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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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気分を変えて

thread
見られることはなるべく避けたい
だから派手な服なんて着たもんなら
へとへとに疲れてしまう
なるべく雑草のようになんとなくそこで
限りなく空気に近い存在となって
花を咲かせている者をこっそり眺める
それくらいの楽しみがちょうどいい

仕事が終わればひっそりと
ひとりになりたいから
歓迎会、忘年会、送別会なんて
なくなってしまえばいいのに
ずっとそう思っていた
気を遣う自分にやはり
疲れてしまうのだから
コロナ感染が蔓延して数年
そのような会がなくなったことだけは
ラッキーだった

なんだかんだ言って
結局は自己中心思考なんだろう
ひとりでは何も結果を出せないのに
協調性を保とうとしないのだから
生き辛そうなことまで呟き
きっと自分に都合の良い人間なんだ

そして今朝
桜が散り若葉が青々とする道のりを
着ていくシャツが決まらなくて
そこでまた疲れてしまう

これしかないのかと
店員に勧められ購入した
一度も着れなかった
薄紅のシャツを仕方なく身につけ
どうしたら目立たず
一日を過ごせるかと端っこを歩く

背後から知り合いに声を掛けられ
ドキッとしながら振り向き
口もとを無理やりあげて
おはようございます
と返した自分の声が思った以上に
大きくて驚いた

今日はいつも以上に疲れそうだ
だけど
もうどうでもいいんじゃん自分
そんな気持ちが初めて芽生え始めた

自分を過保護にするのに疲れたのか
不思議な春の一日が始まった
#詩

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thread
このまま終わる
夢の続きの目覚めは
心の貧しさに潰されてしまう
怒りの中で虚しさが嘲笑っている

ピーピーピーピーと
渇き切った喉は笛のように
押さえきれない穴から
嘆きを漏らし俺が俺を聴く

まだ魂は身体の中にある
闘い切っていない後悔を包み
轍に嵌りグルグルと
泣いているクソ芝居に浸っている
そんな馬鹿じゃないだろ俺は

ほら
限りある時間への焦りが
蝕んで掘られてゆく穴から
新たな音階を生むではないか

そこに言葉を乗せればよい

今が始まりで今が終わりだ
一手一歩一心
過去も未来にも執着なく
この刹那に生きるも死ぬもなく
今ここで奏でればそれでいい
#詩

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お月さま

thread
そうかいそうかい
あんたは悲しいんじゃの
そんな時はここへ来ればいいさ
お月さまが出ている夜には
わしはいるから話を聞かせてくれ

そうかいそうかい
ふたりの間に風が吹けば
心も冷え込んでしまうからの

そうかいそうかい
それでお互いを思うようになり
悲しいことでもないかもよ
ほら 今もあんたは
相手のことを考えているじゃろ
そこから新しい自分を
見つけることもできるだろうし
それにほらっ
わしと話すきっかけにもなったし
やはりひとはひとと
話さないと冷え込んでしまうの

そうかいそうかい
いろいろと思いがあるんじゃの
あんたは優しいから
悲しくなったりするんじゃの

そうかいそうかい
相手も今ごろあんたのことを思って
いろいろ考えているじゃろ

そうかいそうかい
ありがとうな
わしもあんたと話していたら
寂しさが吹き飛んだよ
感謝 感謝じゃよ
お月さまが出た日には
またあんたの笑顔も見たいからの
それじゃまっとるよ

#詩

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踊る文字

thread
文字が降るとき
体から心が抜けだしては
液晶の光で踊りだす

解放された僕が
いっぱい溢れ
君にはまだ見せられない
ヘンテコな踊りに
クスッと笑っている

あまりにもの
僕らしさの恥ずかしさを
気にしながら
僕にある世間体に
縛られているというか
守られているというか

僕の中にいる君は
僕を丁寧なひとに変える
その歓びに文字たちは
踊る 踊る 踊る

#詩

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暮れる僕

thread
回り過ぎた後の虚しさに
夕陽が落ちて
繰り返しの日々を重ねても
僕はまだ昨日のまま
昨日のそのまた昨日のまま
明日を知らない

乾いた空気が
僕の嫌いな過去を蒸発させ
心が軽くなったのなら
楽しい旅が出来るのだろうか
きっと見られなくなった景色が
恋しくなるのかもしれない
ああ、それすらもない世界に
涙も忘れてしまうんだな

前に後退
後ろに前進するそんな僕に
重たくなる心を逃す
覆い染めてゆく温もり

生きている実感だけを与えて
汚れを清い筆で色づけ
僕をここに存在させている

#詩

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「諦めない奴には誰も勝てない」と、野球の神様が言った

thread
忘れてしまう
と、いうよりも
最初から覚えていないのか……

液晶画面の上
アプリで英単語の問題にチャレンジ
数秒前に間違った英単語の意味を
すでに……と、忘れている

そもそも英語を話す機会など
そんなにある訳でもなく
海外へも頻繁に行ける訳でもなく
たまに英語で道を聞かれたなら
数少ない知っている単語を並べて
どうにかなっているし
もう英語はいいんじゃないのか
と、逃げそうになる

そんな諦めかけていた時
英語を勉強するいい教材を見つけた
野球のメジャーリーグだ
液晶画面からの迫力プレーに
陽気なアメリカ人の生の英語を聞き
白熱した試合を楽しみながら
アメージング
なんて叫んでいる私がいた

ベースボールとビールと英語
これなら続けられる
まあ、ビックフライ オオタニサン
みたいな侍英語が飛び交うが
それはそれで楽しい
アメリカではベーブルースと同じように
神様扱いされる日本の選手がいて
ベースボールを盛り上げている姿に
私は元気をもらっている

The sky is the limit !
司会者がその選手に対して
語った言葉はグサっと私にも刺さった

そうだそうだ
私の英語力が増す可能性だって
きっと無限大なはずさ
英語という敵は最強だけど
この勝負、楽しみながら
諦めずに勝てそうな気がしている


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土手にて

thread


私の時間は繋がり
土の上の尻に
冷たい地球が染み込み
ひとり此処にいる

濁りのない青空
綺麗だと思い込もうと
何処かに書いてある
正解を探している

重なる日々の厚み
己で招いた過ちの濁り
消せない痛みが
罪悪とバランスとり
苦しみに救われ
まだ生かされている

反響させる懺悔
私の器から漏れない
善がりの醜態を
此処で知らされる 


#詩

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十二歳

thread

詩が書けなくなった時
詩が書けなくなった詩を書き
やはり詩を書いているのだから
僕は詩に救われている

気持ちがなくなれば
何も表現することは出来ないが
生きている限り気持ちはここにあり
自分を見つめ続けることが出来ている

残念ながら
僕が詩を書くきっかけとなった
十二歳の詩人は気持ちをこの世で詩として残し
大空へ飛び去っていた
ひとり ただくずれさるのを まつだけ
詩集の表紙には
紙ひこうきの絵とこの言葉が書かれていた
その衝撃を未だに忘れることはない

どうしようもない気持ちを書いて良いんだ
そして優しく鋭く知的で格好良い詩だと感じていた
十二歳で詩を書くことを終える詩人がいて
十二歳で詩を書き始めた僕がいた

詩では命を救われなかった詩人の詩から
張り詰めた空気にある新しい景色を見せてもらった
僕にとって暗闇の中にある輝きに満ちた世界
きっと僕と同じように救われた者たちがいただろう
意味のない命などないということだ
 
僕はこれから先も詩を書き続けるだろう
そしていつの日か曇り空の上
もしその詩人と出会うことが出来たのなら
微笑んでありがとうを伝えたい

#詩

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十九の秋に

thread
駅前をふらつけば
夢みることを否定される
どうせそんなもんだよ
俺なんてと
ため息を逃がし

望んだ抜け殻が
吸い込んだ焦げた匂い
落ちた花びらが語り出す
咲くことも知らない
俺の踏まれて黒ずんだ夢

強くなければならない
俺らしくない俺を感じて

吹かれたひと葉の
行き先を追えば高い空
立ちくらみと涙
生きていく
難しさともどかしさ

項垂れた先の
踵を引きずり進めれば
それでも
を楽しむかのように
落ちてきた枯葉が
カラカラと笑っている

#詩

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自己愛

thread
偽物の僕なんていないのだから
僕は本物の僕なんだけれど
本物の僕ってどんな僕なんだろう

僕に僕がずっと重なって
自由に自由が重なって
あんまり自由じゃなくなって
僕に僕の不自由が顔を出しながら
生きていることを味わう

怒らないといけない時に笑って
泣かないといけない時に笑って
けっきょく
笑わないといけない時に笑えず
そんな僕がいて

僕が僕に気を遣っている僕がいて
そうしたい僕がいて
本当の僕がどんどん解らなくなるけど
それでも僕が僕を許せている
僕はまだ僕を愛している

#詩

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