今年の読書(34)『銀閣建立』岩井三四二(講談社文庫)
Apr
17
室町末期、応仁の乱で疲弊した京の都。5年ぶりに美濃から都へ呼び戻された番匠「橘三郎右衛門」は、公方御大工の父から、「足利義政」が隠居所として東山に山荘をつくることを聞かされます。
「三郎右衛門」は仕事を得るための同業者たちとの駆け引きや、口うるさい上様の注文をしのぎつつ、山上亭(西指庵)の仕事を得ることができ棟梁として技の限りを注いでいきます。宮大工としての日本建築の仕口や木割り等の描写、木曽桧の京までの流れ、家業としての大工業を、「三郎右衛門」の家族関係を織り込みながら描いています。
前回(33)の『空間・五感』でも述べていますが、<建築>とは「権力」と「金」が絡んでくるということを著者はよく見抜かれており、上様「足利義政」が自分の満足のために農民から年貢として金銭を巻き上げ、東山山荘の建築に固執、やがて土一揆が起こる都の様が「三郎右衛門」の子どもたちを絡めて描かれています。
「三郎右衛門」は、自分の身が滅んでも、のちの代まで立ち続ける建築を建てたいと、たとえ「足利義政」が銭で浄土を買う東山山荘の建立であったとしても、公方御大工職としての信念を持ち続けるのでした。