『想い雲』<みをつくし料理帖>髙田郁(ハルキ文庫)
Mar
18
二月の初午の日に新しいお店で営業を再開した「つる家」も、はや夏の土用の入りが近づき、暑気払いの献立に頭を悩ませています。
戯作者<清右衛門>が版元<坂村堂>を連れて「つる家」を訪れ、<坂村堂>は料理のうまさに自ら雇い入れている料理人に手ほどきをしてほしいと連れてきた男は、<澪>が奉公していた「天満一兆庵」の江戸支店を任されていた若旦那<佐兵衛>の奉公人<富三>で、彼を問い詰めた<芳>は思いがけない息子<佐兵衛>の行状を知らされ、臥せってしまいます。
上方と江戸との料理の素材の違いが面白く、また「包丁」の扱い方などの基本的な料理人の心構えとしての描写は、いつもながら見事です。
上方から運ばれた「鱧」を江戸職人は調理できず、運よく吉原遊郭の翁屋に仕出しに出向くことができた<澪>は、幼馴染の<野江(あさひ太夫)>と夢のような出会いを経験します。