なんだか指が痛い。 穴が小さく、針を通すのに押し込む、押し込む。 今の課題は穴だ。 釘を打ち付けて穴をあけているが、 紙が底で押され膨らむ。 上から下から打ち付けて、なんとか形になるが、手間がかかる。 うーん、電気ドリルを今度、使ってみよう。 ただ、相手が紙なのでどう反応するかな。 ふーう、今日はこのへんんで終わろう。
天気のように 晴れたり曇ったり雨降ったり 身体の調子も日々違って 今朝は軋む脊椎 こんな時は強引に イヤホンを突っ込んで 粋なロックを自分に聞かせる えっ、なんで と、自分の行動に驚きながら リズムが精神を揺さぶってくる いいじゃん、いいじゃん ボロボロでいいじゃん 歩けるんだろっ 字が書けるんだろっ そうだ、俺の可能性が 消えたわけじゃないんだ イケる、まだまだイケるんだよ 弱っちい自分よ 拳を高く上げてみろよ 空だって そんなに卑屈な感じじゃないぜ さあ、行け自分 さあ、天気なんて自分次第だ 終わらねえぜ、自分
最近よく言われる 「そんなに急がないで」と 私はどうも落ち着きがないようだ 何かに没頭してしまうと 矢印のように突っ走ってしまい 大人のゆとりがないというか どっしりと腰を据えていないというか とてもダンディとはほど遠い 何がそんなに私を急かすのか たぶん身体が影響をしているのだろう 手があとどれぐらい動くのか 足はどれぐらい動くのか 時間がない グズグズしていると表現しきれずに 終わってしまうと考えるからだ 痛みと痺れを感じながら生きていると 今のうちにやらなければという精神が 私の表現活動に影響する 自分を仕上げなければ 完成して終わらせなければ タイマーがカチカチと何々しなければと尻を叩く そんな私にも精神と身体が眠ってしまい 起き上がれない時があって 世界を止めてしまうのんびりが襲う 厄介なとても厄介なバランスの悪さ でもそれが自分らしいことに気付いて 少し楽になれた気がしている 下手くそに生きるのが私なのだと もう諦めて進んで行こう 後もどりする時間は残されていない
卑屈な重力を持つ教室 窓から飽きるほどの時間を眺め 椅子にカラダを落としていた 彼はあれから どんな人生を送ったのだろう 中学生の頃から 随分と月日が経ってしまった ソリコミから汗が滲みると ハンカチを当てながら痛いという 革鞄の薄さを自慢 ボンタンのタックを深く深く ツッパリを着飾る (ボンタン : 変形学生ズボン) そして 黒マスクの下はあざだらけ アナーキーと黒の文化がそこにはあり 彼の生きて行ける場所は もうそこにしかなかったのだろう ほとんど学校には来ない彼 たまに来れば教室で話す相手は私だけ 先生に背を向け アウトローな話に私が頷くような会話 彼は大人にも平気で文句を吐き 兄貴みたいな気もしたが 自分のことを見て欲しいという 弟のような存在でもあった 珍しく彼が体育の授業に姿を現わす サッカーの試合だった 私にわざと体当たりした生徒がいて 彼は「お前、シメるぞ」と いった時にはもう殴っていた 先生は見ぬふりしている 彼はボールを あさっての方へ蹴飛ばし姿を消す 私を思ってのことだった 暴力はいけないけれど 私はその時に嬉しさを感じた 守られているということではない 彼との友情がそこにあって 心を揺さぶられたからだ それから間もなく彼は暴力事件を起こし サイレンの音と共に姿を消した 大人になって強く思う 優しさと育むための整った環境が とても大切であると また 彼のような少年少女への 更生だけが必要なのではなく 重要なのは正常だと思っている大人が 冷たい心の持ち主で 更生しなければならないのは 大人の方かもしれないということだ 自分以外の者を思いやるのは やはり面倒で厄介なのかもしれない いつも自分が一番大事だから しかし 私たちはその言葉に違和感を持ち 時代は流れて少年少女たちの 苦悩のメッセージがカタチを変えても そこに気づき手を差し伸べ 救われる将来や命の為に健全な大人が 健全な社会を築かなければならない 自分の為だけに生きようとする社会なら それを私たちは社会といわない
なにも書かれていない画面 詩を書こうとする不思議があり 自分を見つめる自由の中で 集中している世界が広がって 作品が出来あがってみれば たいした作品にはなっていないが 表現された充実に幸せを感じる 気持ちを言葉で遊び繋げ 自由はいつも保障されている 不自由があるとすれば 表現する技術の不足くらいで そこには上達しよう楽しみがある 鏡には映らない自分を見つめて 自分らしさで描いてゆく 正直な気持ちを具現化すれば 幸せはいつも詩の中から滲み出て
君は瞳の力を弱めながら 僕と再び逢える場所について 手を握りながら話したね 悲しみの向こうには 希望がきっとあるからと 目の前に襲ってくる 僕のどうしようもない気持ちの 景色に光をあてようとして 君は彷徨い苦しいはずなのに 空への準備をさり気なく優しい顔をして 人生の到達点に立ってしまった 僕を知り尽くした 君が言った最後の言葉 またね 孤独を希望に変えて 今でも消えることのない声となった 僕はこの世界で浮き沈みながら 今でも生きている 想い出を詰め込み君とまた話すために
落ちてゆく紙くずを眺め 僕は何処でなにを しがみつきこともなく 風に揺られ ゆらㅤゆらㅤゆらㅤゆらら ひとりぼっちの苦笑い 抜け出した希望は不自由に 僕の寂しさは身勝手を 知っている悲しみ それがどうした、と 雑踏の足音が響いて だからどうしたいのさ、と クラクションが迫って ひとりぼっちの僕が揺れている 自由への覚悟もなく ひとりぼっちの僕が揺れている