

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虹の作業員 5 (全10編)

thread
≡ 5 ≡


「あなたは虹の作業員?」
どこからか作業員を呼ぶ声が聞こえた
「誰だい、こんな朝早く私を呼んでいるのは?」
作業員がパッと目を覚まし、辺りを見回すと流線型の雲にのる女性がいた
「おはよう、私はオーロラの作業員よ。今、北極から南極へ移動中なの、
そこで少し休ませてもらっていい?」
「私は虹の作業員。本社以外の訪問者は初めてです。
どうぞどうぞ、休んでいってください。
おいしい水蒸気を集めた水を飲んでいってください」
「ありがとう。お言葉に甘えて」
オーロラの作業員は自分の雲を静かに直陸させた
「初めまして、虹の作業員さん!」
オーロラの作業員は波状のカラフルなドレスをゆらし、雲から降りる姿は美しかった
「初めまして、オーロラの作業員さん!」
「そうね、作業員っていうのは省略して、虹さん、オーロラさんで呼ぶことにしない?」
「かまいませんよ」
「では虹さん、さっそくですが、お水をいただけない?」
「オーロラさんはとてもフレンドリーな方ですね。
ゆっくりしていってください。今、水蒸気を集めてきます」
そう言って作業員はバケツをもって、水蒸気を追いかける
美しい訪問者にワクワクしながら
あっち行って、そっち行って、水蒸気を追いかける
三分ほどでコップ一杯の水が集まり、オーロラの作業員へ手渡した
「どうぞ、お飲みください」
「わぁー、おいしそう。水がキラキラ光っているわ。これが虹をつくる秘訣なのね」
オーロラの作業員は小さくのどを鳴らし、水を飲んだ
「どうですか?」
「こんなおいしい水を飲んだのは初めてよ。半年後に、またここへ寄らせてね」
「ぜひとも、お寄りください」
「ありがとう」
オーロラの作業員は微笑んだ
「オーロラさんに訊きたいことがあるのですが?」
「答えられるかわからないけど、言ってみて」
「オーロラさんの作業場に班長様っていますか?」
「そうね、かつてはいたけど。記者会見から帰ってきたら……」
「記者会見って、下界での?」
「そうよ。金色のオーロラをつくったときテレビ中継され、
下界で話題になって記者会見したの。だけど記者会見から帰ってきたら
班長はいなくなっていたのよ」
オーロラの作業員は悲しげに言った
「そうだったのですか。私も百二十色の虹をつくり昨日、
記者会見をして帰ってきたら班長様はいなかったのです」
「ふーんそうなの、同じね。だけど大丈夫よ、
虹さんはこんなにおいしい水をつくることができるのだから、
きっと班長も安心してどこかで笑っていることでしょう」
「ありがとう、オーロラさんはやさしいのですね。
でも、班長様の笑っている顔は見たことないですけど」
「それ、よくわかるわ。同じ、おかしいわね」
「わはははっ、はははは……」
「うふふふっ、ふふふふ……」
ふたりの笑い声は青い空に響いていた
「では、そろそろ南極へ向かわなくては。虹さん、おいしい水をありがとう。
また、会いましょうね」
「もちろんです。気をつけて南極へ行ってください。お元気で、オーロラさん」
「虹さんも」
オーロラの作業員はそう言って流線型の雲にのり、旅立った
虹の作業員はいつまでも大きく手を振っていた



続く。。。
#虹の作業員 #詩

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虹の作業員 4 (全10編)

thread
≡ 4 ≡


星が輝きを下界に降らす頃、作業員は雲の上に帰ってきた
記者会見で疲れた作業員だったが、班長に報告するため高台へ向かった
「班長様、どこにいるのですか?」
歩くこともできない班長が、いつもの高台にはいなかった
「班長様! どこに……」
あっち行って、そっち行って、こっち来て
もう足が動かなくなるくらい班長を捜した
そして、作業員は本社の人間の言葉を思い出していた
《あいつは口しか動かない三十年後の君だろ。
もう辞めてもらうことは本社で決まっている!》
《もう、君と会うことはない》
作業員は考えていた……

班長様は本社の人間にどこかへ連れて行かれたんだ
私の三十年後が班長様だなんて、わけのわからないことを言って
本社はもう班長様と私が必要ないんだ
きっとそうなんだ
本社の人間はやはり人間
私は雲の上の作業員
何を信じればいいのか
それにひとりぼっちになってしまった
私はこれからどうすれば……
もう、水蒸気を集める気もしない

班長を見つけることのできなかった作業員は、
疲れた足を引きずり再び高台へ向かった
班長の立っていた高台にのぼり、胸に手をあてた

「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
作業員には確かに班長の声が聞こえた

「班長様さま!」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「班長様、私はどうしたらいいのかわかりません。もう虹なんてつくりたくありません」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「班長様は今、どこにいらっしゃるのですか?」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「班長様、どうしたら……」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「…………」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「…………」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」

「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」

「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」

「はい」

その夜は天の川がキラキラ流れて
作業員はひとつの想像をしていた
あそこには天の川の作業員がいて
一生懸命に星くずを集めていると
天の川を眺めてはひとときの癒し
疲れた心とからだを夜に委ねては
雲の上で大きな寝言は消えてゆく



続く。。。

#虹の作業員 #詩

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iPad

thread
落ちた赤い秋を踏みしめて
この手に包むiPad
刻まれた詩はみな消えてゆく
生きていることの自然
それでも、そんな言葉は要らない
ただ歌えばいい、軽やかに
しがみつく枝はなくなり
ひらひらと落ちてゆくを受け入れ

なかったことにではなく
あったように消えればよい
この手に包むiPad
刻まれた詩はみな消えてゆく

#詩

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虹の作業員 3 (全10編)

thread
≡ 3 ≡



下界の記者会見場に作業員はいた
床に置かれたカメラが一台
眠っている新聞記者がひとり
ライトがあたらないところに本社の人間
作業員に質問するレポーターがひとりいた

「この度は百二十色の虹、おめでとうございます。
早速ですが、質問をさせていただきます。
百二十色の虹をつくる秘訣を教えてください」
レポーターが早口で言った
「……えぇ……、班長様の指示通りに、一生懸命に水蒸気を集めました」
緊張している作業員は唇を震わせながら言った
「一生懸命ですか。こちらでは三十年ぶりの百二十色の虹が
素晴らしいと大フィーバーしています。それをどう思いますか?」
「うれしいです。みなさんに喜んでもらえて」
「今後の作業員さんの夢はなんですか?」
「……まだ私は虹をつくり始めて一ヶ月なのでわからないことばかりです。
一生懸命に水蒸気を集めるだけです」
「そうですか。三十年前に百二十色の虹をつくられた
作業員さんのことはご存知ですか?」
「いえ、知りません」
「今の記録を更新することはお考えでしょうか?」
「いえ、私には……。記録のために虹づくりは……」
「では、作業員さんは何のために虹をつくっているのですか?」
「ひとりぼっちじゃないってことでしょうか……」
「もうすこし詳しく教えてください」
「私の作業場には班長様がいて、とても怖いですけど
ふたりで作業するのが楽しいってことです」
「はぁー、そうですか。
しかし、噂によるとその班長は口しか動かないのですよね?」
「そうです」
「その班長がいてもいなくても何も変わらないのでは?」
「私も最初はそう思いましたが、そうではないのです」
「どういうことでしょうか?」
「よくわかりませんが、班長様は私のことをよくわかっていて、
班長様がいれば私はひとりぼっちではないということでしょうか」
「班長が心の支えになっている。と、いうことでしょうか。
本日は質問にお答えいただき、ありがとうございました。
今後の作業員さんのご活躍を期待してます」
「いえ、いえ、こちらこそありがとうございました」

記者会見が終わると、本社の人間が作業員に歩み寄ってきた
「んー、何とかこなしたって感じだね。
君のフレッシュさが我が社の宣伝になったようだ。
ただ、班長の話はいらなかったねえ。
今回はお疲れ様だった。もう、君と会うことはない、残念だがね。
君が帰る雲を屋上に用意しているから、それで帰りなさい」
作業員は不思議そうな顔で話を聞いていた
そして、雲にのった作業員は下界の様子を見下ろした

高層ビルの明かり
連なる車からクラクション
屋形船の提灯
月の光が海にゆられ
いつか見ていた夜に吸い込まれてゆく
この下界には想い出がいっぱいあった
それをすべて忘れていた
作業員は自分ののっている雲の水蒸気を集め
下界にすこしの雨を降らせた



続く。。。

#虹の作業員 #詩

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浮浪雲

thread
風に吹かれ雨に打たれ
僕は此処で何を

しがみつくこともなく
ぷかぷかぷかぷかか

時に乗れずひとに慣れず
ひらひらひらひらら

それでも
誰か見てくれ僕のことを
寂しさには耐えられそうにない

僕のステップは何処かで狂って
足跡ばかり消し始めていた

ひとりぼっちの僕が泣いている
自分の道が濡れている

どれもこれも僕の仕業なのに

#詩

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虹の作業員 2 (全10編)

thread
≡ 2 ≡



作業員が雲の上に来て一ヶ月
百三色の虹がひとつ
百十色の虹がひとつ
百十八色の虹がひとつ
百二十色の虹がひとつ
つくることができた

百二十色の虹は三十年ぶりのことであった
下界からは拍手が竜巻にのって舞い上がって来た
作業員はその拍手を聞いて、雲の上を走り回り大喜び

「こんなにうれしいことは初めてだ! わたしはここへ来てよかった!」
作業員は叫びながら、雲でつくられた高台に立っている班長のもとへ走った
「班長様、下界の拍手を聞きまし……?」
「…………」
「どうして班長様は、涙を流しているのですか?」
「…………」
「今、本社の人間が来ている。お前を事務所で待っているから、行け!」
班長は涙さえ拭けずにいた
「はい」
作業員は「失礼します」と言って、班長の涙を拭き事務所へ向かった

事務所に入ると、背広を着た本社の人間がいた
「君がここの作業員だね?」
「はい、そうですが……」
「えー、先週我が社で発売した百二十色の虹が、
下界では評判となり誰が水蒸気を集めたのか、問い合わせが殺到した。
だから、君には下界で記者会見に応じてもらうことになった」
「えっ、私がですか? それなら班長様が記者会見に行くべきだと……」
「なにを何を言っているんだ、君は! あいつは口しか動かない三十年後の君だろ。
もう辞めてもらうことは本社で決まっている!」
「……えっ、それはどう言うことなのでしょう?」
「んー、聞かなかったことにしてくれ。
雲の上では未来のことを話してはいけないことになっている。
そんなことより、君を下界の記者会見会場に連れて行く。
はやく、あの雲に乗りなさい!」
本社の人間は小舟のような雲を指さした
「……私は班長様で……班長様が私……、どうなっているんだ……」
「いいから、早く乗りなさい!」
「は、はい」

作業員がその雲に乗ると、夜空には一番星が輝いた



続く。。。

#虹の作業員 #詩

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悩み苦しみからの選択肢

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人生の主役が自分であるかのように日々を過ごす。痛みも苦しみも喜びも自分が体験しているのだから、このドラマの主役が他人であるわけがはない、と。しかし、人生っていうのは脚本などないのだから、いつ何処かで心境の変化が起こってしまうのだから面白い。実際、私の場合も変わりつつある。ただ、歳をとったのだろう、そんな話なのかもしれないが気づきを綴って行こうじゃないか。

死ぬほど悩み苦しんだ者には、本人でしかわからない心根がある。痛みなら耐えられず、悩みなら耐えられず、愛足らずして自愛する心が深層へ向かう。どうしようもない孤独がそうさせてしまうのだから、浮上する発想すら消える厄介。しかし、其処から抜け出そうとする。耐えられないからだ。「誰か助けて」と、自分を生かすための自然な言葉を発する。また、このドラマさえ自ら終わらせてしまおうとする「死」の扉へ。

脱出の選択肢はふたつしかないと思っていたが、最近はもうひとつあることに気づいた。苦しみからの完全なる解決策ではないが、人生というドラマの脇役で生きるという発想だ。簡単にいえば「自分をそんなに愛さなくてもいいんじゃねえ」という感覚だろうか。自分はこうでなくてはならない、自分はこんなはずじゃないとか、その執着を全て捨てることはできないが、なるべく捨てられる執着は投げてみる。「そんなことをいってもやはり自分が可愛いから無理だよ」となるかもしれないが、「たいして自分は可愛くない」と諦めてしまえればかなり楽になる。たいして可愛くない自分が、救ってくれることもある。自分への視点をズラしてみると、それもけっこう面白い人生になるのではないだろうか。捨てることは、拾うことなのかもしれない。この気づきが最近の収穫だ。

ああ、秋だからなあ。

#詩

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