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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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贈呈本

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重なる想いと付け足される想い
贈られてきた詩集のページをめくる

有難いことに詩集を頂くことが多くなり
多角視野による詩人の凝縮されたエネルギーを
自分なりに解凍する楽しみを覚えた
しかし詩を書くことと同じように
読み砕いていくという自分のセンスが問われる
自由というのは楽しみにいつも厳しさが伴う

まずは先入観を捨て受け入れる
パッと字列の風景を見て決めてはいけない
自分のキャンパスはなるべく白くして
描かれ易くしておかなければ

すると和紙に染み込むように
滲みながら重なる想いが感情を動かす
すでに文字を追っている感覚はなく
読者が創る自由度の高い芸術であり
文字が文字でなくなるのが詩の世界だ

だから楽しいだけではない
厳しさがそこにあるから詩の魅力に囚われ
詩を読むことに覚悟が持てるのである

有難き機会に溺れるのも良い

#詩

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時の鐘

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時の鐘
用事を済ませ小江戸の川越へ


#詩 #雑記

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夜の第二公園

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夜のブランコが飛んで行く
僕の僕を振り落とし
滑り台は腰を持ち上げて
遊園地への旅に出発したのさ

棒倒しの棒が見つからず
仕方なく僕が棒になっちゃった
削られる足元からは
隠したはずのテストが現れる

「なにもない世界ってどんな感じですか
夜に聴いてもいいですか」


鉄棒は丸く輪になっては
手招きして軽くステップをして溶けた
ジャングルジムはひっくり返り
クルクル回れば潜って消えた

砂場はさよならも言わずに
風に紛れて誰かになっちゃった
遊具のない公園には
落書きされた上履きが一足

「なにもない世界ってどんな感じですか
そこは僕の行くところですか 」

#詩

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ホットの感を

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僕はホットの缶コーヒーを探している
まだ自動販売機にはないが
もしかしたらあるかもしれないと

襟足からスッと入る冷たさ
探してしまうのは季節のいたずら
まだ探しているのは僕の余裕のなさ

今日も行く何処へ行く仕事に行く
課せられた作業へ重たき足で突っ込んで行く

#詩

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秋の香り

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みんな、向かっている

コーヒーを啜り
数分後には私もそちらへ
ふと、何のために働いているのだろう
乾いた空気に香りだけが流れている

チラッと視線が合う見知らぬひとに
無言の催促を感じて

ドアを押せば
疑問は香ばしき哲学の風
根源を覗かされても乗り切れない
乗ってしまったら踵を返してしまう
上手くいく一日を願い
安全という人生に従いながら

辻褄を合わせない季節の中
彷徨える衣を掛けられ
私の容器は螺旋で満たされてゆく

けして悪くない季節
人間らしくのらしくの風が吹き
深み嵌ってゆく思考は
微かにユーモアの香りが混ざって

#詩

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青く

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感じたい
もっともっと青い空を

重たくなったこころ
持ち上げて散らして欲しい

何処にいるのかさえ分からないくらい
青く 青く 青く

初めて空になりたいと思った
知らぬことばかりのまま
いつまでも吹き続ける青のように

#詩

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虹の作業員 10(全10編)

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≡ 10 ≡


「あっ、虹だよママ。パパがつくった約束の虹!」

「そうね。とってもきれいね!」


おしまい。。。

#虹の作業員 #詩

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虹の作業員 9(全10編)

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≡9≡


水蒸気をバケツで集め、休む暇もない
虹の作業員は近頃忙しい
雲の上ですってんころりん
笑って楽しい雨を降らせている
たまに威張って指示する班長に叱られながらも
あっち行って、そっち行って、水蒸気を追いかける

「班長様、あなたも水蒸気集めを手伝ってください」
「バカを言うな、俺は班長だぞ!」
「そうでした。あなたは班長様、失礼しました。
でも、汗をかくって気持ちいいですよ」
「……汗をかくのは気持ちいいか、俺様も水蒸気を集めるぞ!」
「今日は班長様、どうなされたのですか?」
「俺様は最近、からだが動くようになったんだよ!」
「でも、無理をなさらないほうが……」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「はい」
班長の大きな声に作業員はすってんころりん
雲の上に仰向けになると厚い雲に覆われた
作業員は班長から叱られるとドキドキしてしまうので
すぐに立ち上がり、また水蒸気を集めはじめた
「汗をかくのは気持ちいいな!」
「そうですね、班長様」


続く。。。

#虹の作業員 #詩

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虹の作業員 8 (全10編)

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≡ 8 ≡


旅から帰って一年が経つ
作業員はバケツをもって走り回っている
そして昨日、百二十色の虹をつくることができた
しかもその虹は三重
大きな虹の中にまた虹があって
その虹の中に小さな虹
見たことのない虹に誰もが喜んでいた
作業員も大満足

そんな作業員のもとに本社の人間が再び現れた
「君は未来を変える才能をもった作業員だね。
もう、ここへは来ないつもりだったが……。
下界では今、君のつくった虹で大フィーバーしている。
また、記者会見に応じてもらう」
「もちろんです」
「それと君にとってはうれしいニュースがある。
班長は我が社に復職することが決定した。
記者会見を終えて作業場へ戻って来たときには、班長もいることだろう。
さあ、下界ではみんなが君のことを待っているから、すぐに出発だ」
「はい」


続く。。。

#虹の作業員 #詩

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虹の作業員 7 (全10編)

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≡ 7 ≡



わからない約束のことを考えながら作業員は歩いた
私の約束って何?
それは本当に虹をつくることなのだろうか?
雲の上にくる前の約束?
そんな大事な約束を忘れてしまったのだろうか?
オゾン層の修復作業員にとって約束の内容はないようだった
作業することがその答えのように言っていた
何がそうさせているのだろう
私は虹の作業員
それでいいのだろうか?
それしかないようだが
それでいいのだろうか?

「コケッ、コッ、コッ、コッ、コォー」
短い羽をバタバタさせて一羽のにわとりが突然、雲の上にやって来た
「にわとりさんって、飛べるのですね」
作業員は驚いて言った
「飛んではいけないって言うの!」
にわとりは言葉を使い話しだした
「いや、そんなことはないですけど……」
だけど、どうしてにわとりさんはこんな高いところまで来たのですか?」
「どうしたもこうしたもないわよ。あなたが呼んだのよ」
「私がですか……」
「約束を思い出したいのでしょ?」
「そうですけど……。約束を思い出すことと、
にわとりさんを呼ぶことが繋がらないのですが」
「そんなことはどうでもいいの。約束を思い出させるのがミーの仕事。
雲の上と下界をむすぶメッセンジャーなのよ。いい仕事でしょ」
「では、私の約束って下界の人間との約束なのですね?」
「こんな鈍い作業員は初めてよ! まあ、それはいいとして。
約束のシーンを見に行く、行かない?」
にわとりは羽をバタバタさせて返事を急かした
「もちろん、お願いします」
「ああ、そうそう。下界で見たことは雲の上へ戻ると、すべて忘れてしまうわ。
だからって、私の仕事をインチキなんて言わないでよ。
これが下界へ行くための条件よ」
「それでは雲の上に戻ってくると、約束を忘れて私の疑問は続くのですね」
「そんなことミーの知ったことではないわ。
行くんだったら、羽に触れて。あなたのからだは下界に行かないから、
ミーのからだを使ってその約束、教えてあげるのよ。
さあ、どうするの?」
作業員は恐る恐るにわとりの羽に触れた
「うおーっ、落ちるー!」
作業員がにわとりに触れた瞬間、目の前には街が広がっていた
「意外と面白いでしょ。なかなか経験できないんだから。
あなたはラッキーなのよ」
にわとりの声は作業員にはっきりと聞こえていた
「ぜんぜんラッキーじゃないですよ! 死ぬー!」
「今さら何を言っているのよ、雲の上の作業員が」
「ぶつかるー、コンクリートだろっ、あそこは!」
「大丈夫よ、ミーはコンクリートも突き抜けちゃうんだから」
「バカなーー! %$#~_?!” %$$」
「ねえ、大丈夫だったでしょ。目を開けてみなさい」
「はあー、びっくりした。で、ここは?」
「病室を天井から覗いているのよ」
「病室?」
「そうよ、あなたが入院した病室よ」
「……」
作業員はベッドに寝ている男性を見た
それは作業員本人であった
「私は病気をしていたのですね」
「そうよ」
「ずいぶん顔色が悪くて頬がこけてるな」
「誰か、入ってくるわ」
病室のドアは開き、作業員の妻と息子が入ってきた
「あなた、具合はどう?」
明るく振る舞う妻は言った
「ごめんな、かなえ。こんなことになってしまって。
かなえと信也に出会えてほんとうに幸せだったよ」
「何を言っているのよ、あなた……、私だって……」
「パパ、死んじゃうの?」
「そうだよ、信也。
でもパパがいなくなっても悲しいことなんて、何ひとつないんだよ。
パパは信也とママを雲の上からいつも見ているからね。
そして、雲の上でふたりのために虹をつくっているから、
たまにきれいな虹を見せてあげるからな!」
「パパ、ほんとうに雲の上で虹をつくってくれるの?」
「ほんとうにだよ!」
「約束だよ!」
「絶対に忘れないよ、信也とママとの約束だから」
作業員は息子と妻への約束を思い出し、心が熱くなるのを感じていた
にわとりはしばらく黙って、作業員に病室の様子を見せていた
そして、クシュンクシュンと二回くしゃみをすると「時間だわ。帰るわよ」言った
「信也、かなえ、ありがとう。パパは幸せだってよ。元気でいろよ!」
作業員の聞こえない声とともに、にわとりは病室を抜けて空へ上がっていった
「雲に着くと、今見た記憶はすべて消えてしまうから、心に焼きつけておくのよ」
にわとりが力強く言った
「もう大丈夫です。
記憶がなくなっても心が繋がっているから、二度とこの気持ちは忘れないです。
にわとりさん、ほんとうにありがとうございました」
「あら、なかなか謙虚ね。
この間の作業員は現場に連れて帰ろうとしたら、
記憶がなくなるなんてお前はインチキンだ!
って、ダジャレを言いながら怒鳴りまくって大変だったのよ」
「インチキンですか、面白いことを言う作業員がいますね」
「ぜんぜん、面白くないわよ。ほら、もう雲の上よ。
自分のからだに戻ってもらうからね」
にわとりはそう言うと、作業員の頭にとまった
「ふうー、戻ったみたいですね」
作業員は手で自分の頭や胸を触りながら言った
「どう、何も覚えていないでしょ?」
「いえ、覚えています」
「えっ、記憶が消えてないの?」
「大事なことは覚えています。内容はわすれましたけど。
私の心が虹を一生懸命につくることは忘れていません」
「びっくりさせないでよ、まったく。
もうあなたに会うことはないからね。作業員が私を使えるのは一度だけ。
それにしても今回はいい話だったわよ!」
「いい話だったのですね。私は虹の作業場に戻って虹づくりに専念します」
「そうね。では、さよなら」
「にわとりさん、ありがとう」



続く。。。

#虹の作業員 #詩

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