今年の読書(74)『小暮写真館(下)』宮部みゆき(講談社文庫)
Sep
24
(下巻)の第三話では、「英一」も高校2年生になります、
「英一」は、通学の途中で、ST不動産の事務員「垣本順子」が電車飛込みかと思わせる事故を電車の中から目撃してしまうのですが、読後これが大きな伏線を持つことになります。
心霊探偵「英一」の元へ今回は、フリースクールのメンバーを集めたお誕生日会の写真になぜか「黄色いカモメのぬいぐるみ」が移っている写真が持ち込まれます。
また、花菱家に強盗が侵入、「英一」が急いで帰宅すると強盗犯は老人の幽霊に取り押さえられたといいます。「英一」は幽霊の正体を小暮写眞館の経営者であった「小暮泰治郎」であると確信し弟「光」と共に、「泰治郎」の娘「石川信子」の家へと出向きます。「信子」から「泰治郎」の生い立ちや思い出話をきかされ、「小暮写真館」の歴史が読者にも知らされます。
「カモメ」の写真の意図も手間がかかりましたが、或る映画のオマージュとして作製されたものであることが判明、最後の第四話に続くのですが、読み手としては、キャッチコピーの「最高の恋愛小説」はどうなるのか心配なまま読み進めましたが、愛想のないST不動産の事務員「垣本順子」が突然重要な登場人物に変わります。
ことあるごとに不動産屋に出向き恋心を抱いている23歳の「垣本順子」に相談していた「英一」でしたが、「順子」の元に決別していた母親が現れたことにより、「順子」は薬の過剰摂取で意識不明の状態で「英一」に発見されるのでした。最終ページに向かって、「順子」の数々の伏線が浮かび上がり、「最高の恋愛小説」という意味が最後に来て理解でき、納得の読後感をあたえてくれました。文庫本の(上・下)の表紙も、読後として眺めますとは胸に迫るせつなさをもってじんわりと重い意味合いが響いてきます。