今年の読書(39)『ホテルロイヤル』桜木柴乃(集英社文庫)
Mar
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短篇7篇が収められており、北海道の釧路湿原を見下ろす場所に建つラブホテル「ホテルロイヤル」を舞台として、ホテルの経営者、その家族、従業員、出入り業者、そしてホテルを利用する男女に繰り広げられる心の機微を、鮮やかに描き出しています。
あまり小説の舞台として登場しないラブホテルだとおもいますが、裏通りにひっそりと建つ非日常的な空間に身をおく登場人物たちの心のさまを、無駄のない的確な文章で紡ぎ出し、生活感あふれる登場人物たちを語り繋いでいきます。
短篇7篇は、時系列的に現在から過去にさかのぼり、読者は廃墟のホテルの場面からホテル建設の背景まで辿る7篇が見事に連続する構成力に、筆者の並々ならぬ力量がうかがえます。